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医療情報の取り扱いに関する法令・ガイドラインの動向

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医師が使用する診療録

まず、初めに医療情報とは、診療の過程で患者の身体状況・病状・治療について、医療従事者が知りえた情報をいいます。一般的にはカルテ(診療記録)に記載される情報です。
法的に保存義務のある医療情報を電子的に保存する場合、以下の3つの要件を遵守する必要があります。

  • 電子保存に関する要件(e-文書法)
    電子保存の三原則(真正性、見読性、保存性)の確保が求められる
  • 外部保存に関する要件(外部保存改正通知)
    保管場所については、これまでは医療機関等が管理する場所と限定されていたが、民間事業者(クラウド事業者含む)が設置するデータセンターへの保存が解禁された
  • 個人情報保護に関する要件(個人情報保護法)
    患者情報は個人情報であり要配慮個人情報であるため、取り扱う際に留意すべき安全管理措置への対応が求められる

上記3つの要件を集約した内容を、厚生労働省が「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」として制定しました。また、総務省・経済産業省は、その医療情報ガイドラインをもとに「医療情報を取り扱う情報システム・サービスの提供事業者における安全管理ガイドライン」を制定しています。これらのガイドラインはまとめて“3省2ガイドライン”と呼ばれています。


下図に医療情報を取り巻く規制についてまとめました。
医療機関等は厚生労働省版ガイドラインを、サービス提供事業者は、統合版ガイドラインを遵守する必要があります。

3省2ガイドラインの尊寿が求められる主体

2023年度上半期には、医療分野における法令や医療情報ガイドライン等の改定が行われました。 その背景には、主に以下の二つがあります。

  • 医療分野におけるサイバー攻撃の多様化、巧妙化
  • 医療におけるクラウドサービス利用の普及

1.法令の改定

以下の法令の改定により、「医療機関等の管理者は、医療の提供に著しい支障を及ぼすおそれがないように、サイバーセキュリティを確保するために必要な措置を講じなければならない」とされています。

  • 医療法施行規則(第14条第2項)
  • 医薬品医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律施行規則(第 11条第2項)

2.ガイドラインの改定

2-1.厚生労働省版医療情報ガイドラインの主な改定
2023年5月に第5.2版から第6.0版に改定され、主な改定内容は以下の通りです。

  • 医療法施行規則の一部改正
  • 情報セキュリティに関する考え方の整理
    ・ネットワーク境界防御型思考/ゼロトラストネットワーク思考
    ・災害、サイバー攻撃、システム障害等の非常時に対する対応や対策 等
  • 新技術、制度・規格の変更への対応
    ・本人確認を要する場面での運用(eKYCの活用)
    ・オンライン資格確認の導入に必要なネットワーク機器等の安全管理措置
    ・新たなネットワーク技術(ローカル5G)の利用可能性、利用場面
    ・医療情報の共有・提供に関連する法令等の規定や技術・規格の動向

下図の通り、構成が大きく変更されました。
第5.2版は本編と別冊編という構成だったのに対して、第6.0版では4編の構成となり、それぞれのガイドラインの対象者を明確にしています。

第5.2版、第6.0版

2-2.統合版医療情報ガイドラインの主な改定
厚生労働省版医療情報ガイドラインの改定に伴い、2023年7月に第1.05版から第1.1版に改定されました。クラウドサービス利用の普及に伴い、医療機関等によるサービス提供事業者への委託等が増大したことから。委託に基づく責任分界を明確にする必要性がでてきています。以下が主な改定内容です。

  • 医療機関等へ合意形成のため情報提供すべき項目が追加
  • リスク特定の際の医療情報システム等提供上の代表的な脅威が追加
    ・ランサムウェア感染

2-3.医療機関等とサービス提供事業者との合意形成(リスクコミュニケーション)
医療機関等のサービス提供事業者への委託等の増大に伴い、両者において合意形成(リスクコミュニケーション)が重要になります。以下にその例を記載しています。

リスクコミュニケーション

医療機関等は、提供される医療情報システム・サービスの安全管理について基準(厚生労働省版医療情報ガイドライン/統合版医療情報ガイドライン/その他法令等が掲げる基準)を満たしているサービス提供事業者を選定する必要があります。そして、医療機関等は、サービス提供事業者に対する管理監督を、サービス提供事業者はその遵守状況の報告をしなければなりません。
ここまで見てきた通り、医療情報を適切に取り扱うためには、遵守すべき要件(法令・ガイドライン)が数多く存在します。また、これらの改定や内容変更にも常に対応しなければなりません。抜け漏れなく全てをカバーするための体制づくりを、ぜひキヤノンITSにお手伝いさせてください。

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