教育DX革命を成功に導く文教ソリューション最前線

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学校現場の伴走者として教育機関とともに課題解決を目指す

キヤノンマーケティングジャパングループは1990年代から文教ソリューションを手掛けてきました。そのノウハウを体系化したのが、「in Campus」シリーズです。2021年5月にはクラウド版の「in Campus Cloud 版」をリリースしました。標準機能とオプションを組み合わせてサービスを構成する「パズル型」の学生支援サービス。クラウドなので初期費用を抑えながら導入することができます。

1990年代から文教分野に注力 システム構築でノウハウを蓄積

蓮尾 慎一郎

キヤノンITソリューションズ株式会社
文教ソリューション事業部
文教ソリューション営業本部 本部長
蓮尾 慎一郎
Shinichiro Hasuo

教育現場のデジタル化が加速しています。1つのきっかけはコロナ禍でしょう。大学などさまざまな教育機関がオンライン授業に取り組み、教職員や学生・生徒は半ば強制的に、従来以上のデジタル活用を求められるようになりました。

政府もデジタル化への動きを後押ししています。2020年7月に閣議決定された「世界最先端デジタル国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画」は教育についても大きなスペースを割いて、「ICTを活用した教育サービスの充実」「学習データの継続的な活用」といったテーマに言及しています。

具体的な施策の一例が、文部科学省が打ち出した「デジタルを活用した大学・高専教育高度化プラン」(Plus-DX*)です。高等教育においてデジタルとフィジカルを組み合わせた新しい教育手法の具体化と普及を目指した取り組みで、大学・短大・高専などを対象に思い切った支援を実行しようとしています。また、同省はデジタル活用に必要な環境整備の支援などの施策も提示しています。

「以前から、大学などではe-ラーニングなどの施策は行われていましたが、スマートフォンの普及により、デジタル化のレベルが変わってきたように思います。個々の学生が自分のスマートフォンを使って、授業スケジュールや履修状況などを確認できるようになりました。コロナ禍は、このようなデジタル化のスピードをさらに加速しています」と語るのは、文教ソリューション営業本部 本部長の蓮尾慎一郎です。

キヤノンマーケティングジャパングループは1990年代から、文教ソリューションに取り組んできました。大学などの高等教育機関を主な対象に、ニーズに対応する独自のシステムを構築。文教分野でのノウハウを積み重ねました。

「これまで教育系、研究系のシステムを幅広く手掛けてきました。特定の大学をはじめ教育機関に向けてシステムを構築し、それをブラッシュアップして標準化し横展開する。それが、私たちの事業スタイルです。以前はPC教室の管理システムやプリンターの管理システムなどのニーズが多かったのですが、最近は学生向けのポータルやLMS(学習管理システム:Learning Management System)への関心が高まっています」と蓮尾。こうした経験の中から、「in Campus」シリーズが生まれました。

* Plus-DX:文部科学省が推進するDX施策。「a Plan for universities/colleges aiming for a smart-campus through Digital Transformation in the current/post COVID-19 crisis」の略

2014年にリリースされた in Campusシリーズの強み

下村 健

キヤノンITソリューションズ株式会社
文教ソリューション事業部
文教ソリューション開発本部 本部長
下村 健
Takeshi Shimomura

in Campusシリーズは2014年にリリースされました。その前史ともいえるのが明治大学から受託した「Oh-o!Meijiシステム」の開発です。Oh-o!Meijiシステムは約3万4000人の学生と約3000人の教職員をつなぐシステムです。学生への情報提供のためのポータル機能に加え、授業資料の配布やレポート提出などのLMS機能も充実。また、教員名や曜日・時限などによる授業検索などの機能などもあります。もちろん、スマートフォンからも活用することができます。

「明治大学からの委託を受け、2年ほどの開発期間を経てOh-o!Meijiシステムは完成しました。サービスの開始は2013年4月です。Oh-o!Meijiシステムはお客さまからも高く評価され、これをベースに横展開しようということで、in Campusシリーズの開発がスタートしたという経緯です」(蓮尾)

in Campusシリーズの中核はポータルとLMSですが、ほかにもさまざまな機能を備えています。文教ソリューション開発本部 本部長の下村健は次のように語ります。

「ポータルのみ、LMSのみを提供するベンダーは多いのですが、in Campusシリーズはその両方をカバー。それだけでなく、デバイス管理など教育に求められる多様な機能を用意しています。こうして、トータルなソリューションを提供できるのが私たちの強みです。また、個別の要望に対しては、カスタマイズ開発という形で対応しています」

in Campusシリーズの主要な機能について紹介しましょう。

  • 「in Campus ポータル」 …… 学校の中でやりとりされるあらゆる情報を統合管理し、教職員や学生が情報を受発信、共有するためのツール。裏側では他のさまざまなシステムと連携し、各ユーザーが必要な情報に素早くアクセスできる情報環境を提供します。カレンダーやアンケート、RSSリーダー、クラウド連携などの機能も備えています。
  • 「in Campus LMS」 …… 授業用資料の配布・閲覧、学生のレポート提出などの機能により、デジタルな授業環境を実現します。このほか、時間割と出講表、お知らせ、テスト、ディスカッション、出欠、課題、アンケートなどの機能もあります。学務システムとの自動連携により、コースデータや履修データをLMSに取り込むことができ、管理者の業務負荷軽減に寄与します。
  • 「in Campus コミュニティ」 …… 教職員や学生などの多様なコミュニケーションを支えるツール。サークルやゼミ、委員会、ボランティア活動などのコミュニティで活用することができます。in Campus LMSと同等の機能を備え、学内の情報の伝達や共有などをサポートします。
  • 「in Campus ポートフォリオ」 …… in Campus内での活動を記録しアーカイブすることができます。学習プロセスはもちろん、コミュニティ活動の記録などを残すことで、振り返りや気付きの機会を提供します。
  • ‌「in Campus Device」 …… 学内のMac/Windowsベースの端末の運用をサポートする統合管理システム。マルチOS環境の多数のクライアント端末に対するバージョンアップやセキュリティパッチ適用、脆弱性対策など、管理者の負荷は重くなる一方ですが、こうした負荷の軽減に貢献します。また、ハイパーバイザー「vThrii Seamless Provisioning」との連携により、Mac/Windows/Linux端末の統合管理が可能になります。

