アプリ化で確実に届ける情報をクラウド化で止まらない基盤を LTI連携で広がる学び環境を 授業支援システム(LMS)統合事例
分散していたポータルと複数のLMSを整理し、全利用者が使う統合ポータルへ。学生・教員・職員の情報共有を円滑にする。
学校法人明治大学 様のケース
学生約37,500名・教職員約3,700名、計約41,200名が日々利用する明治大学の学習・情報基盤“Oh-o! Meiji”。2013年の導入から約10年が経ち、学生・職員ポータルに加え、授業支援システム(LMS)も複数運用されており、利用者の利便性に加え、スマートフォン対応やお知らせの確実な情報伝達にも課題を抱えていた。同大学は長期ビジョン「MEIJI VISION 150-前へ-」の実現に向け、「情報化戦略」に基づく重点施策として、2023年、キヤノンITソリューションズとともに大規模なリプレイスを実施。統合ポータルへの一本化、ネイティブアプリ化、クラウド基盤への移行で、学びと大学生活の体験を大きく刷新した。約41,200人を支える情報基盤は、どのように生まれ変わったのか。
お話を伺ったお客さま
事務長 筧 直之 様(右)事務長補佐 村川 陽 一 様(左)

樋代 竜也 様(右) 栗田 篤史 様(左)

事務長補佐 竹花 和也 様(左)、事務長 市川 園子 様(右)

お客さまが実現できたこと
- 統合ポータルを導入し、分散していたポータルと複数のLMSを集約。アプリのプッシュ通知により、アクセスの約半数がスマホ経由に
- アクセシビリティーを重視し、スクールカラーの紫紺を基調にデザインを刷新。要望の高かった「ファイルボックス」や「クリッカー」で利用者の使い勝手が向上
- LTI1.3準拠で「Panopto」など他の教育システムとシームレスに連携。Azure移行で一斉アクセス時も安定、法定停電の停止も解消
お客さまの課題
- 分散していたポータルと複数のLMSを一元化
- 費用を抑えつつ、機能追加と安定稼働の両立
- 利用者から要望の多かったスマホ対応やペーパーレス化
背景・課題学習・情報基盤“Oh-o! Meiji”を核に、約41,200人の学びと大学運営を支える
明治大学の教育・研究活動と大学運営を情報の面から支えているのが、同大学の情報部門だ。全学の長期ビジョンの実現に向けて、情報部門もまた重要な役割を担っている。

