- コラム
シニアアプリケーションスペシャリストによる「技術トレンド情報」(第1回)
マシンビジョン市場動向 [2018.10.26]
はじめまして、稲山と申します。画像処理歴は約25年になります。 老舗画像処理メーカMatrox社(カナダ)の国内販売立ち上げに携わり、1990年代のはじめ、国内ユーザ様向けにMS-DOS(※)用の画像処理のサンプルプログラムを提供していたころからの生き残りです。
※内容は予告なく変更になる場合があります
マシンビジョン市場動向(全体)
コラムの初回は、マシンビジョンの市場動向やその方向性についてご紹介させていただきます。まずは、現在の市場動向グラフを見ていきましょう。
左のグラフは、2016年から2020年までの市場予測を示していますが、FA市場ブーム到来で、従来3~5%であった伸び率が、年10%になると予測されています。
これは、メカ技術と画像センシングの組み合わせの定番化と、昨今話題のAI技術のライブラリ化によるところが大きく、容易に画像学習機能を搭載することができることとなり、これまで困難とされてきた市場・分野へのシステム化、自動化に拍車がかかるとみられています。
マシンビジョン市場動向(アプリケーション)
次にアプリケーション別にみていきましょう。 半導体やFPDの市場規模は最も大きく4790億円。それに続き、観測・測定が二番手の3300億円です。しかし最も注目すべき点は、自動車関連です。規模は小さいですが伸び率は800%と最も大きい値となっています。
マシンビジョン市場動向(アプリケーション詳細)
アプリケーションについてもう少し深堀りして見てみましょう。
市場規模としては「半導体ウエハ外観検査装置」が、伸び率は少ないものの最大です。市場規模は小さいけれど「自動車部品外観検査」の伸び率は1050%と、非常に高い予測値がでています。一方で「文字検査装置」は、僅かに低迷しています。
マシンビジョン市場動向(システム構成素材)
最後にシステム構成素材を見ていきましょう。 「画像処理装置」が、市場規模と伸び率(219%)ともに最大です。 汎用IFや汎用画像処理ライブラリおよびデータ収集、AI活用などが要因であると予測されます。また、画像センサ(スマートカメラ)も伸びは堅調で、画像ボード(フレームグラバ)は、汎用IFの高速化により多少低迷しています。
今回のまとめ
2020年に向け、各界が東京オリンピック経済効果に期待を寄せる中、マシンビジョン市場も10%以上右肩上がりとなるとの予想がされており、長期に渡り定常状態が続いてきた市場としては、非常に喜ばしいことですね。
実際、弊社に寄せられる案件も、既存システムの性能改善は元より、目視検査や作業プロセスの自動化といった、これまで困難とされてきた分野・領域にまで広がりを見せています。その理由といえば、メカ制御と画像センシングの組み合わせ技術の定番化、入力IFの汎用化による標準化と低価格化、あとは、近年飛躍的性能向上を果たした画像AI技術の登用が主なものとなっています。
中でも画像AI技術は、ノイズの多い多種多様な画像状態から欠陥ノイズの分類と認識を得意とし、自動車ボディー塗装面の外観検査や梨地面をもつ金属部品外観検査といった光沢局面をもつ成形品外観検査や、正常異常状態が共にバラツキの多い食品分野や、医学分野の病態検査などへの活用として注目されています。
しかし、ことシステム化・自動化においては、その性質上、安定稼働を第一とする必要があり、たとえ、一部の新技術が既存技術を凌駕するものであっても、素材選定時や既存機能との組み合わせ時など各過程において精査選定の上、開発を進める必要があります。
本コラムでは、システム開発者・導入者向けに、システム構成別の最新の技術トレンドからシステム化時の課題や対処方法についてご紹介して参りますので、御社のシステム構成の一案ないしは、素材選定時の一案としてご参考いただければ幸いです。
- ※MS-DOSは、米国 Microsoft社の米国およびその他の国における登録商標です。
- ※参考資料:画像処理システム市場の現状と将来展望2017
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