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画像解析AIシステム開発の課題「Webシステム開発」を効率化し、低コストでシステム構築を可能にする最適な手法を解説

画像解析AIシステム開発の課題「Webシステム開発」を効率化し、低コストでシステム構築を可能にする最適な手法を解説
会場:オンライン
開催日:2024年6月14日「金曜日」
主催:キヤノンITソリューションズ株式会社

低コストでシステム構築を可能にする最適な手法を解説

2024年6月14日、弊社主催で「画像解析AIシステム開発の課題「Webシステム開発」を効率化するには?~ より低コストで迅速なシステム構築でAI開発に集中できる最適な手法を解説 ~」というセミナーを開催しました。

画像解析AIシステムとは何か? 拡大する市場動向と様々なニーズを説明

まず、「画像解析AIシステム」とは何を指しているのかについて、市場の動向と合わせて説明します。

デロイト トーマツ ミック経済研究所が2023年8月に発刊した「AI(ディープラーニング)活用の画像認識ソリューション市場の現状と展望 2023年度版【第6版】」では、用途別の画像AI市場の推移が示されています。

AI活用画像認識ソリューション市場
AI活用の画像認識ソリューション市場の推移
【出典:デロイト トーマツ ミック経済研究所「AI(ディープラーニング)活用の画像認識ソリューション市場の現状と展望 2023年度版【第6版】(プレスリリース)】

様々な用途での画像認識ソリューションに分かれていますが、市場全体の規模が拡大している様子が分かると思います。

その中でも「不良品検知」や「防犯・セキュリティ」「人流・顧客分析」など、人に関するソリューションが占める割合が多いです。

人に関する画像解析AIとは、商業施設などに設置する防犯カメラやそれに準ずる物の利用が該当すると思われます。また、そのほとんどがネットワークカメラ(IPカメラ)ですので、今回の画像解析AIシステムの対象に含まれると考えられます。

画像解析AIシステム構築で大きな割合を占める「Webシステム開発」の課題

次に、画像解析AIシステムの一般的な構成、システム構築で多くのコストがかかる「Webシステム開発」が導入のハードルとなっている理由を解説します。

一般的に画像解析AIシステムでは、多くの仕組みが必要です。まず、解析する対象を撮影するカメラがあり、アプリケーションがあります。アプリケーションはカメラから映像を取得し、AIエンジンを呼び出して処理を行い、その解析結果を踏まえてアプリケーションが動作するという仕組みが多くで採用されています。

画像解析AIシステムを構築する場合、まず「カメラの設置・配線などの工事」が必要です。カメラの選定や照明などの明るさ、設置場所の設定、画角の調整、さらにはや施工方法などを検討し、実際に配線工事を行います。

次に、AIアプリケーションが稼働するサーバーやネットワークなどの基盤の設計・設定が必要です。さらに、Webシステムとして公開する場合は、外部からのアクセスを可能にするWebシステムを開発する必要があります。画面のデザインやレイアウト、利用者への通知、セキュリティ対策などを実装します。

画像解析AIシステムの一般的な構成
画像解析AIシステムの一般的な構成

このように、画像解析AIシステムを構築する際は、AIの開発以外にも多くの仕組みや検討が必要です。その中でも、特に「Webシステム開発」に関するコストの比率が最も高い傾向にあります。当社の実績では、画像解析AIシステムの開発コストの約40%をWebシステム開発のコストが占めていました。

画像解析AIシステムで大きな割合を占めるWebシステム開発
画像解析AIシステムで大きな割合を占めるWebシステム開発

もちろん、カメラの設置台数が増えると、その比率は変わってきますが、メインであるAI開発よりもWebシステム開発のコストが掛かることもあり、その点が導入のハードルにもなっています。当社ではこのコストを下げることが、より市場を活性化することにつながると考えています。

多方面からの需要が拡大する中、エンドユーザー、SIer/AI事業者ともに画像解析AIを活用できる環境が求められています。ただ、それぞれの立場で画像解析AIシステム導入の課題があります。

画像解析AIシステムに関するエンドユーザー、Sier/AI事業者それぞれの課題
画像解析AIシステムに関するエンドユーザー、Sier/AI事業者それぞれの課題

エンドユーザーの観点では、「AI導入にはコストが掛かり過ぎる」「現在利用している既存BIツールでは対応できない」「人材が不足しており、AI導入は待ったなしの状況である」などの課題が挙げられます。

