- コラム
【ホワイトペーパー】なぜ上手くいかなかったのか 機械学習プロジェクトが失敗した5つの原因
現在の社会で企業が競争優位を確立するには、デジタル技術の活用が欠かせません。そのことを認識した多くの企業がDXに取り組んでいます。DX施策の1つとしてデータを分析し需要などの未来を予測する、「機械学習」によるデータ活用に挑戦する企業もあります。しかし、企業によってはせっかくの取り組みが途中で停滞したり、立ち消えになったりしてしまうこともあるようです。果たして、何が原因だったのでしょうか。ここでは、機械学習プロジェクトを失敗させる5つの原因を紹介します。
過去の傾向から未来を予測する
様々な分野で進む機械学習の活用
業務プロセスを変革する──。新たな顧客価値を創出する──。あらゆる企業がデジタル技術を活用したビジネスの変革、つまりDX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組んでいます。
中心にあるのは、もたらす価値の大きさから「21世紀の石油」とも表現されるデータです。そして、クラウドサービスやデータレイク、データウエアハウス、ビジネスインテリジェンス(BI)など、それらのデータを適切に管理したり、処理したりする様々な技術です。
AI(人工知能)も、データから価値を引き出す技術の1つです。AIの要素技術の1つである機械学習は、データに基づいて、そこに存在するルールやパターンをコンピュータに自動的に見つけさせる手法です。そのルールやパターンを取り入れた予測モデルを構築することで、人が勘と経験を駆使して行ってきた予測の精度を高めたり、人では気付くことが難しかった新しい気付きを見つけ出したりすることができます。業種業態を問わず多くのビジネスに有用なことから、積極的な活用が進んでいます。
代表的な例に小売業の需要予測があります。小売業のビジネスにおいて、品切れは、当然避けなければならない事態ですが、その一方、過剰な在庫はムダを発生させるリスクがあります。したがって、どの商品が、どれくらい売れるかの需要予測は収益を左右する重要な業務となります。これまでは、多くの小売業でベテランが勘と経験を駆使して、その予測を行ってきました。
しかし、勘と経験に頼った業務は属人的でミスのリスクがつきまとう上、ベテランの持つノウハウや知見の共有、つまり後継者の育成も困難です。需要予測の属人性の排除は、事業継続を左右する経営課題として、多くの小売業を悩ませていました。
その課題を解決するのが機械学習です。日々の販促実績のデータや店舗周辺環境の情報、トレンドを掛け合わせて分析すれば、誰が行っても客観的なデータに基づく高精度な需要予測が行えます。そのため多くの小売業が機械学習の成果を確認するためのPoC(概念実証)に取り組んだり、実際に導入したりしています。
小売業に限らず、製造業においては、生産計画立案のために需要予測を行ったり、不良品検知や生産ラインの異常検知など様々な業務に機械学習が用いられています。またコールセンターでの事例もあります。コール数を予測してオペレータの配置計画に役立てたり、自然言語処理やテキストマイニング技術と機械学習を組み合わせて、顧客からの問い合わせを「質問」「苦情」などに仕分けたり、様々な用途に活用され、オペレータの負荷軽減に貢献しています。
テーマ設定や体制づくり
先行企業はここでつまずいた
大きな効果が期待され、導入が進んでいる機械学習ですが、いち早く導入に挑戦した企業の事例などから、プロジェクトを失敗させた原因も見えてきています。今、まさにPoCを進めている企業、あるいは、これから挑戦するという企業にとって、それらは同じ轍を踏まないための貴重な経験として参考にしない手はありません。
【1】テーマが不明確
まず挙げられるのが「テーマが不明確」という原因です。ほかの会社で成果が上がっているとつい「わが社でも!」と考えがちですが、やみくもな取り組みは、混乱や停滞、後工程からの手戻りを招きがちです。機械学習という手段を用いて「解決したい課題や目標は何か」が明確でない場合、何を基準に本番適用に踏み切るかといったことも決められず、ただ検証が続き、いわゆる「PoC疲れ」でプロジェクトが停滞したり、立ち消えになったりします。また、仮にPoC後に機械学習を業務適用させたとしても問題を解決することは難しいでしょう。まずは「ビジネス上の問題は何か」「問題を解決するための課題は何か」「達成したい目標は何か」といった観点から機械学習という手段を用いて解決したい課題や目標を明確にした後にプロジェクトを開始することが重要です。
【2】課題設定を間違える
2つ目は「課題設定を間違える」です。これは1つ目の「テーマが不明確」の次のステップで失敗しやすい原因です。例えば、機械学習で「収益減少」を食い止めたいと考えたとします。では、収益が減少しているのはなぜでしょうか。顧客が減ったからでしょうか?顧客の購入頻度が減っているからでしょうか?あるいは製造コストが上がっているからでしょうか?まずは、問題解決のための正しい課題設定を行うことが先決です。
【3】データがない
3つ目の原因は「データがない」です。既に述べたとおり機械学習は、データを学習し、そこからルールやパターンを発見する技術です。したがって解決したい課題に即した十分かつ適切なデータがあることが前提となります。例えば、先ほども触れた小売業の需要予測で予測の精度を上げるには、POSシステムから得られる月別、曜日別、時間帯別の販売データに加えて、天候データ、特売などのキャンペーン、さらには周辺エリアで開催されるイベントなど、人流の変化や購買行動に影響を与えうるデータなどが必要です。もちろん、データを必ず自社で保有していなければならないわけではありません。データを販売している事業者から購入してもよいし、気象データや人流データなどはオープンデータとして公開されているものもあります。これらのデータを使って自社でデータを蓄積する手間や時間を削減することは、機械学習の成果をいちはやく得る上でも有効です。
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