貴金属取引リスク管理システムのSIから運用までフルアウトソース

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  • 三菱商事RtMジャパン株式会社 様

豊富なシステム運用のノウハウを活かし運用管理業務を改善

金属資源全般を総合的に取り扱いグローバルにトレーディングを展開する三菱商事RtMジャパン株式会社は、取引リスク管理システムの中核を担うアプリケーションのバージョンアップおよび機器リプレースに合わせ、運用体制の抜本的な改善を目指しました。そこで採用されたのが、アプリケーション開発からハイブリッドクラウド基盤、ヘルプデスクまで包括したキヤノンITソリューションズのフルアウトソーシングです。

取引リスク管理システムの運用体制を全面的に刷新

福田 詩朗 氏 津村 豊和 氏

(写真左)
三菱商事RtMジャパン株式会社
リスク管理・オペレーション業務室
受渡管理Bチーム チームリーダー
福田 詩朗 氏

(写真右)
三菱商事RtMジャパン株式会社
情報システム部 課長
津村 豊和 氏

金、銀、プラチナなどの貴金属といえば宝飾品を思い浮かべるかもしれませんが、実際にはその用途は極めて広い範囲にわたります。さまざまなハイテク製品のほか自動車や太陽光パネルなど、私たちの身近な製品で欠かすことのできない部材となっています。

三菱商事RtMジャパン株式会社は、そんな金属資源全般を総合的に取り扱う金属商社です。同社リスク管理・オペレーション業務室 受渡管理Bチームのチームリーダー、福田詩朗氏は、「東京のほかシンガポール、ニューヨーク、ロンドン、上海にも拠点を構え、24時間体制で貴金属の安定供給を担っています」と説明します。

このビジネスを支えているのが「PRIME」と呼ぶ貴金属取引リスク管理システムです。英Brady社の「Trinity」というパッケージをコアとするもので、貴金属の取引成立から決済完了までのステータスの管理、ならびに時価評価に基づく損益データの作成を担っています。また、他のITサービス会社が独自開発した帳票機能により、日本語の請求書や確認書の発行を行っています。

しかし、PRIMEシステムには運用上で大きな課題がありました。三菱商事RtMジャパン 情報システム部 課長、津村豊和氏は、「Brady社には日本法人がなく、コミュニケーションが円滑に取れないことから、インシデント対応などの品質面で問題が生じていました。また、バージョンアップにも苦労していました」と明かします。

Trinityのバージョンアップの必要性があり、サーバーの保守切れも迫っていたことから、2017年3月、三菱商事RtMジャパンはシステム基盤を見直し、合わせてPRIMEシステムの運用を全面的に刷新することを決定しました。

フルアウトソーシングで課題解決をトータルに支援

三菱商事RtMジャパンがPRIMEシステムの新たな基盤に想定したのはクラウドです。「これは三菱商事グループ全社が推進しているクラウド戦略の流れに沿うものです」と津村氏は話します。

そして、本プロジェクトのパートナーとして候補に挙がったベンダー数社の中からキヤノンITソリューションズを選定。西東京データセンター内で提供するクラウドサービスSOLTAGE(ソルテージ)を利用することにより、サーバーの特性に合わせてパブリッククラウドとプライベートクラウドのハイブリッド環境を採用しました。

三菱商事グループ内ではクラウドを利用する上で、いくつかの推奨プロバイダーが指定されているのですが、キヤノンITソリューションズはこのリストには入っていませんでした。したがってSOLTAGEを選定するには、セキュリティなどの三菱商事グループ要件(ミニマムルール)を満たしているかどうかの事前検証が必要となります。

このような面倒な手続きを経なければならないにもかかわらず、なぜ三菱商事RtMジャパンはあえてこの決定に至ったのでしょうか。「ハイブリッドクラウド基盤の提供だけでなく、Trinityの円滑なバージョンアップや帳票機能のパフォーマンス向上、ヘルプデスクを含めた運用品質向上まで、私たちの課題解決をトータルで確約してくれたフルアウトソーシングが、選定の決め手となりました」と津村氏。また福田氏も、「ロンドンに『ブリッジSE』を置いてBrady社とのやりとりの一元的な窓口になってくれるという提案は、とても心強く感じました」と話します。

新システム基盤の概要

新システム基盤の概要

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成果はインシデント件数で証明された

PRIMEシステムの新たな運用体制は2018年8月からスタートし、安定した稼働を続けています。「懸念していたTrinityのバージョンアップも問題なくやり遂げ、インシデント対応や保守にも組織でしっかり対応してくれています。おかげでユーザー部門も戸惑うことなく新しい運用体制に移行することができました」と福田氏は、キヤノンITソリューションズの取り組みを評価します。

そして、「最も分かりやすい成果は、ヘルプデスクへの問い合わせ件数が如実に減ったことです」と津村氏。バージョンアップによる性能向上、キヤノンITソリューションズによる丁寧な導入サポートや稼働後の的確な保守サポートに加え、キーユーザー制度の導入など三菱商事RtMジャパン社内のサービス体制を改めたことも大きく奏功しています。

PRIMEシステムの利用上で問題が発生した際に、以前はユーザー部門が保守担当に直接問い合わせて解決していました。いつ、どんなインシデントがあり、どのように解決されたのか、すべてがクローズドな個別対応で行われるため、他のユーザーにその状況はまったく共有されませんでした。そうしたことから同じ問い合わせを、何人ものユーザーが別々に行ってしまうことがあり、これに対して現在はフロント、ミッド、バックのチーム単位に「キーユーザー」を任命し、必ずその人を介して問い合わせを行う形に変更したのです。

「これもキヤノンITソリューションズから提案を受けたもので、インシデントの対応状況が可視化されるとともに、そこから得られたナレッジがキーユーザーからチームへ、そして全ユーザーへと引き継がれ共有されるようになりました。結果として、一度解決されたインシデントに関するよく似た内容の問い合わせは、ヘルプデスクに回すことなくチーム内で処理できるようになりました。こうしたナレッジマネジメントやITサービスマネジメントのベストプラクティスが導入・実践されたことも、今回の移行プロジェクトにおける大きな付加価値となっています」と津村氏は強調します。

三菱商事RtMジャパンは、本プロジェクトで取り組んだ運用改善の事例を、他システムでも展開・応用できる可能性があり、事例を共有しつつ改善を図っていきたいと考えています。

三菱商事RtMジャパン株式会社

設立

1947年1月25日

代表者

代表取締役社長 榎本 好一

従業員数

282人(2018年4月1日現在)

住所

東京都千代田区丸の内2-7-2 JPタワー27階

事業内容

金属資源トレーディング事業(石炭・鉄鉱石、アルミ・銅・貴金属、ニッケル・クロム・レアメタルなどの原料・素材など)

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※ 記事中のデータ、人物の所属・役職などは、記事掲載当時のものです。