製造業におけるDX化の現状と課題、DX化を加速させるためのアプローチとは?コラム
公開日:2024年12月24日


「他社の製造業は、どれくらいDXが進んでいるのだろう?」「どこから手を付ければよいのか?」と、製造業におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)化についてお悩みではないでしょうか?製造業でDX化やAIの導入を進める理由は以下です。
・作業効率向上
・コストダウン
・ニーズに合わせた業務改善
など、ここでは挙げきれないほどのメリットを受けられるので、製造業のDX化に取り組む会社が増えているのです。
しかし、メリットが多いことをなんとなく頭でわかっていても、どこからやればよいか、どれくらい時間がかかるのかと、DX化の最初の一歩を踏み出すハードルが高いのも事実です。本記事では製造業でのDX化の課題や実例、スケジュール感を見つつ、自社のDX化の「一歩」を踏み出すためのヒントを解説します。
-
AI導入を含む解決策と成功事例
-
AIを使ったDX推進の具体的なステップ
-
DX化が進まない3つの理由
-
まとめ
DX化が進まない3つの理由

製造業でDX化を推進することは想像しているより大変です。なかなかDX化を進められない理由と、解決案をお伝えします。
-
コストの高さ
製造業のDX化は全社に及ぶケースが多いため、一定のコストがかかります。また、アナログからデジタルへシステムや仕組みを移行する際にもコストがかかります。
また、かけるコストに対してどれだけの効果をあげられるのか、いつ回収できるのかわからないことも踏み出せない要因のひとつです。解決案:短期的な効果を期待してしまうと、費用対効果が合っていないような印象を受けます。ですが、DX化は中長期的に継続していき、その上でコスト回収していくものです。(設備投資と同じような考え方です)
2年、3年、5年スパンで取り組むことを担当者及び経営層も事前に理解しておくことでコストに対する考え方が変わってきます。
-
人材不足
DX化を推奨するとなると、誰かが旗を振って責任を持ってやり切ることが不可欠となります。そもそも人員が不足している組織の場合「誰が担当するのか」は大きな問題であり障壁となります。
また、DX化の専門家やコンサルと協力して推進する場合でも、共通言語でのコミュニケーションが必要であるにもかかわらず「現時点で担当者が居ない」ことはザラにあります。
DX化したい、では誰が責任者?デジタルに精通している担当者はいますか?
となっている企業は、なかなか最初の一歩を踏み出せません。
解決案:誰がリードするのか、チームを組むのかを最初に検討しましょう。必要であれば社長が旗を振る必要があるかもしれません。
推進者を任命する場合は、推進に取り組みやすくするための配慮が必要です。既存業務の負荷を減らしたり、チャレンジを評価するなども検討しましょう。
-
経営層の意識不足
現場レベルでDX化の推進を検討していたとしても、経営層が必要と感じていなければ一歩を踏み出すことは困難です。
仮に潤沢な予算があったとしても、経営層の意識が不足していればDX化を推進することはできません。
解決案:AI活用による変革の必要性を、時間をかけて話し合いましょう。他社の事例や自社に置き換えた場合、想定する効果なども言えるようになっているとよいです。
AI導入を含む解決策と成功事例
DX化を推進する中で、特に注目を集めているのがAIの導入です。AIを活用することで得られる効果はわかりやすいので、社内のDX化を推進していく上での「とっかかり」としてもAIの効果は押さえておくとよいでしょう。
製造業がAIを活用することで得られる代表的なメリットは以下となります。
- 作業負荷を低減
- 技術の伝承(言語化・標準化)
- コスト削減
- 生産量・在庫最適化
- 現場の安全性が向上
AIを活用した業務効率化
製造業でのAI活用を考えたとき、真っ先に効果が出やすいのが「需要予測」です。
需要予測とは、需要の変動要因を定量的に分析し、将来の売上、受注量、客数、在庫量を算出することで、通常では経験やこれまでの実績、手動でデータを分析したうえで予測していました。