今回のプロジェクトの背景についてお聞かせください。
大学として掲げるビジョンを、情報部門としてどう果たしていくか。その将来像をまとめたのが、『情報化戦略』です。2019年に策定し、2026年にはAIやデジタル技術の進展を踏まえて内容を更新しました。関連部署の職員や教員の協力も得ながら、プログラム・プロジェクト体制で一つひとつの施策を進めています。
その中でも大学の“核”となるのが、学生・教職員が日々利用する学習・情報基盤“Oh-o! Meiji”です。お知らせなどを扱うポータルと、授業で使う授業支援システム※の主に二つで構成されています。利用者が日常的に利用する大学の中核システムなので、情報化戦略においても特に重要なプロジェクトと位置づけ推進してきました。
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LMS。同大学では“クラスウェブ”と呼称)
“Oh-o! Meiji”を前回更新したのは2013年ですね。
当時は授業で使う教員もそれほど多くなく、操作性を重視して元のパッケージに大規模なカスタマイズを施して導入した経緯がありました。当初はかなり操作性に力を入れてカスタマイズしたので、先生方の利用率は年々伸びていきました。ただ、そのように作り込んだがゆえに、その後の機能の進化という面では、発展させていくのが難しい状況になっていったのです。アクティブラーニングの機能を授業で使いたい、当時なかった小テスト機能が欲しい。そうした教員からの要望が届いても、応えづらい状況が生まれていました。 (筧様)
インフラ面でも変化が押し寄せていた。オンプレミスで構築していたため、利用者の増加に伴い、とりわけ4月の履修登録期にはアクセスが集中し、システムがダウンしかねない場面もあった。そこへコロナ禍が重なり、ほぼすべての授業がオンラインに移行。チューニングを重ねて何とか乗り切ったものの、「安定的に運用したい、クラウドへ移していけたら」という思いは強まっていた。
さらに学生のスマートフォン利用が当たり前になる中で、スマホやアプリへの対応の遅れも顕在化していく。こうして同大学は情報化戦略に基づき、ポータルとLMSそれぞれの将来像を見据えたプロジェクトを立ち上げて、システムを抜本的に見直す検討に入っていった。
分散していたポータルと複数のLMS、顕在化していった課題
運用を重ねる中で、課題は少しずつ顕在化していった。学生・教員・職員の情報共有を円滑にすることが、課題だったという。
ポータルは、学生向けの“Oh-o! Meiji”と、職員向けの “MICS”が別々に運用されてたそうですね。
当時は、“Oh-o! Meiji”は学生向けのポータルで、職員用のポータルは”MICS”という別のシステムでした。しかも教員は“MICS”にアクセスできない。ですから、職員が“MICS”のお知らせの中から教員に関係するものを選んでメールで転送したり、時には印刷して研究室に届けたりと、教員と職員の間の情報共有そのものに、二度手間が生じていた。そんな運用をしていたのです。(筧様)
お知らせをめぐる利用者の声も切実だったとお聞きしました。
受け取る側の学生からすると、お知らせがたくさん届くので、重要なものがすぐ埋もれてしまう。検索機能も弱く、探しづらいという声がありました。(筧様)
重要なお知らせを手元に残す“ピン留め(スター)”のような機能もなく、既読状況も分かりづらい。スマートフォンへのプッシュ通知もできなかったのです。旧システムにもモバイルサイトはありましたが、機能は限られていて、学生はPCサイトを小さな画面で無理やり開いて操作していました。スマホ対応への需要は大きかったと思います。(竹花 様)
学外には出したくないが学内には配りたい、といった資料共有の手軽な仕組みもなく、メール頼りになることも多かったです。LMSでは、“クラスウェブ”とeラーニング専用の“e-Meiji”が併存しており、二重運用は保守も費用も負担でしたし、利用者から見ても分かりにくい。システム間を連携する仕組みもなく、動画配信のような外部ツールとの連携も取りづらい状況でした。加えて、毎週のメンテナンスで早朝にシステムを停止する運用は、1限を担当する教員から不評でもありました。(筧 様)
費用は抑えつつ、バージョンアップの恩恵は継続的に受けられるようにしたい。
こうした思いから、同大学はパッケージの大規模カスタマイズを避け、できるだけパッケージを活かす方針を固める。その上で、統合ポータル化、スマホアプリ対応、お知らせ機能の充実、申請フォームやペーパーレス化、教職員グループ支援、そしてクラウド化といった実現したいことを一つひとつ整理し、リプレイスの検討を本格化させていった。
解決策と効果初代から続く信頼を土台に、キヤノンITSと共創

パートナー選定は、ポータルとLMSそれぞれについてプロポーザル方式で実施されたそうですね。
事前調査の段階では、LMSだけでも十社を超える業者さんにヒアリングして必要な機能をブラッシュアップし、必須・推奨に分けた機能要件を各社様にご提案いただきました。
LMSでは、実際に使う教員も選考委員に加わって、価格だけでなく、これまで課題としてきた点をどう解決するかまで盛り込んだ提案を、総合的に評価していきました。また、LMSとポータルは別々の調達でありながら、両者の連携も重視しました。学生からすると、LMSで出したお知らせがポータルで見られないのは致命的です。別々に検討しつつも、一体的に導入した場合の効果まで提案してもらいました。(筧 様)
こうした点を総合し、最も高い評価を得たのが、2013年から伴走してきたキヤノンITソリューションズ(以下キヤノンITS)だった。既存システムの操作性への理解が深く、大学との連携もスムーズ。同大学は、全利用者が使う統合ポータルへの一本化と、“e-Meiji”の機能を“クラスウェブ”へ統合する方針で、リプレイスに踏み出した。
スマホファーストのネイティブアプリで“手のひらの学び”を実現
今回のリプレイスの大きなトピックが、レスポンシブ対応にとどまらないiOS/Androidのネイティブアプリ化だ。
アプリ化の背景には切実な課題があったそうですね。
以前からメール転送の機能はあったのですが、メールだけでは十分に情報が届かないと認識していました。LINEやスマホのプッシュ通知で確認するのが当たり前になっている中で、そこに何かしら対応する必要があると考えました。(栗田氏)
そこで、セキュリティを保ちながら、スマホならではの生体認証を使い、一度認証すればクイックにアクセスできる仕組みにこだわりました。ここはかなりキヤノンITSさんに頑張っていただいた部分です。(竹花氏)

