次世代データセンターの全貌
- 特集
ITサービス事業の中核をなす西東京データセンターの真価に迫る
キヤノンITソリューションズは、ITシステムの企画・設計・構築から運用・保守に至るシステムライフサイクルをワンストップでサポートするITサービス事業の中核として西東京データセンターを運営しています。高性能なファシリティと厳重なセキュリティ、世界基準の運営品質で、お客さまに次世代のITインフラを提供します。
西東京データセンターの3つの特長「立地」「ファシリティ」「セキュリティ」
キヤノンITソリューションズ株式会社
ITサービス事業部
ITサービス技術本部
DC運営部 部長
嶋田 信夫
Nobuo Shimada
新宿駅から約15キロ、公共交通機関を使って1時間以内で駆け付けられる武蔵野の一角に西東京データセンターがあります。キヤノンITソリューションズが提供するITサービスの中核に位置づけられる都市近郊型データセンターとして、高性能なファシリティと厳重なセキュリティ設備を備え、お客さまの多様なニーズにお応えするサービスを提供しています。
稼働を開始したのは2012年。それから7年間を経て、西東京データセンターは現在どのような状況にあるのでしょうか。ITサービス事業部 ITサービス技術本部 DC運営部 部長の嶋田信夫は次のように話します。
「急速に変化していくビジネス環境への柔軟な対応、コンプライアンス、事業継続などの観点から企業の情報資産管理の重要性はますます高まっており、業界全体としてデータセンター需要は右肩上がりで伸びています。そうした中で当センターは、金融機関や製造、流通業をはじめ、BCP(業務継続計画)に高い課題意識を持つお客さまにご利用いただいています。特にここ数年はクラウド事業者の利用も急増しています」
具体的に西東京データセンターのどんな点が高い評価を受けているのか、施設の特長を3つの切り口から俯瞰してみましょう。
まずは「立地」です。先に述べたように西東京データセンターは都心から1時間圏内というアクセスの良さを誇っていますが、単に近いだけではありません。西東京データセンターが位置する武蔵野台地は地盤が極めて強固で、東京都の地震に関する地域危険度調査で最も危険度が低い地域にランクされています。また、都心から大きな河川越えもないため、広域災害の発生時にも駆け付けやすいのです。
次に「ファシリティ」です。西東京データセンターは国内最高水準の「ティア4」*1に対応しています。優れた免震設備を備えているほか、停電対策としても異なる2カ所の変電所から電力供給を受けています。UPS(無停電電源装置)や自家発電設備についてもすべて障害に備えて予備機を保有しています。
そして「セキュリティ」です。西東京データセンターは金融情報システムセンター(FISC)の安全対策基準に準拠し、7段階に及ぶ厳重なセキュリティのチェックポイントを設け、お客さまの大切な情報資産をお守りしています。ICカードと静脈認証による本人確認、3Dボディースキャナー、X線持物検査装置による持ち込み確認、ローターゲートによる共連れ防止、24時間365日の有人監視など、万全の体制を整えています。
*1 建物の堅牢性、設備のスペックと冗長性、厳重なセキュリティレベルを表す日本データセンター協会のファシリティ基準
データセンターの価値を決めるのが運営品質
どんなに高度で堅牢な施設であっても、それだけではお客さまのニーズに応えるサービスを提供することはできません。「データセンターサービスの優劣は運営品質によって決まります。加えてそれは、国際的な基準によって品質の維持活動が認められたものでなくてはなりません」と嶋田は強調します。
そこで西東京データセンターでは、国際標準化機構(ISO)が定める「ISO/IEC 20000」ならびに「ISO 22301」の認証取得・維持に努めています。ISO/IEC 20000は、ITサービスマネジメントシステムに関する国際規格で、データセンターが提供するITサービスの内容やリスクを明確にし、サービスの継続的な管理、高い効率性、継続的改善を実現するための枠組みを示しています。一方のISO 22301は、事業継続マネジメントシステムに関する国際規格です。地震・洪水・台風などの自然災害をはじめ、システムトラブル・感染症の流行・停電・火災といった事業継続に対する潜在的な脅威に備えて、効率的かつ効果的な対策を行うための包括的な枠組みを示しています。
高品質なデータセンターの証しである
グローバル基準「M&O認証」を
国内で2社目に取得。
そして嶋田が「データセンターにとって最も重要な第三者認証」と語るのが、データセンターのファシリティ基準「Tier」*2を策定した米国の民間団体「Uptime Institute」が定めるデータセンターのグローバル基準「M&O認証」です。その評価の有効性が認められ、欧米を中心に広く用いられている民間基準です。「M&OとはManagement & Operationsの略。M&O認証の取得にはマネジメントシステムを整えるだけなく、データセンター運営上のリスクを可能な限り低減するための確実なオペレーションの実施が求められます」と嶋田は説明します。
具体的には「スタッフと組織体制」「メンテナンス」「訓練・教育」「計画とマネジメント」「設計値・運用値の管理」の5つの観点からデータセンター運営の取り組み状況が現場視察で審査されます。西東京データセンターはこの厳しい基準をクリアし、2017年11月に国内で2社目にM&Oの認証を取得しました。
