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模倣品被害の実態とIT活用による対策の必要性

2019/7/5

近年、サプライチェーンのグローバル化やECの普及による物流網の複雑化、スマートフォン向けフリマアプリなどによるCtoC市場の拡大などを背景に、「模倣品」によるさまざまな被害が拡大している。その実態や、企業が取り組むべき効果的な対策、ITソリューションが果たす役割について、デロイト トーマツ コンサルティングの羽生田慶介さんに話を聞いた。

※本稿は、キヤノンマーケティングジャパングループPR誌「C-magazine2019年夏号」の「ITのチカラ」コーナーに掲載されたものを転載しています。

模倣品リスクのインパクトは地政学的リスク、人権リスクや環境リスクに並ぶ



――近年、模倣品による被害への関心が高まっています。その背景を教えてください。


まず押さえておきたいのは、現代社会において、模倣品被害は非常に大きな問題だということです。サプライチェーン全体に関わるリスクで、近年になって顕在化してきたリスクが三つあります。米中貿易摩擦やブレグジットに代表される地政学的リスク、環境や人権に係るリスク、そしてもう一つが模倣品リスクです。


模倣品が近年になって大きな問題となっている背景には、新興国における技術力の進歩があります。従来の模倣品問題は、新興国の業者がブランド力や技術力のある先進国企業の製品をまねて作り、主に先進国の企業や消費者が被害を受けるという構図でした。しかし、近年は新興国と先進国の技術レベルの差は小さくなってきています。特に「世界の工場」となった中国の製造に関する技術力は先進国の水準に近づいており、それによって模倣品のレベルも上がっています。


技術レベルの差が大きければ、正規品と比較して外見や機能が明らかに劣るため判別は容易ですが、技術力が向上したことで判別が難しくなっています。また、新興国が経済的に豊かになってきたことで「本物志向」が高まり、被害を受ける消費者が、先進国だけでなく新興国にも拡大してきているのです。


もう一つ、近年の模倣品問題の背景にあるのが、EC(電子商取引)による流通の複雑化です。


「模倣品による被害やリスクの中には人命に関わるものもあるため、消費者に対する模倣品被害の啓発も重要な取り組みです。」

デロイト トーマツ コンサルティング合同会社
パートナー/執行役員
レギュラトリストラテジーリーダー
羽生田(はにゅうだ)慶介 さん

経済産業省でFTA・EPA交渉に従事した後、キヤノン、A.T.カーニーを経て現職。企業競争力や収益力に直結するルール(規制・標準)をてこにして、戦略策定や渉外支援に取り組む。多摩大学大学院ルール形成戦略研究所副所長も兼任。



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