“ 学生が手軽に、クイックに情報へアクセスできる。ビューアーに徹したアプリと確実なプッシュ通知で、学びの体験は大きく変わった 。”
お知らせやLMSの課題提示、教員コメントはプッシュ通知で確実に届く。LMSの各機能もポータルの延長線上で利用できるため、システム間の境界を感じさせない直感的な操作環境を実現した。効果は数字にも表れている。今では全体のアクセスのうち、約半分がスマートフォン経由となり、旧システムとは明らかな差が生まれた。発信する側も、誰がきちんと読んでいるかを把握できるようになっている。
設計思想は徹底して「ビューアーに徹する」ことだったとお聞きしました。
編集機能は完全に切り捨て、PCでの操作を想定しています。アプリは、学生が手軽に、クイックに情報を確認できる閲覧専用のツールとして磨き込みました。意外な効果もありました。マスコットキャラクターのアイコンがスマホに並ぶことで、愛着や帰属意識につながっているようです。もともと狙ったものではないが、新入生も入学時の案内からそのままアプリを使い始め、離脱せずに使い続ける傾向が見られるなど、定着も進んでいます。(竹花様)
紫紺のデザイン刷新、LTI連携、Azureクラウド化で全体を底上げ
デザインも大きく刷新されましたね。
以前のシステムとは違い、スクールカラーの紫紺(しこん)を全面的に採用しました。毎日使うシステムだからこそ、大学への愛着や親しみやすさを感じてもらえるように、というコンセプトです。
アクセシビリティーを重視し、細部まで作り込みました。提出物の期限や未提出の課題が時間割表の上で一目で分かるなど、学生目線のUIも工夫しています。画面仕様は、週に一度の定例会で大学側の意見を取りまとめながら、一つひとつ詰めていきました。
外部ツール連携では、LTI1.3※準拠の仕組みを採用しました。カスタマイズを増やさず、足りない機能は外部サービスと連携する。
その方針を象徴するのが、動画配信“Panopto”との連携です。Panoptoは先行して単独運用していたが、履修者情報を持たないため、動画を特定の授業の学生だけに公開するには手間がかかっていました。今回のLTI連携により、動画を追加すれば、その授業を履修している学生だけに自動で権限が付く。視聴状況もLMS側に取り込めるため、教員はシステムを行き来せず、ワンストップで完結できるようになりました。(竹花 様)
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LTI 1.3=Learning Tools Interoperability 1.3:IMS Global Learning Consortium(現1EdTech)が策定した、LMS(学習管理システム)と外部の学習ツール・システムを安全に連携させるための国際標準規格。従来のLTI 1.1などからセキュリティ面が大幅に強化されている。
基盤はオンプレミスからMicrosoft Azureへ移行しましたね。
物理サーバーでは、特定の時期だけメモリーを増やすといったことはできませんでした。今は履修登録期に合わせて増強し、アクセスの少ない夏休みには最低限に絞るといった柔軟な運用ができます。また、特定のユーザーに絞って公開したいという日本特有の要件にも、国産の“in Campus”との連携できめ細かく対応できました。資料共有“ファイルボックス”は、教職員・学生の区分に加え、所属や学年などに応じてきめ細かく公開範囲を設定でき、「学部内だけに配りたい」といった現場の要望にも応える。"クリッカー"など新機能も加わりました。(竹花様)
こうした大規模な刷新を支えたのが、両者の伴走体制だったそうですね。
2年に及ぶプロジェクトでは、毎週木曜に長時間の定例会を重ねました。長い日は朝から夜まで、8時間近く議論することもありました。大学側から提案し、課題をチケット管理する“Redmine”を導入し、不具合の件数の増減まで見える化もしました。納期に向けて残課題を追い込む局面もありましたが、キヤノンITSの開発リーダーが大学と開発の間を丁寧に取りまとめてくれました。
難しい相談にも、実情をざっくばらんに伝えた上で『もう少し社内で頑張ってみます』と正直に向き合ってくれる。だからこそ信頼できました。約2年にわたる毎週の議論は楽ではなかった。それでも粘り強く重ねたからこそ、新しい“Oh-o! Meiji”を届けられた と思います。(村川 様)
今後の展望クラウドを土台に、生成AIの活用も含めた利便性向上

