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ハイパースペクトルイメージング その1 [2020.03.27]
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シニアアプリケーションスペシャリストによる「技術トレンド情報」(第18回)
ハイパースペクトルイメージング その1 [2020.03.27]

ハイパースペクトルイメージング技術

これまでのコラムでは、ヒトの目で見える世界、所謂、可視光の世界での画像処理技術をご紹介してきましたが、今回は、見えないものを見る、測れないものを測る技術として話題のハイパースペクトルイメージング技術についてご紹介いたします。

ハイパースペクトルイメージング技術について

食品異物混入検査のハイパースペクトルイメージング画像例

食品異物混入検査の
ハイパースペクトルイメージング画像例
(図1)

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最初に、食品異物混入検査の例をご紹介します。チーズ加工で扱う手袋のラテックスゴムの混入を検知するもので、左の画像は、一般的なカラーカメラで撮像したもので、チーズとラテックスゴムは、共に薄い黄色で、形状も不定形であるため、違いはわかりづらいものとなります。一方、右のハイパースペクトルイメージング画像では、チーズとゴムが明らかに違った色合いで表現されていることがわかります(図1)。

ハイパースペクトルイメージングの構成技術

 ハイパースペクトルイメージングの  
構成技術(図2)

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ハイパースペクトルイメージング技術は、2つの技術で構成されています。1つは、紫外から赤外領域までの広域波長領域を高波長分解能で撮像するハイパースペクトルカメラ技術で、もう1つは、光の特性を利用し分類や測定を行うソフトウェア技術になります(図2)。

ハイパースペクトルカメラ技術について

ハイパースペクトルイメージングの波長領域

 ハイパースペクトルイメージングの 
波長領域(図3)  

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一般的なカラーカメラでは、可視光波長領域を数百nmの波長幅ごとに、RGB3つの画像データで撮像されます。ハイパースペクトルカメラは、数nmの波長幅ごとに、数十から数百の画像データとして撮像します。RGBの3データの変化量では差異が見られないものでも、波長ごとにデータを取ることで、どこかの波長に変化がある場合や、いくつかの波長の組み合わせで変化がある場合など、関連する波長を強調することで差異が明確な画像を得ることができます。ハイパースペクトルカメラで得られる画像データは、波長ごとの画像を重ねた立体構造で管理されるため、キューブデータと呼ばれています(図3)。

ハイパースペクトルカメラの構造

  ハイパースペクトルカメラの構造 
(図4)

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撮像方式には、主に、ラインプッシュブルーム方式と、チューナブルフィルタ方式の2通りがあります。ラインプッシュブルーム方式は、1ラインごとに分光を行い、各波長情報を格納していくもので、ラインスキャンカメラのように、カメラまたは、対象ワークを移動させながら撮像します。対象ワークが移動している状態をリアルタイムに撮像することができるため、オンラインでの検査などで活用できます。
チューナブルフィルタ方式は、指定の波長領域を通すフィルタを切り替えながら、撮像する方式で、1つの指定波長領域については、1ショットで撮像できますが、複数の波長領域を撮像する間は、対象ワークとカメラは静止させておく必要があります(図4)。
こちらは、構造的にシンプルですので、ハイパースペクトルカメラのほか、特定波長に絞って撮像するマルチスペクトルカメラで利用されています。マルチスペクトルカメラは、RGBカラーカメラのベイヤー配列素子のように、素子ごとに特定波長を撮影できる構造で、例えば、5x5の配列素子を用いる場合であれば、25枚の異なる波長を1ショットで撮像できます。いずれの撮像方式でも、データ構造は、キューブデータとなるため、ソフトウェア側では、データキューブ構造のデータを取り扱う必要があります。

今回のまとめ

コラムの第2回第3回でも申し上げましたが、画像処理システム(マシンビジョン)において、撮像技術が最も重要です。特に正常なものに対し、キズ、汚れ、異物などの異常なものを、高コントラストで撮像することが重要です。今回は、可視光領域をより広域波長領域を対象とし、且つ、RGBの3つの波長幅で撮像していたものをより高分解能で扱うハイパースペクトルイメージングのカメラ技術についてご紹介いたしました。次回は、撮像したキューブデータを用いて処理を行うソフトウェア技術についてご紹介します。

 

筆者紹介

シニアアプリケーションスペシャリスト 稲山

稲山 一幸(いねやま かずゆき)

エンジニアリング事業 シニアアプリケーションスペシャリスト

1992年住金制御エンジニアリング入社、Matrox社製品の国内総代理店立ち上げに参画、以降25年マシンビジョン業界に携わる。
2013年~2016年、キヤノン株式会社にてマシンビジョン関連の新製品開発のソフトウェアリーダとして従事。現在は、エバンジェリストとして活躍中。

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