また、SIerやAI事業者の観点では、市場拡大を受けて、自社独自の画像解析AIを販売して顧客獲得につなげたいという要望があります。ただ、「お客さまごとにWebシステムを開発するのは非効率」「Webシステム開発の負荷が大きく、AI開発に注力できない」などの課題があります。

画像解析AIシステムをより低コストで迅速に開発できる最適解「Bind Vision」

画像解析AIシステムに関する課題を解決するため、弊社では画像AI連携プラットフォーム「Bind Vision」を開発しました。どのように画像解析AIシステムにおけるWebシステムの開発を効率化させるのか、「Bind Vision」のサービス構成や特長などを紹介します。

「Bind Vision」は「画像とデータをつなぎ可視化する」ことをコンセプトとしたサービスです。そのメイン機能として、画像解析AIシステムのWebシステム部分をクラウドで提供します。具体的には、画像や数値データを受信・蓄積・配信する機能を活用できます。

例えば、開発者は画像解析AIに入力されたカメラの画像や数値と、AIの解析結果を「Bind Vision」に送ります。「Bind Vision」では公開APIを通じてデータストアにデータを蓄積します。エンドユーザーは蓄積されたデータを自由なレイアウトで表示できるダッシュボード画面からデータの閲覧が可能です。

画像AI連携プラットフォーム「Bind Vision」
画像AI連携プラットフォーム「Bind Vision」

「Bind Vision」は「プラットフォーム」「エッジAI」「クラウドAI」の3つの要素で構成されています。

プラットフォームは、データを送受信APIやダッシュボード、閾値を超過した場合はアラートをメールで通知するなど、画像解析AIシステムにおけるWebシステム機能を担います。

エッジAI、クラウドAIは当社が開発した画像解析AI機能を提供します。これらはプラットフォームの利用が前提となります。また、自社のAIと組み合わせたい場合は、プラットフォームのみの利用も可能です。

「Bind Vision」のメインターゲットはSIerやAI事業者の方々を想定しています。より多くの開発者の方に使っていただきたいと考えています。また、各社のソリューションと組み合わせてエンドユーザーに対しても再販可能です。動作検証用に無償利用が可能なトライアル環境も提供しています。

「Bind Vision」の構成要素
「Bind Vision」の構成要素

プラットフォーム

「Bind Vision」プラットフォームには主に3つの特長があります。

1.画像とデータの時系列登録:画像と数値データを時系列に登録できるので平時からの変化を目視で確認できる

2.リーズナブルな導入コスト:クラウドコンピューティングなので初期導入コストを抑えられる

3.自由度の高いシステム連携:Web APIなのでプログラムを問わずにシステム連携が可能。自社運用のオンプレミスシステムとの連携も容易

また、「Bind Vision」プラットフォームの特長の1つに「ダッシュボード」機能があります。

ダッシュボード機能では、任意のコンテンツを選択・組み合わせによって、利用者独自のレイアウトが作成できるWebユーザーインターフェースを提供します。ダッシュボードには、画像(単体・サムネイル)やグラフ(折れ線、棒、円)、データ(数値、一覧)、地図など8種類のコンテンツが利用できます。今後は利用者の要望も加味しながらコンテンツを拡充する予定です。

「Bind Vision」プラットフォーム「ダッシュボード」機能
「Bind Vision」プラットフォーム「ダッシュボード」機能

クラウドAI

クラウドAIは「Bind Vision」プラットフォームに送信された画像を使って、クラウド上のAIで解析を行うサービスです。利用者は画像を送信後に返却されるコードを付与して、クラウドAIを呼び出します。呼び出されたクラウドAIは処理実行後に解析結果を返却します。

当社では、クラウドAIとして「煙検出AI」を提供しています。煙検出AIとは、画像内に煙が含まれているかを検出し、検出有無・検出位置・類似度(スコア)などの結果を返す画像解析AIです。自治体や消防で利用されている高所カメラ等の画像を解析して災害の早期発見を目的としています。

