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「産業用レンズについて」 [2021.04.27]
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シニアアプリケーションスペシャリストによる「技術トレンド情報」(第26回)
「産業用レンズについて」 [2021.04.27]

産業用レンズ

今回は、産業用レンズの話をしたいと思います。外観検査が主な目的となるマシンビジョンでは、高速に搬送される成形品を1ショットで撮影して連続的に検査を行うため、固定焦点レンズが基本となり、可変焦点レンズ(ズームレンズ)の場合も手動で操作し、連続撮像時は、固定で利用するものが主流となります(図1)。民生用の一眼レフなどでは、オートフォーカスやオートズーム機能、監視カメラなどでは、PTZ(パンチルトズーム)など駆動系を備えたものがありますが、今回は、マシンビジョンで利用される固定焦点レンズについて、レンズの構造と選定方法についてご紹介いたします。

産業用レンズの選定方法

固定焦点レンズと可変焦点レンズ

図1 固定焦点レンズと可変焦点レンズ

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産業用レンズも、その構造は、一般的なカメラレンズと同じく、光の屈折を利用し、視野内の光景を撮像素子に投影するものになります。固定焦点レンズと可変焦点レンズ(ズームレンズ)の構造上の違いは、名前の通り、焦点距離の数値が固定か、可変可能かになります。レンズの構造は、カメラの仕組みなどで、図2のような図をご覧になられたことが多いと思いますが、カメラから一定の距離にある被写体像を、レンズを通して、撮像素子のところで焦点を合わせ投影させます。

そのため、レンズ選定で最も重要となるのが、この焦点が合うまでの距離、つまり、焦点距離が撮像条件に一致しているかになります。焦点距離は、被写体サイズと、カメラ(実際にはレンズ)と被写体との距離(WD:ワークディスタンス)と、撮像素子のサイズから算出できます。例えば、WDを50cm、撮像素子1/2インチ素子の場合、被写体300mmのものを撮像する場合に適した焦点距離は、8mmとなります(図3)。焦点距離は、メーカによって、8mm,12mm,25mmなど決められているため、WDの方を大きくするなどして調整します。

焦点距離の算出

図2 焦点距離の算出

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視野サイズと焦点距離の関係

図3 視野サイズと焦点距離の関係

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ピントリングの調整方法

ピントリング調整

図4 ピントリング調整

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レンズの調整は、ピントリングと絞りリングで行います。ピントリングは、名前の通り、ピント(焦点)を合わせるためのものです。ボケのないクリアな撮像になるように微調整を行いいます。ここで注意したいのが、被写界深度です。被写体に焦点を合わせた場合でも、被写体がカメラから遠ざかりすぎたり、近づきすぎたりすると、焦点が合わなくなります。焦点が合う範囲が被写界深度です。レンズと撮像素子との位置関係により、被写界深度は、手前より奥へ行く方向に広くなります。そのため、高さや大きさの異なるものが搬送されてくる場合に、できる限り、すべての搬送物に焦点を合わせたい場合は、カメラに近い被写体にピントを合わせます(図4)

絞りリングの調整方法

絞りリングは、明るさを調整します。絞りの値は、F値と表し、図1のように焦点距離値の隣に最も絞りを開放した際のF値が記載されており、小さい数値であるほど、より多くの光を取り入れることができるレンズとなります。基本的に絞り調整は、開放状態を最大に取り入れる光の量を調節します。通常、最も明く映る領域の明るさが飽和しない程度、いわゆるハレーションを起こさないように調整しますが、ここで注意したいのが、絞りも、被写界深度に影響するということです。絞りは、F値が大きくなるほど(絞るほど)、被写界深度は深くなり、ピントが合いやすくなります。これは、近眼の方が目を細めることでピントを合わせやすくなることと同じ現象です。ただし、絞ることで暗く撮像されるため、マシンビジョンでの明るさ調整では、外部照明を利用し、カメラのゲインや露光時間(シャッター速度)など合わせ調整します。

レンズ絞り(F値)について

図5 レンズ絞り(F値)について

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絞りリング調整

図6 絞りリング調整

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今回のまとめ

今回は、一般的なマシンビジョンで利用する固定焦点レンズについての選定方法と調整方法について記載いたしました。特に被写界深度を考慮した調整として、カメラに近い被写体にピントを合わせ、絞りリング調整は、F値を大きくする(絞る)ほど、ピントが合いやすくなり有効です。次回は、明るさ調整の他、キズや汚れ、ムラなどをよりコントラスト高く撮像するための照明技術についてお話したいと思います。

 

筆者紹介

シニアアプリケーションスペシャリスト 稲山

稲山 一幸(いねやま かずゆき)

エンジニアリング事業 シニアアプリケーションスペシャリスト

1992年住金制御エンジニアリング入社、Matrox社製品の国内総代理店立ち上げに参画、以降25年マシンビジョン業界に携わる。
2013年~2016年、キヤノン株式会社にてマシンビジョン関連の新製品開発のソフトウェアリーダとして従事。現在は、エバンジェリストとして活躍中。

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