〈XR×OJT〉 どうする?ベテランの「暗黙知」 バーチャル熟練者が教える 「人依存」から「仕組み依存」へのシフトXR-MRコラム「MREAL MIRAI VALUE」
公開日:2026年7月8日
XR-MRコラム「MREAL MIRAI VALUE」
XR技術が、私たちにもたらす「うれしいこと」今回は、「XR×OJT」についてです。
その「技術」は、誰に引き継がれますか?
新人教育をはじめ、技能講習や設備の操作方法など、企業活動において「教える」業務は必ずと言ってよいほど発生します。そのためには資料の準備や設置場所の確保、設備・機材の用意が必要です。
トレーニングごとに異なる教材や環境を準備するとなれば、時間も費用も大きくかかることは容易に想像できますよね。製造業の現場では今、かつてない規模の「技術の空白」が生まれつつあります。
高度経済成長期を支えた熟練技術者たちは急速に現役を退き、その背中を見ながら育った中堅層も、気づけばすでに後継者を育てる立場になっています。
厚生労働省の『能力開発基本調査』(※)によれば、技能継承に課題があると回答した製造業の事業所は86.5%(平成30年度)にのぼります。人材育成の問題として「指導する人材が不足している」と答えた事業所も63.5%を超えており、現場の危機感は数字にもよく表れています。
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※
出典:厚生労働省『平成30年度 能力開発基本調査』
なお、平成30年度のデータのため、現在はさらに顕著な数値になっている可能性もあります。
長年の経験から培われた判断力、感覚的なさじ加減、トラブル時の対処法――こうした「暗黙知」はマニュアルや引き継ぎ書に書き残しにくく、気づけば次の世代に届かないまま失われてしまいます。

「教える時間がない」「伝わらない」――従来研修の限界
もちろん、多くの現場では、OJTや動画マニュアルの整備、勉強会の実施など、技術継承への取り組みは行われています。しかし現実には、「やっているのに追いつかない」という声が後を絶ちません。それはなぜでしょう?
- 課題① 教える側の限界
- 現場のベテランは生産ラインを抱えながら指導もこなさなければならず、十分な時間を確保できない。「背中を見て覚えろ」文化が残る現場では、体系的な知識移転は難しい。
- 課題② 紙・動画では伝わらない「空間的な技術」
- 手順書や動画では、「どの角度で工具を当てるか」「音や振動でどう判断するか」といった身体的・空間的な技術の伝達に限界がある。理解した気になっても、実際に手を動かすと全く違う、というのはよくあることだ。
- 課題③ ミスによるリスクが高すぎる
- 実機練習には設備破損・製品不良・労働災害のリスクが伴う。失敗が許されない環境では、経験の積み上げ自体がスローダウンする。
- 課題④ 多拠点・グローバル展開への対応困難
- 複数拠点を持つ企業では、ベテランが別拠点へ教えに行くこと自体が現実的でない。「人が動いて技術を伝える」モデルは、もはやスケールしない。
これらを解決できる画期的なアイディアをご紹介します。
背中を見て覚えた時代から、デジタルで見て覚える時代へ
ここで活躍するのが、現実と仮想を融合させるMixed Reality(MR)です。現実の作業環境に仮想物を重ねることで、トレーニング環境を構築することができます。
まず、熟練者の技術や作業ノウハウなど「お手本動作」をデータとして取得し、ホログラム表示としてXRデバイスで確認します。そのお手本を見ながら同じ動きを実践することで、属人的なノウハウをトレーニングコンテンツとして活用できます。
MRを使った訓練環境では、実機を使わず何度でも安全に反復練習できます。
ミスをしても機械は壊れず、けが人も出ない――心理的に安心できる環境で練習を重ねられることが、技術習得のスピードを大幅に高めてくれるでしょう。
お手本を見て自分で試す「作業シミュレーション」の教育コンテンツをぜひご覧ください。
いつでも、どこでも、何度でも。「人依存」から「仕組み依存」へ
そして最も重要な点は、MRコンテンツを一度作成してしまえば、特定のベテランが不在でも、どの拠点でも、何人でも同時に同じ品質の訓練を受けられることです。技術継承が「人」ではなく「仕組み」として機能し始める――これが、製造現場のDXが目指したい姿のひとつではないでしょうか。
今回は、製造業における技術継承の課題と、その解決の可能性としてXRが活用できることをご紹介しました。
とはいえ、「システムを導入すれば解決」というわけではありません。さらに重要なコンテンツ戦略については、次回以降のコラムでご紹介していきます。
XRの活用を通じて、皆さまのお役に少しでも立てるよう、私たちも取り組みを続けてまいります。
次回も、みなさまの人生を豊かにするヒントをお届けできれば幸いです。
著者紹介
黒川 富士子(くろかわ ふじこ)
キヤノンITソリューションズ株式会社
製造ソリューション事業部 ソリューション企画部(XR・イメージング担当)
専門分野は、PR、広告・宣伝プロモーション、マーケティング。1998年、SF・ロマンス・ファンタジーなどを絡めたストーリー仕立ての企業メールマガジンを執筆。当時の会員登録数(現在でいうフォロワー数)は18万人。約20年以上、デジタルマーケティングなどインターネット関連業務に従事。WEBアナリスト。
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