流通BMS特集 - 流通BMS対応時のポイントEDI
公開日:2017年6月27日
さて、流通BMSの概要が理解できたとしても、実際に導入には何から手をつけたら良いのか?という声をよく聞きます。ここでは流通BMSへの対応に必要な作業やシステムなどについてまとめました。
インターネット接続環境の用意
従来のJCA手順で必要であったような専用モデムは使用せず、インターネット回線を用意します。通信プロトコル(通信方式)として卸・メーカーで最も多く利用されているJX手順(後述)を採用する場合には、家庭で利用するのと同等のインターネット接続環境が必要と考えてよいでしょう。
一方で家庭や業務でパソコンを利用する際と同様に、セキュリティ対策にも気を配る必要があります。使用するパソコンにはウイルス対策ソフトを導入したり、ファイアウォールを導入して不正アクセスに対処できるよう準備しましょう。
-
※
キヤノンITソリューションズでは、セキュリティ・ウイルス対策ソフト「ESET(イーセット)」もご提供しています。
通信プロトコル(通信方式)の選択
流通BMSでは3種類の通信プロトコル(通信方式)が規定されています。それぞれに特徴があり、一般的に卸・メーカーではJX手順を、小売店では取引先の規模や取引形態に応じてebXML MSとJX手順を併用することが多いようです。
取引先と同一の通信プロトコルを選択しなければならないため、卸・メーカーは相手の小売店がどの通信プロトコルに対応しているのかを確認して準備します。
通信プロトコル | 特長 | 推奨する 取引データ量 |
主な対象 |
---|---|---|---|
JX手順 | 日本独自の通信プロトコルで、必要の都度、クライアント側からサーバー側に接続してデータを送受信するプル型の仕様。JCA手順の代替として位置づけられる。一般的に卸・メーカーではクライアント側、小売店ではサーバー側を導入する。 クライアント側のシステムはパソコンで運用できることから、データ量が少なく、情報システム部門などのシステム専任者を持たない中小企業での利用に適している。また他2つのプロトコルより安価に導入・運用できる。 |
10MB(約1万明細)未満 | 中小企業 |
ebXML MS (通称ebXML) |
国際標準の通信プロトコルで、サーバー同士がデータの発生都度互いにメッセージを送るプッシュ型の仕様。リアルタイムでのデータ送受信が行える反面、サーバー運用が必要となるほか、常時インターネットに接続するため相応のセキュリティ対策が必要となる。近年アジア圏での利用が広まっている。 | 10MB(約1万明細)以上 | 大企業 |
EDIINT AS2 (通称AS2) |
ebXMLと同じく、国際標準の通信プロトコルでプッシュ型の仕様。欧米を中心に普及し、国内では日用雑貨分野での利用も多い。 | 10MB(約1万明細)以上 | 大企業 |

自社システムへのデータ連携
流通BMSと既存のJCAとの最大の違いは、やり取りするメッセージがテキスト形式ではなくXML形式であることです。受注データを社内システム(販売管理システムや在庫管理システム、会計システムなど)にスムーズに連携できてこそ、流通BMSの導入効果が得られますが、通常こうしたシステムはXMLデータを直接取り込むことができないため、受信したデータは一旦システム連携しやすいテキストデータ(固定長形式やCSV形式)に変換しなければなりません。
流通BMS対応の際は、使用するパッケージや利用するサービスがこうしたフォーマット変換機能を有しているのか、あるいは別途自社で用意しなければならないのかも注意して検討しましょう。
また、流通BMSのメッセージには、スーパーと日用品卸・メーカー間でやり取りされる「基本形」のほか、生鮮品に特化した「生鮮版」、百貨店とアパレル卸・メーカー間でやり取りされる「百貨店版」と3種類あり、それぞれにおいて複数のバージョンが存在するため、フォーマット変換機能を有していたとしても、自社が利用するメッセージ種類・バージョンに対応しているかどうかも確認します。

業務処理の実施
流通BMSに運用においても、従来と同様に「注文データを確認する」「伝票や帳票を印刷する」「出荷データを作成する」といった業務がついて回ります。こうした業務を流通BMSパッケージ上で行うのか、あるいはデータ連携したあとに自社システム上で行うのかによって、システムの構成や費用が変わってきます。
それぞれに一長一短あるため、自社システムの修正しやすさを確認して判断すると良いでしょう。


メッセージの種類と実施する業務例
メッセージ種 | 提供方向 | メッセージ内容 | 実施する業務例 |
---|---|---|---|
発注 | 小売店 →卸・メーカー |
小売店からの注文データ |
|
出荷 | 卸・メーカー →小売店 |
注文に対して、実際の出荷数量を報告するためのデータ |
|
受領 | 小売店 →卸・メーカー |
小売店が商品の納品を受けた受領確認結果データ |
|
返品 | 小売店 →卸・メーカー |
小売店が返品処理を実施した場合に提供されるデータ |
|
請求 | 卸・メーカー →小売店 |
小売店に対する1ヶ月分の請求情報をまとめたデータ |
|
支払い | 小売店 →卸・メーカー |
小売店からの1ヶ月分の支払情報をまとめたデータ |
|
キヤノンITソリューションズの流通BMS対応製品
最後に、キヤノンITソリューションズでラインナップしている代表的な通信ソフトウェア・トランスレーターをご紹介いたします。
EDI-Master B2B Standard
現在、EDIでよく利用されている様々な通信プロトコルに対応できる(マルチプロトコル対応)汎用EDIサーバーです。流通BMS分野の全手順である「JX手順(サーバー・クライアント)」「ebMSv2手順」「AS2」に対応し、複数の取引先と通信するのに最適です。
EDI-Master B2B for JX-Client
流通BMSで利用する「JX手順(クライアント)」に特化したシンプルな通信ソフトウェアです。流通BMSにコストを抑えて対応したい場合に最適です。