*2 米国の民間団体Uptime Instituteが作成したデータセンターの信頼性を表す品質基準
実際に停電状態を起こす「総合連動試験」を毎年実施
西東京データセンターはサービスの安定稼働を支える運営品質の向上を目指し、200を超える障害シナリオを設定し、毎週のように訓練を実施しています。そして、その集大成として年に1度行っているのが「総合連動試験」です。「停電を想定して非常用発電機からの給電の切り替えを行い、設備の総合的な正常稼働と迅速なオペレーションを検証するもの」と嶋田は語り、次のような試験の流れを説明します。
- 1.電力会社からの給電を手動で停止し、停電状態をつくる
- 2.サーバルームへの給電が瞬時にUPSに切り替わる
- 3.4台の非常用発電機が起動。2分程度で周波数同期が完了する
- 4.UPSから非常用発電機に給電を切り替える
- 5.一定時間正常に給電されていることを確認
- 6.電力会社からの給電への切り戻しを行う
- 7.すべての設備の正常性を確認して試験を終了する
この一連の手順がスムーズに連動するかどうか、実際のデータセンター設備を使って訓練とテストを実施するのです。「サービスに与える影響が最も少ない休日を選んで実施するとはいえ、サーバルームではお客さまの大切なITシステムが稼働しています。万が一にもご迷惑をお掛けすることがあってはならず、私たちが最も緊張する訓練です」と嶋田は語ります。そして、「机上でどんなにシミュレーションを徹底しても、いざというとき現場は本当に正しく行動できるのか。その点をしっかり確認し、問題点があれば解消しなくてはなりません。特に外資系企業との契約条件には、こうした連動試験を毎年行うことが盛り込まれていることが多く、試験の実施は必須です」と強調します。
2018年9月6日の未明に北海道厚真町で震度7を観測した北海道胆振東部地震では道内全域が停電、いわゆるブラックアウトに陥り、ほぼ全面的に復旧するまでに丸2日間の時間を要しました。こうした大規模障害が現実に起こり得るだけに、平時にできることをやっておく必要があるのです。
また、データセンター内の設備もあたかも生き物のように新陳代謝を繰り返しながら変化していきます。「例えば電力の高負荷化に対応するため、2017年に非常用発電機を1基増設し、現在の4基構成となりました。空調設備も大きく増強されています。当然のことながら、これらは稼働前にはテストできていなかったもので、既存設備と同期して正常に動作するか確認しておかないと非常時に対処することができません」と嶋田は語ります。
2020年夏に稼働する新棟からさらなる高付加価値サービスを展開
キヤノンITソリューションズ株式会社
ITサービス事業部
ITサービス営業本部
ITサービス事業企画部 部長
郡田 江一郎
Koichiro Gunda
西東京データセンターが提供するのは、ハウジングやホスティング、ネットワークサービスなどの基本サービスだけではありません。
キヤノンITソリューションズは、ITシステムの企画・設計・構築から運用・保守までのシステムライフサイクルをワンストップで提供しています。ITサービス事業部 ITサービス営業本部 ITサービス事業企画部 部長の郡田江一郎は、「西東京データセンターはこの一連のITサービスの基盤となるもので、SIとフルアウトソーシングを組み合わせた高付加価値を実現します」と語ります。
例えばキヤノンITソリューションズ自身が提供している「SOLTAGE(ソルテージ)」やAWS(Amazon Web Services)、Microsoft Azureなどのクラウドサービスと西東京データセンターをシームレスに連携させてマルチクラウド/ハイブリッドクラウド環境を構築する「クラウドインテグレーションサービス」、システム運用に関わる作業を一手に引き受ける「システム運用サービス」、お客さまのシステムを24時間365日監視して障害発生時に1次対応を実施する「MSPサービス」などは、そうした中の代表的なサービスです。
ターゲットは大手企業のみではありません。「西東京データセンターではお客さまのシステム規模に応じて、最小1/4ラックからハウジングを利用することが可能です。中堅・中小のお客さまの業務課題の解決にも貢献します」と郡田は訴求します。
そして2020年夏には、現在建設中の西東京データセンター新棟もいよいよ稼働を開始します。IoTやAIなどの技術革新を背景とした、高密度化・高負荷化の動向に対応するもので、受電容量を15MVAから25MVAに増強するほか、2880ラック収容可能なキャパシティーを用意します。
「キヤノングループが有する顔認証技術や画像処理技術、手書き文字認識技術、言語処理技術にAIの技術を組み合わせることで、採点結果の自動集計、顔認証サービス、収穫量予測といったサービスをすでに提供しています。これに加えて、金融・製造・流通のみならず農業・教育といった分野でも新たなサービスを開発していきます。また、各種サービスやさまざまなデバイスからデータセンターに集まる膨大なデータを蓄積、分析、予測、活用することで、新たなサービスや顧客価値の創造を目指します」と郡田は、新棟を拠点に展開していく新たなITサービスの構想を示します。
そのほか充実したSEサービスを提供する沖縄データセンターをバックアップサイトとして連携させたBCP/DR環境の構築でも西東京データセンターは注目されており、拡張性と信頼性に優れたビジネス基盤を必要とするお客さまの多様な課題にお応えしながら、ビジネスを強力に支援していきます。
※ 記事中のデータ、人物の所属・役職などは、記事掲載当時のものです。