2021年、Cloud版が登場 導入のハードルが下がる

in Campusシリーズは2014年の販売開始以来、多くの大学に導入されています。ポータルとLMSはそれぞれ14校ほど、デバイス管理は約50校で活用されています。導入実績の中には東京大学や北海道大学、明治大学といった大規模大学が少なくありません。

カスタマイズへの柔軟な対応も、in Campusシリーズの特長の1つです。特に、2020年にバージョンアップされたin CampusシリーズV2により、この特長はさらに強化されました。

「V2ではマイクロサービスアーキテクチャを採用し、クラウドと親和性の高いアプリケーションとして刷新しました」と下村。このV2の延長線上に開発されたのが、「in Campus Cloud版」です。このクラウドサービスは2021年5月にリリースしました。

in Campus Cloud版の開発の背景について、下村はこう説明します。

「これまでは、比較的大規模な大学向けにソリューションを提供してきました。ただ、全国にはさまざまな教育機関があります。もっと幅広く中小規模の大学、その他の教育機関の役に立ちたい。そんな思いから、in Campus Cloud版を開発しました。私たちの事業部門が掲げる『日本の教育をITで支える』というミッションに即した取り組みです」

クラウドの特性として、導入期間は短縮され導入費用も抑えることができ、導入のハードルは大きく下がります。また、クラウドのメリットは導入時だけではありません。運用の中でリソースを柔軟に変更できるのも、クラウドならではの強みと下村は指摘します。

「大学では、新入生を迎える4月にシステム利用がピークを迎えます。オンプレミスの場合、そのピークを見越したサーバーなどを用意しなければなりません。しかし、夏休み期間中には利用が大幅に少なくなるので、サーバーはほとんど稼働しないことになります。クラウドなら4月にはリソースを増強し、ピークを過ぎたらリソースを段階的に減らすといった使い方ができますので、不稼働のIT資産を持つ必要がなくなります」

サブスクリプション型で提供されるin Campus Cloud版のコンセプトはパズル型の学生支援サービス。カフェテリア方式のサービスといってもいいでしょう。

「標準メニューといくつかのオプションを組み合わせることで、ほぼ要件を満たしたサービスを実現することができます。オプションは積極的に増やしていく方針なので、将来新しいオプションを追加してサービスを拡張することもできます」(蓮尾)

例えば、A大学のために実施したカスタマイズがあっても、汎用性が高いものは標準化され、in Campus Cloud版の新オプションとして追加されます。それは、in Campusシリーズがもともと採用してきたアプローチです。

「in Campusシリーズを提供する場合、これまではカスタマイズに半年、あるいは1年以上かかるケースもありました。Cloud版を活用すれば、一定の準備期間は必要ですが、最短1カ月程度でサービスを提供できるようになります」と蓮尾は話します。

in Campusシリーズの概要(図1)

in Campusシリーズの概要(図1)

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in Campus Cloudシリーズの特長(図2)

in Campus Cloudシリーズの特長(図2)

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パーソナライズ教育に向けた ビッグデータの可能性

in Campusシリーズおよびin Campus Cloud版により、教育の質向上を下支えしたい──。それがキヤノンITソリューションズの思いです。

「in Campusシリーズを活用することで、例えば、アクティブラーニングの活性化を図っている大学もあります。こうした直接的な効果も考えられますし、間接的な効果もあるでしょう。デジタルツールにより教職員の業務負荷を軽減できれば、研究活動や学生に向き合う時間をより多く確保することができます」と蓮尾は語ります。

今後はそれぞれの教育機関において、教育ビッグデータの活用も視野に入ってくるはずです。LMSなどを通じて蓄積されたデータを活用すれば、個々の学生の成長をより確かに支えることができます。パーソナライズされた学びの提案や就活サポートなどもできるでしょう。in Campusシリーズ/in Campus Cloud版に蓄積されたビッグデータには大きな可能性があります。

また、Cloud版の場合、IT部門の負荷を大幅に減らすことができます。教育機関のIT化が進むにつれて、サーバーやストレージ、アプリケーションなどを管理するIT部門の業務負荷は高まっています。研究・教育活動への影響が大きいだけに、運用管理には細心の注意が必要。トラブルへの迅速な対処も容易なことではありません。

in Campus Cloud版において、こうした業務を担うのがキヤノンITソリューションズです。私たちは文教分野のみならず、製造や金融など幅広い産業分野のシステム開発・運用で培ったノウハウを結集してクラウドサービスの安定的な稼働を支えます。

「当社はこれまで20年以上にわたって、大学をはじめとする教育機関のITをサポートしてきました。これまではお客さまの要求に応じたシステム(ハードウェアとソフトウェア)を提供するというITベンダーの役割を担ってきましたが、これからは、単なるITベンダーの役割から脱却し、教育課題にともに向き合い、教育機関の伴走者としてお客さまと一緒に課題解決に取り組むパートナーを目指します」と下村。in Campusシリーズ、in Campus Cloud版の一層の拡充を通じて、キヤノンITソリューションズは教育機関の真のパートナーとしての道を歩み続けたいと考えています。

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※ 記事中のデータ、人物の所属・役職などは、記事掲載当時のものです。