ホーム > コラム・レポート > コラム > 【品質管理部門×DX】
歩留まり向上、検査の省力化などにAIを活用するための第一歩
DX推進の礎となる“データプレパレーション” のイロハ
  • コラム

【品質管理部門×DX】
歩留まり向上、検査の省力化などにAIを活用するための第一歩
DX推進の礎となる“データプレパレーション” のイロハ

イメージ画像

多くの企業がデジタル技術を活用してビジネスモデルの変革を図るDX化に向けた取り組みを加速させています。製品の品質を確保・向上する品質管理部門においては、データをどう活用すべきなのでしょうか。品質管理部門におけるデータ活用の現在と、機械学習などAI技術を活用するために必要な環境づくりのポイントを見ていきます。

目次

  • 1.品質管理部門における現在の状況
  • 2.品質管理におけるデジタル技術活用の今
  • 3.品質管理部門におけるデジタライゼーションは絶好のチャンス
  • 4.品質管理にAIを適用することで何ができるのか
  • 5.AIを活用するために欠かせない“前処理”の重要性
  • 6.データの前処理に最適な方法とは
  • 7.データプレパレーションツールの選び方

品質管理部門における現在の状況

画像を拡大する
出典:JILPT「ものづくり産業における DX(デジタルトランスフォーメーション)に対応した人材の確保・育成や働き方に関する調査」(2021年5月)
https://www.meti.go.jp/report/whitepaper/mono/2021/pdf/all.pdf(P150))

顧客に対して高品質な製品を提供することを求められる品質管理部門。工場内における生産体制の改善活動や製造部門に対する品質教育など、製品やサービスの品質維持や改善活動などを行っており、高品質なものづくりが強みの日本の製造業において重要な役割を担っています。

製造基盤白書(2021年版ものづくり白書)によれば、生産工程の改善や多工程を処理する技能に次いで、品質管理に関する知識・技能が重要視されています。高い品質を維持するためには、品質管理部門の高度な知識や技能が必要不可欠です。

品質管理におけるデジタル技術活用の今

品質管理の現場では、設備からの情報をもとに改善活動に向けた仮説を立案し、それを実行することで、高い品質を維持するための取り組みを進めていることでしょう。しかし、品質管理のみならず、製造業における技能人材の不足は慢性的な課題となっていることはご存じのとおりです。中堅・中小企業では、モノづくりに関わる人材が不足しており、熟練工の技能を若手に伝承していくための環境づくりに苦労している方も多いでしょう。また、大企業においては、労働生産性を高めていくための環境づくりが常に求められており、品質面でも高いレベルを維持しながら、業務改善などを通じて省力化し、生産性向上に努めているはずです。

そのような課題を解決するものとして期待されているのが、機械学習をはじめとしたAI技術の活用です。そのためには、デジタル技術に長けた人材が必要不可欠となります。品質管理においても、昨今の大きな潮流となっているDX推進のなかで、デジタル技術が活用できる人材の配置が求められています。2021年版ものづくり白書によると、全体の45.8%もの企業が、品質管理にデジタル技術を活用できる人材を求めていることも明らかになっています。

品質管理部門におけるデジタライゼーションは絶好のチャンス

画像を拡大する
出典:JILPT「ものづくり産業における DX(デジタルトランスフォーメーション)に対応した人材の確保・育成や働き方に関する調査」(2021年5月)
https://www.meti.go.jp/report/whitepaper/mono/2021/pdf/all.pdf(P146))

品質管理を行う上では、データに基づく客観的な判断を行うことが必要であることは言うまでもありません。品質管理の手法には様々なものがあり、現場から得られた各種のデータを、グラフやヒストグラム、パレート図といった、従来のQCツールなどを駆使して、品質改善につなげていることでしょう。その意味では、すでに現場にはデータ化された情報が得られる環境にあると言えます。

これらのデータを活用しながら品質を高めつつ、人材難の現場において業務効率化を進めていくためには、これまでのようにExcelなどでデータを集計するような属人的な手法ではなく、機械学習をはじめとしたAI技術を活用した課題解決のアプローチが重要になってきます。

この活動については、DXを推進するプロセスに必要な、デジタルを適用する“デジタライゼーション”の段階と言えます。多くの経営者がDX推進に向けた取り組みに期待を寄せている今、すでにデジタル化が実現している品質管理の領域において、デジタル技術のさらなる活動を進めるデジタライゼーションに取り組むことは、まさに絶好のタイミングと言えるでしょう。

品質管理にAI を適用することで何ができるのか

品質管理では、ライン上の設備改善や検査手法の高度化が常に求められていますが、具体的にAIを活用することで、どのようなことが実現できるようになるのでしょうか。

AIによって過去の実績データから傾向を学習し、未来を予測できるようになります。これを品質管理に応用すると、過去に担当者が行ってきた、複雑で複合的な判断に用いた実績データを学習することで、コンピュータが人間の代わりに判断を行なう予測モデルを作成できるのです。具体例を挙げると、人が職人技で行っていた打音検査の結果からの判断を行う、経験則的に行われていた工具寿命の推定を行うといったことが可能です。また、生産設備の予知保全や、熟練者による目視検査の自動化にも役立てることができます。品質管理において効率化できていない属人化された業務を、データを活用して精緻に判断し、精度アップや熟練技術者の経験だけに頼らない業務フローを構築するといった、品質向上に向けた活動に生かすことができるわけです。

