<MR創世記> ぼくらはここからはじまった 仮想と現実を融合する 複合現実感「Mixed Reality」XR-MRコラム「MREAL MIRAI VALUE」

公開日:2025年4月4日
2025年、XR-MRコラム「MREAL MIRAI VALUE」がスタートしました。
私たちの宝物「MREAL」ブランドに込める想いとともに、XRという技術が、私たちにもたらす「うれしいこと」をたくさんお伝えしたいと思います。
はじめに、私たちキヤノンと、MR技術がタッグを組んだむかしむかしのお話からスタートします!
XR(エックス アール)って何に使えるの?ゲーム?えっ、仕事で使えるの?
まだまだ知られていないXR技術。
そもそもXRとは何でしょう?
Webサイトで検索すると、現実世界とデジタルな仮想世界を融合させる革新的な技術(AR・VR・MR)の総称とでてきます。
詳しく知りたい方は、解説ページをご覧ください。
1996年のある日
それは唐突な会話から始まった。
会話の相手はキヤノン(株)のT所長。彼は当時、新川崎にあった情報メディア研究所(当時)において、最先端のVRやマルチメディア(=現在のインタラクティブメディア)の研究を率いる責任者であった。
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(T所長)T君、来年我々は、社外にエム・アール・システム研究所を設立しようとしている。設立に当たって、研究所に必要なネットワークインフラや研究用の機材の準備を君に手伝って貰いたい。
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(私)T所長、分かりました。ところでエム・アール・システムとは一体何ですか?
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(T所長)まだ今は詳しくは言えないが、日本初、いや世界でも類を見ない研究になるだろうね。
この短い会話が、MRシステムという得体の知れないモノに私が関わる第一歩であった。
そして、その後30年近く私自身がこのMRに関わり続けることになろうとは、当然知る由もなかった。
それから数カ月後 1997年1月
株式会社エム・アール・システム研究所がいよいよスタートした。
場所は横浜の高島町。目の前にはまだ空き地の目立つみなとみらい地区が見渡せるビルの一角であった。
一見、普通のオフィスビルにも関わらず、フロア内には数百インチもあろうかという3面スクリーンや6軸稼働するバケットシート、巨大な冷蔵庫を彷彿とさせる大型グラフィックコンピュータが置かれ、居室には、所狭しに並べられた多数のワークステーションが鎮座し、これらの機材を見るだけで、まだ始まったばかりの研究への期待が大きく膨らむのを感じた。

MRプロジェクトが目指したもの
仮想と現実を継ぎ目なく融合する複合現実感「Mixed Reality」
そこから生まれる、数々の近未来体験。
私たちは、この夢ある技術の実現に向けて、MRプロジェクトを推進してきました。
20年以上前に制作した、プロジェクトに関する古い映像が残っています。
いまの世の中で(当社ではなく他社で)実用化されているもの、これから実現可能だと思われるものなど、MRプロジェクトでは、リアリティからバーチャリティに至る、融合技術全体を研究し、さまざまな複合現実感システムを開発してきました。それらはいずれもユーザーが自分の視点で眺め、リアルタイムインタラクティブに体験できるものです。
4年余りつづいた研究内容を一部、ご紹介いたします。
これって、あれですよね? Cybercity Walker(サイバーシティ ウォーカー)
エム・アール・システム研究所では、ゴーグルを使ったMRだけでなく、8台のビデオカメラとGPSを搭載した専用車両を使って市街地を走り回り、現実空間の360度映像を撮影し、その映像をデジタルで再構成することで、街中を自由に行き来することが出来るCybercity Walkerを作りました。

そうなのです。今では当たり前になっている現代の地図情報サービスと同じことを、今から25年前に実現していたのです。当時、私も京都市街やサーキット場の撮影に立ち会いましたが、撮影時に見られなかった横向きや後ろ向きに街中を行ったり来たりするのが面白く、時間を忘れて繰り返し見ていたことを覚えています。
Cybercity Walkerが製品化されていれば、世界中のあらゆる場所を360度パノラマビューできるサービスをキヤノングループから提供していたかもしれません。
おわりに
20年以上前から、私たちはこのMRの研究に携わってきました。「Cybercity Walker」で研究された技術は、今では道案内の役割はもちろん、自宅にいながら世界中の観光地を訪れるバーチャル旅行も体験でき、まさに私たちの暮らしを豊かにする機能が一般に普及しました。
MR技術は、AR技術を基礎に発展し、2010年代後半から徐々に普及し始めましたが、産業用途ではまだまだ広がりを見せていません。当社のMR技術の歴史を紐解きながら、近未来を私たちと一緒に予想してみませんか。続きはまた、次回コラムでお会いしましょう。
筆者紹介

竹中 哲也(たけなか てつや)
キヤノンITソリューションズ株式会社
製造ソリューション事業部 エンジニアリングソリューション営業本部
シニアエキスパートセールス(XR担当)
1991年:キヤノン販売株式会社(現キヤノンマーケティングジャパン)入社
1990年代:スーパーコンピュータシステム並びにコンピュータグラフィックス関連の商品企画・販売に携わる
2000年~:黎明期MRシステムの国内マーケティング活動に携わる
2010年以降:MREAL事業に専念し、製品の普及・販売に努めている
関連するソリューション・製品
- XRソリューション(VR・AR・MR)
- 近年進歩の著しいXR(VR・AR・MR)技術。
「今までできなかったことができる」有望な技術として期待を集めています。
XRを単なる映像装置ではなく、業務に定着させて効果をあげ、業務革新を実現するためのソリューションとして提供します。
- MRソリューション
- 現実空間に、開発中の新型車や建設予定の建物が、実際に目の前にあるかのように現れます。
キヤノンが開発したMRシステム「MREAL」は、現実映像とCGを違和感なく融合し、自由な視点から体験できる映像技術です。
光学技術と映像技術を結集した「MREAL」により、幅広い分野にソリューションを提供しています。