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DX推進に必要なのは何よりもマインドセット

  • 特別企画②

DXを自然な形で組織内に発生させるためのアプローチ

10月7日、「キヤノンITソリューションズ共想共創フォーラム2022」2日目の特別講演では、株式会社圓窓代表取締役の澤円氏が登壇し、「デジタルトランスフォーメーション(DX)を本当の意味で推進するために必要なマインドセット」と題した講演を行いました。「何をもってDXというのか」「DX人材とはどんな人なのか」といった疑問をひもときつつ、DXを自分ごとにしていくための具体的なヒントが語られました。

ミッション達成のためにデジタルを使うすべての人が「DX人材」となる

澤 円 氏

株式会社圓窓
代表取締役
澤 円 氏
Madoka Sawa

「DX人材」とはどんな人たちでしょうか。よくデジタルネイティブ世代が中心になるといわれますが、彼らはDX人材というよりも「デジタルでないと耐えられない人たち」です。

ならばIT部門の人たちはどうでしょうか。彼らもデジタルに強く、有力な候補となることは間違いありませんが、必ずしもDX人材とイコールではありません。

DX人材について考えるためには、その前にまずビジネスそのものについて考える必要があります。私は「経営の3層構造」と呼んでいるのですが、ビジネスにおいては経営者、マネージャー、一般社員のそれぞれ3つの視点が必要です。

経営者に求められる視点は社会貢献です。社会に貢献しないビジネスは存在しないと私は考えています。より良い社会を実現するためのビジョンを描くことが、経営者の役割となります。

そしてそのビジョンを仕組み化し、運用していくのがマネージャーの視点です。

一方、最も解像度の高い世界を見ているのが一般社員の視点であり、社会に貢献するために各自に求められるタスクを実行していきます。

このようにビジネスの目的は常に一貫しており、会社に所属している全員が社会に貢献するために自分のリソースを使います。会社のミッション達成のために、デジタルを最大限に使おうとする人がDX人材です。決してプログラマーのことを指すわけでも、デジタルネイティブ世代の人たちだけを指すわけでもありません。社会に貢献したいと考え、組織としての目的を共有するならば、経営者もマネージャーも一般社員も、すべての人がDX人材となり得るのです。きれいごとに聞こえるかもしれませんが、この「きれいごと」を本気でやれる人こそが、本当に強いのです。

ですが、DX人材といえども、すべての物事を一人でこなせるわけではありません。自分のできることを行い、できないことを任せて、ミッション達成に貢献することが重要です。自分自身のパフォーマンスを最大化することで他の人たちを助け、一方で他の人たちに助けられることが、結局のところ「仕事ができる人」の定義になると私は考えます。

現場から生まれた「アイデア」を組織の「仕組み」に組み込んでいく

ただしデジタルに対するある程度のリテラシーもしくは知識は不可欠です。社内にはITを苦手としている人たちもいますが、自分が分からないのは他の誰のせいでもありません。厳しい言い方になるかもしれませんが、これまでのツケが回ってきたのではないでしょうか。

しかし今からでも間に合います。一番邪魔になるのは余計なプライドで、要は「教わる」勇気を持てるかどうかです。これができるかどうかで、今後が大きく変わってきます。デジタルはすでにビジネスや社会のインフラとなっているわけですから、そのインフラを使いこなせないというのでは、これからのキャリアにおいて致命傷になりかねません。

そして経営層の方々も、デジタルについてよく分からないのであれば、「黙って任せる」勇気を持つことが大切です。最悪なのは「口は出すけど金は出さない」経営者です。分からないのであれば、せめて黙りましょう。

ビジネスの現場では常に多くのことが起こっています。そうした中から生まれてくる現場のアイデアを、いかにして組織の仕組みに組み込んでいくのか。そこで重要な役割を果たすのがデジタルです。ビジネスとデジタルはそれぞれ独立して存在しているわけではなく、両者が完全に融合した状態を作っていく必要があります。そうすることによってDXは自然な形で組織内に発生していくはずです。

もちろん思い切ったことをやればやるほど、想定外のさまざまなことが起こりますが、そうした想定外の出来事に対して的確な判断を行うことが、まさに経営者の仕事であり真骨頂です。

そうした場面で決して行ってはならないのは、想定外の出来事への対応を「怒り」でコントロールしてしまうことです。怒りでコントロールした成功体験は習慣化するため、社員を委縮させてしまいます。ただでさえ人は「○○○すべき」といった観念にとらわれがちなため、経営者は「心理的安全性をどうやって作るか」を考えることが必要です。

思いついたアイデアを実行し未来を創り続けよう

ここでピーター・ドラッカーの言葉を贈りたいと思います。ご存じのとおりピーター・ドラッカーは世界的な経済学者で多くの名言を残していますが、中でも私の最も好きな言葉の1つが「未来を予測する最良の方法は、未来を創ることだ」というものです。

どうにもならない過去や、今この瞬間に起こっている出来事に対処しなければならない現在に対して、未来はまだ何も決まっていませんので、私たちが生きている限りにおいてずっと創り続けることができます。

これは非常に重要なポイントであり、私も皆さまと共に多くのことをやっていきたいと思っています。ぜひ一緒に、素敵な未来を創っていこうではありませんか。皆さまにおいても、思いついたアイデアをどんどん実行に移していただきたいと期待しています。

澤 円(さわ・まどか)

株式会社圓窓代表取締役/元日本マイクロソフト業務執行役員
立教大学経済学部卒業後、生命保険会社のIT子会社を経て1997年にマイクロソフト(現・日本マイクロソフト)に入社。2011年にマイクロソフトテクノロジーセンターセンター長に就任、業務執行役員を経て2020年に退社。2006年には世界中のマイクロソフト社員の中で卓越した社員にのみビル・ゲイツ氏が授与する「Chairman's Award」を受賞した。現在は、自身の法人の代表を務めながら、琉球大学客員教授、武蔵野大学専任教員のほか、スタートアップ企業の顧問やNPOのメンター、セミナー・講演活動を行うなど幅広く活躍中。

※ 記事中のデータ、人物の所属・役職などは、記事掲載当時のものです。

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