AIの導入により実現できることは以下の通りです。- 発注予測精度が向上
- 発注計算の自動化により、作業負荷を低減
- 属人化を排除し、発注業務を標準化
- 生産量・在庫最適化による欠品の抑止
- 適正在庫量の試算精度が向上
ここで、需要予測の導入事例を見てみましょう。
導入事例:株式会社ホリゾン
目的:「在庫量の削減」と「欠品の最小化」を両立する目的で、AIによる需要予測の有効性を検証。
結果:現行方式(直近6ヶ月平均)での予測量と比較した結果、比較対象のうち75%の部品への需要予測精度が改善
実施体制→経営層、現場責任者(情報システム担当、業務担当)、外部AI人材
解説:在庫量削減と欠品の最小化、一見逆のアプローチに見える目的ですが、すなわち「在庫の最適化」を精度高く行うことが目的となります。
在庫量(バッファ)が多いと倉庫代、工程の流れ、フォークリフト(場合によっては)と、無駄が多いですが、欠品を起こすと当然ながらお客様にご迷惑がかかります。
両方の最適化をAIによって改善したということですね。現行から75%も改善とのことで、かなり大きな効果が出ているのではないでしょうか。
また、実施体制にも注目してください。外部のAI人材が必要なことは当然として、経営層と現場責任者がタッグを組んで実施しています。
ぜひ、自分の会社ならどのような人材が担当者になるかな?と想像してみるとよいと思います。
段階的なDX導入の提案
DX化を進めていくにあたり、以下のような段階を踏む必要があります。大まかなステップを把握し、導入イメージ、スケジュール感をイメージしてみましょう。
-
課題を洗い出す
-
社内でDXについての理解を深める
-
課題解決につながるようにデジタル化を進める
人材育成と外部パートナーの活用
とはいえ、DX化を導入する際にどこから手を付けてよいか、そして最初に何をやれば効果が大きいかの判断は難しいものです。そこで2つのステップを踏む必要性があります。
-
社内でDX化の人材教育
-
外部パートナーを活用
社内でDX化における人材教育、育成を進めることで、外部パートナーとの連携がしやすくなります。まったく知識が無い状態で外部パートナーと連携しようとすると、DX化やAI化の施策に対して何が正解でどんな成果がでているか、正しく評価できずに進めることになってしまいます。
現場での動きをよく理解している担当者がDXの基本的な知識を身につけることで、導入プロセスや成果に対する効果検証を外部パートナーと対等な立場で進められます。
AIを使ったDX推進の具体的なステップ
それでは、導入にあたり全体的なイメージを持っていただいたところで「需要予測」を導入するにあたって具体的なステップを紹介いたします。
AIを利用したデータ活用の流れ
設計
-
データの確認(必要データの定義と準備)
-
実務での活用イメージ検討(AI予測結果の使い方の検討)
-
AI導入の目的と目標設定(業務改善点の把握、AI導入範囲の決定、業務プロセスの見直し)
-
初期費用の検討
検証
-
モデル構築・精度検証・最適化
-
業務への適用可否検討
-
本番実装計画の策定
実装
-
業務への活用
-
AI精度モニタリング・再学習
AI導入の目的・目標設定では「現在〇〇な業務をAI活用で〇〇したい」や、「AIで業務精度を〇〇%改善したい」など具体的な目標を決めましょう。
また、範囲を決めることも重要です。「このデータを使ってみよう」「A〜C工程の業務プロセスを〇〇に変えよう」などです。
中長期的なAI活用プラン
AI活用及びDX化は、無理なく小さくスタートし、継続的にデータ活用・取得していくことが重要です。
はじめは3ヶ月、6ヶ月くらいで効果検証できるスケジュールにしておき、AIによるデータの再学習やモニタリングを繰り返すことで精度を上げていきましょう。
またAIを導入したことにより、現場では作業ミスや軽い混乱が起こることも想定されます。
新しい取り組みをすることによる期待感もありますが、導入後効果検証を続け1️年、3年、5年と中長期でのコスト削減や現場改善をしていくことを想定してプラン策定することが懸命です。