「Bind Vision」クラウドAI「煙検出AI」
「Bind Vision」クラウドAI「煙検出AI」

エッジAI

エッジAIは、エッジコンピュータを活用してカメラに近い場所で取得した高画質の画像を解析し、その画像や解析結果を「Bind Vision」プラットフォームに送信するサービスです。例えば、河川など配線が難しい場所に対して、SIM通信で活用するケースを想定しています。

当社では、エッジAIとして「水位測定AI」を提供しています。水位測定AIは、撮影画像から水位を算出する画像解析AIです。量水標などの目印を必要とせず、カメラのみで解析が可能です。

「Bind Vision」の提供価格は、プラットフォームの基本プランに加え、画像や数値データの数量によって利用金額が異なります。また、クラウドAI・エッジAIについては利用環境によって異なるため、個別見積りで提供しています。

「Bind Vision」エッジAI「水位測定AI」
「Bind Vision」エッジAI「水位測定AI」

また、「Bind Vision」と類似機能を備えるサービスとしては「クラウド型BIツール」が挙げられます。ただ、当社の調べでは「Bind Vision」と同等のコストで利用できるサービスは存在しません。他社サービスに比べて安価なことや画像を登録できることが、「Bind Vision」の特長です。

現在、1カ月の無償トライアルを利用可能です。当社ホームページから問い合わせいただければ、トライアル申込書をお渡しいたします。申込書を受領後、数日でトライアル環境を用意いたしますので、ぜひご検討ください。

画像解析AIシステムにおける「Bind Vision」活用事例を紹介、幅広く応用できる機能も追加予定

さらにユースケースや実際の導入事例などを踏まえて、具体的な「Bind Vision」の使い方や今後予定している機能追加などを紹介します。

1つ目のユースケースとして紹介したのが「水位計測AIを利用した河川水位監視」です。実際に江戸川区役所様でご利用されています。計測地点から送られる撮影画像から水位を算出し、水位の異常を検出・報告します。量水標などの目印を必要とせずカメラのみで解析が可能です。

2つ目のユースケースが、AIで人物属性を解析してマーケティングに活用する「店舗・施設での来場者分析」です。施設の混雑状況や来場者属性をAIで分析し、その分析結果を「Bind Vision」から店舗の状況画像とともに手軽に確認できます。

3つ目のユースケースが「防災事業者向け高所カメラ監視」です。自治体や消防で利用されている高所カメラ等の画像を煙検出AIにより解析し、画像内に煙が含まれているかを検出することで火災の早期発見に貢献できます。こちらも江戸川区役所様でご利用されています。

4つ目のユースケースが「画像処理アプリとの連携」です。例えば、設備の操作盤のアナログメーターや警報ランプの解析ツールとの連携が考えられます。解析結果だけでなく、定期的に画像を送信することで各操作盤の状況も一目で確認可能です。

「Bind Vision」活用事例「江戸川区役所様」
「Bind Vision」活用事例「江戸川区役所様」

当社としては、「Bind Vision」の効果的な使い方として、お客様に提案するソリューションに組み込んだり、ツールとして利用したりすることを想定しています。現時点ではサービス自体にAIを組み込む機能はありませんので、APIを活用したデータ連携でご活用いただければと思います。

「Bind Vision」はインターネット公開をするシステムにおいて、AIの利用有無に関わらず、画像と数値データを蓄積し、その結果を見せるケースにおいて非常に有用だと考えています。

また、今後は「Bind Vision」プラットフォームに「カメラ操作」「位置情報データ」などの機能追加を予定しています。さらに、より自由度の高いサービスとして利用していただけるよう「カスタム・コンテンツ」「802.11ahの利用」なども検討しています。

「Bind Vision」プラットフォームの今後の機能追加予定
「Bind Vision」プラットフォームの今後の機能追加予定

エッジAI・クラウドAIについては、車両のドライブレコーダーやエッジ端末・カメラにAIを実装する「車載AI」など、顧客要望が多く、活用がしやすいAIの開発・提供を予定しています。

当社は、「Bind Vision」を通じて、お客様の要望に応じた様々な機能を追加し、AI市場の活性化を支援していきます。

また、「Bind Vision」では、連携できるSIerやAI事業者の皆さんのソリューションを探しています。「過去に開発したAIを横展開したい」「新たにAI開発をする上で使い方を相談したい」などありましたら、ぜひ気軽にご相談ください。

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