ただし、どんな分野にもAIがすぐに活用できるとは限りません。費用対効果の大きいテーマへの取り組みは重要ですが、実際のAIプロジェクトでは、期待していた精度に至らないなどの理由で失敗してしまう事例もあります。

では、どんなテーマが成功しやすいのでしょうか。その鍵となるのは、AI化したいと考えている業務への深い理解です。AIの性能を実用水準まで向上させるためには、AI化したい事象に関わる因果関係や、相関関係を十分に理解していることが重要です。そのため、実際の成功プロジェクトを見ると、まだ取り組んだことがない全く新しい業務のAI化に比べ、これまで現場が取り組みを続けてきた業務のAI化の方が成功しています。まずは既存業務の効率化や自動化をテーマに取り組み、その成功体験をもとに新しい大きなテーマへ取り組むことが、組織のAIへの取り組みを成功させるポイントです。また、業務への理解が成功率に直結するという性質から、AI開発は専門の開発業者に外部発注するのではなく、専門家でなくとも扱えるAI開発ツールを活用して内製化することが最近のトレンドとなりつつあります。

AIは何でもできる魔法の杖ではないため、大きなチャレンジテーマを掲げながらも、地に足の着いた部分からスタートし、成功体験を積んでいくことが重要です。日々の活動において、実現性と、それを改善したことで得られるビジネスインパクトの両軸でテーマを設定していくことをまずは考えていきたいところです。

AIを活用するために欠かせない“前処理”の重要性

AI導入による品質向上のプロセスにおいては、現場から得られるデータを機械学習含めたAIプラットフォームに投入し、そこからモデルづくりを経て検証していくことになりますが、そのモデルづくりに欠かせないプロセスがあります。現場から得られたデータを機械学習のモデルづくりに利用できる形に、データを結合・整形・クレンジング(洗浄)していく前処理です。

実際の現場では、工程ごとに異なる設備が導入されており、異なるプラットフォームにてデータが別々に蓄積され、フォーマットも異なっているのが一般的です。これらをきちんと機械学習に活かせる形に整理していくことが必要ですが、この前処理に多くの時間を割かざるを得ず、本来時間をかけて試行錯誤すべきモデルづくりに時間をかけられないプロジェクトも少なくありません。実際には、モデルを開発する時間の何倍もの時間をかけてデータを準備するということも現実的に発生しているのです。

だからこそ、データの変換や加工・クレンジングといったデータプレパレーション処理を効率的に実施することが、その後工程で成果を生むためには重要です。また、精度の高いモデルを作成するためには、データの変換や加工だけでなく、学習すべきでないイレギュラーなデータの除去といった作業も前処理段階で行う必要があります。

もちろん、既存の設備だけでなく、IoTセンサーなどをラインに設置して新たにデータを取得することや、作業者の動線が把握できるセンサーを作業者に携帯させ、人の行動データを取得して、品質や生産性の向上に役立てるといったことも、改善テーマによっては必要です。新たなデータが増えるたびに、最初からデータを整えていくような手間は避けたいところでしょう。将来的な拡張も考えると、新たなデータを追加していくことも考慮したうえで、効率的にデータプレパレーションが実施できる環境を整備したいところです。

データの前処理に最適な方法とは

AIプラットフォームにデータを投入するためのデータ前処理には、様々な方法があります。一般的には、Excelのようなスプレッドシートを使った方法をはじめ、データベースとSQLを駆使する方法や、RやPythonなどのプログラミング言語を駆使する方法、データの前処理ツール(データプレパレーションツール)を利用するといった方法が挙げられます。

スプレッドシートを利用する方法は手軽ですが、新たなデータを加えた際のデータ加工の手間が大きくなります。当然、データサイズが大きくなれば、大容量のデータ処理には不向きなExcelでは処理が追い付かないケースも出てきますし、Excelファイルの破損などのリスクにも備えていかなければなりません。

また、データベースから必要なデータをSQLにて抽出・加工したり、RやPythonを駆使したりしてデータ加工処理を行うことも可能ですが、当然ながら、専門的なプログラミングのスキルや知識が求められます。現場においては、これらを駆使したデータ加工に長ける方もいるはずですが、属人的な作業になりがちでほかの方に業務を任せることが難しくなってしまうのが現実です。 

本来であれば、データ加工の後段であるモデル作成に可能な限りリソースを割き、データの前処理における工数は最小限に抑えたいところでしょう。その意味でも、できる限り効率的にデータ加工が行える環境づくりが必要です。

そこで注目されるのが、データ加工に特化したデータプレパレーションツールです。データプレパレーションツールは、データ変換や加工処理などの設定を行うことで、新たなデータを利用する際にも、処理プロセスが再利用できるというメリットがあります。また、データ分布が可視化できることで、異常値の除去などのクレンジング作業を視覚的に行えるようになり、専門的な統計の知識に依存しないデータ加工が可能になります。もちろん、大文字・小文字の変換や、桁数をそろえる、四則演算を行うといったデータ加工の処理が手軽にGUIから実施でき、様々なデータソースから直接データを収集できるため、異なるプラットフォーム内にあるデータも負担なく活用することが可能です。

関連するソリューション・製品

ホーム > コラム・レポート > コラム > 【品質管理部門×DX】
歩留まり向上、検査の省力化などにAIを活用するための第一歩
DX推進の礎となる“データプレパレーション” のイロハ