-
範囲を絞ってAIを導入する
-
効果検証、改善を行う
-
効果を実感する
-
ノウハウを転用できそうな工程へ範囲広げる
まとめ
DX化とAI導入による製造業の未来
DX化と聞くとこれまでと全然違うことを実施する、莫大なコストがかかる、と身構えてしまうことが多いと思います。
ですが私たち製造業は、これまでも日々現場で業務改善や改善提案を行ってきました。
デジタル化、AI、IoTが身近になったことにより、これらは製造業にも業務改善に有効なツールとなりえる時代が来たのです。
クレーム発生時は日報の振り返りではなく、検索によるエラーの洗い出しへ。
発注業務は担当者の長年の経験や記憶ではなく、膨大なデータを使ったAIによる発注予測へ。
生産現場のボトルネックは、担当者の聞き取りだけではなくIoTによる業務プロセスの見える化へ。
DX化、AI導入により製造現場は大きく変わろうとし、すでに変わっている企業も増えています。導入し始めはなかなか慣れないことも多いですが、近い将来「DX」という言葉も使われなくなるくらい標準化されると感じます。
デジタル化により業務改善がとってもしやすい時代に入りました。これをチャンスと捉えて積極的に業務改善への第一歩を踏み出してください。
参考資料
経済産業省 製造業におけるDXについて
AI導入ガイドブック
製造業DX取り組み 経済産業省
DX王
キヤノンITソリューションズ
関連するソリューション・製品
- AI(人工知能)
- AIの活用が進み、AIを使ったソリューションが身近になる一方、実用化にまで至らないAIプロジェクトも数多く存在します。
キヤノンITソリューションズでは、長年にわたるSIerとしての経験と業務知識、さらにはR&D部門での研究によって得た知識や、商品開発の技術を駆使して、お客様の課題解決にAIを活用した支援を行います。 - データマネジメントサービス
-
消費者ニーズやビジネス市場の変化に柔軟に対応するためには「データ活用」が必要です。そのデータ活用には、データとデータを活かせる人材が重要です。ビジネス変革に効果的なデータ活用には、活用の目的に沿ったデータを整備し、そのデータを蓄積する仕組みを作る必要があります。かつデータを分析しインサイト(本質を突いた気付きや洞察)を得るためのデジタル人材が欠かせません。
キヤノンITソリューションズは、データを整備・活用する仕組みを構築し、「価値あるデータ」と「データを活かせる人材(デジタル人材)」の創造を『データマネジメントサービス』として提供することで、お客さまのDX実現を支援します。 -
※
DXとは、Digital Transformation(デジタルトランスフォーメーション)の略称です。経済産業省ではDXの意味として「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」 と定義されています。
- データマネジメント コンサルティングサービス
- お客さまの社内における情報資産の管理状況を調査し、第三者視点で評価を行うことでデータの管理に関する強み・弱み・課題などを洗い出すアセスメントサービスを提供します。加えて、データマネジメント戦略の立案およびデータガバナンスの策定、データカタログの整備・管理・公開、データを起点とした業務プロセスの可視化と最適なデータモデルの策定など様々なメニューを通じて、お客さまのデータマネジメントの推進を支援します。
-
※1
DMBOK2
DMBOK2は、DAMA(the DAta Management Association International)が作成した「データマネジメントに関する知識体系」=Data Management Body Of Knowledgeの第2版となります。
DAMAは世界各地に支部を持つ、全世界のデータ専門家のための国際的な非営利団体であり、DMBOK2ではデータマネジメントに関する11の知識領域が定義されています。
-
※1
こちらの記事に関する資料をご提供しています
お申し込み後、ご登録のメールアドレスに資料のダウンロード用URLをご案内いたします。是非お気軽に、お申込みください。