クラウド化がもたらしたのは、何でしょうか?安定稼働だけではないとお聞きしました。
これまではハードウエアの耐用年数に合わせて、数年ごとに更新するスタイルでした。それがクラウド化で、システムを継続的に育てていけるようになったのは大きいですね。(筧 様)
今はIaaS型で運用していますが、将来的にはより完全なSaaS型になってくれれば、私たちはさらに手が離れます。他の大学さんにも使われるパッケージとして成熟していけば理想的です。(竹花 様)
新たな取り組みとして、生成AIの活用が視野に入っているそうですね。
“Oh-o! Meiji”には膨大なデータが日々蓄積されています。うまくAIツールを利用すれば、たとえば出席が滞りがちな学生の傾向を、データから早めに捉えられるかもしれません。今後もキヤノンITSさんと意見交換を重ねながら、新たな活用方法を検討していきたいと思います。外部ツールとの連携も、次の展開を後押ししてくれます。全学的にオンライン試験(CBT)の検証を進めていますが、こうした外部ツールも、LTIを使えば“Oh-o! Meiji”と連携させやすい。器はすでに整いました(竹花様)、
蓄積したデータの活用も、これからのテーマです。データを貯める仕組みは整いましたが、それをどう分析して有益な情報を引き出すかは、まだ手探りです。(筧氏)
データに基づく教育支援や教育改善も検討テーマだそうですね。
進化が止まってしまうと、また何年後かに大きな作り替えが必要になる。他大学で活用が進んだ機能がパッケージに取り込まれ、本学にも還元される。そんな形が理想です。大学からもやりたいことを相談し、キヤノンITSからも提案をいただきながら、双方で知恵を出し合っていきたいです。(筧様)
約41,200人の学びを支える基盤は、次の進化に向けて着実に歩み始めている。
明治大学 様 プロフィール
- 学校名
- 学校法人明治大学
- 所在地
- 東京都千代田区神田駿河台一丁目1番地
- 事業内容
- 1881(明治14)年に創立された明治法律学校を起源とし、「権利自由」「独立自治」を建学の精神に掲げる私立総合大学。以来140年を超える歴史の中で、法曹をはじめ社会の各界へ多彩な人材を数多く輩出してきた。現在は法・商・政治経済・文・理工・農・経営・情報コミュニケーション・国際日本・総合数理の10学部と大学院、専門職大学院を擁し、駿河台・和泉・生田・中野の4キャンパスに学生約37,500名・教職員約3,700名が集う、国内有数の規模を誇る総合大学である。「『個』を強くする大学」を理念として掲げ、一人ひとりの個性を伸ばす教育を推進。2031年の創立150周年を見据えた長期ビジョン「MEIJI VISION 150-前へ-」のもと、教育・研究・学生支援それぞれで全学ビジョンを掲げ、グローバル社会で活躍する人材の育成と、社会に開かれた研究・社会連携の取り組みを積極的に展開している。
- Webサイト
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本記事は、取材時点のものです。
キヤノンITソリューションズ 担当者より
文教ソリューション事業部
文教ソリューション営業本部
第二営業部
弓狩 基昭
明治大学様とは、現行システムの運用課題や将来構想を議論しながら、本プロジェクトを推進してまいりました。ポータル統合、スマートフォンアプリ化、クラウド移行という変革を通じ、約41,200人の学生・教職員の皆様に新たな価値をお届けできたことを大変嬉しく思います。今後も生成AI活用やデータ利活用といった挑戦に伴走し、大学DXの実現に貢献してまいります。
第二開発部 岡本 信慶
本プロジェクトは「既存システムからの継承」と「新システムでの進化」をコンセプトに掲げ、約41,200人が利用するシステムとして、明治大学様の多大なるご協力を賜りました。メンバー全員で日々協議を重ね、新しい"Oh-o! Meiji"をリリースできたことに、心より感謝申し上げます。今後も新たな価値の創出と利用者の声の反映を通じて、さらなる発展に貢献してまいります。
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