学内ポータルの機能を強化し教育現場におけるICT活用を加速

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  • 国立大学法人北海道大学 様

コロナ禍で急速に高まったシステム利用需要にも対応

北海道大学は、学内教育情報システムのポータルサイト「ELMSポータル」のシステム更新を2020年3月に実施しました。これまでもキヤノンITソリューションズ(以下、キヤノンITS)の「in Campus」を利用して構築していましたが、今回の更新では新版のin Campus V2を採用することで性能や使い勝手などの課題解決を実現。さらに更新と同時期に来襲したコロナ禍への対応でも力を発揮し、学内の情報システムを支えています。

より高度な機能とパフォーマンス向上が必要に

重田 勝介 氏

国立大学法人 北海道大学
博士(人間科学)
北海道大学情報基盤センター准教授
高等教育推進機構オープンエデュケーションセンター
副センター長
重田 勝介(しげた・かつすけ)氏

北海道大学では、学生や教職員が利用する情報インフラとして全学の教育情報システム(LMS)を構築し、ELMS(エルムス)の名称で運用しています。その入り口に当たるのが「ELMSポータル」で、学生も教職員もこのELMSポータルを通って情報にアクセスする表玄関のような位置づけです。北海道大学では2026年の創基150年に向けて、ICTを利用した教育の大規模導入と学生が快適に学べる環境の整備・充実を掲げており、ELMSはその核になるシステムです。入り口に当たるELMSポータルも5年ごとに刷新することで、学生や教職員のICT活用を牽引しています。

2015年には、既存のELMSポータルの機能を踏襲する形で、キヤノンITSの教育支援情報プラットフォーム「in Campus」をポータルに導入しました。従来のポータルサイトの使い勝手をできるだけ変えることなく、標準的なシステムの多様な機能を活用できる柔軟性を評価してのことです。それから5年、2020年にELMSポータルの更新のタイミングが到来しました。

北海道大学情報基盤センター准教授の重田勝介氏は、「ELMSには、メールやカレンダー機能を提供するGoogle Workspace、学習支援のMoodle、ストリーミングサーバーのMediasite、端末室予約や図書館サービスとの連携などの複数の機能があり、学生と教職員はELMSポータルを経由してこれらのシステムを利用します。ELMSポータルにはユーザー管理やグループ管理、お知らせ配信の機能も持たせています。ICTの活用をさらに進める中で、これまでよりも高度な機能を持つポータルサイトが必要になりました。更新では、性能の向上、使い勝手の向上、機能の追加が求められました」と語ります。

以前のELMSポータルにはいくつかの課題が浮かび上がっていました。大きな課題の1つがパフォーマンスです。動作速度やレスポンスの向上だけでなく、ユーザーの追加などの設定変更が夜間バッチで行われていたために対応に最低でも1日かかることの改善が求められました。もう1つが、BYOD(自己所有端末の利用)への対応です。教室に無線LAN設備を導入して、PCでのアクセスには対応していましたが、モバイル機器で表示できるレスポンシブデザインに対応していなかったのです。すでに利用者の多くはスマートフォンやタブレットを日常で使っていますから、モバイル機器への対応は急務でした。このほかにも、教務情報システムなど、学内の既存システムとの機能の連携を強化して使い勝手を高めることもELMSポータル更新の目的に挙げられました。

機能や性能に加えて「北大カラー」を表現

北海道大学では、ELMSポータルの2020年の更新に当たり入札を実施しました。応札した中にはキヤノンITSのin Campusの最新版であるV2も含まれます。機能や性能の向上という要件への対応と、システムの柔軟性などを総合的に評価した末、今回の更新はin Campus V2を採用することになりました。

キャパシティは、600人の同時ログインに耐えられることを要件にしました。新しくin Campus V2を導入することで、これまで夜間バッチで1日待たなければならなかったユーザー追加などの設定変更が即時にできるようになりました。また、モバイル端末で表示できるレスポンシブデザインにも対応し、スマートフォンやタブレットからのアクセスがしやすくなりました。「モバイル端末で使い勝手を良くするためには、PC向けとはメニューの出し方が異なります。今回はin Campus V2で、1つのファイルをPC向けとモバイル向けに表示し分けるレスポンシブデザインに対応でき、ELMSポータルの使い勝手を向上させることができました」(重田氏)

さらに、in Campus V2の柔軟性で重田氏が評価する点があります。それがデザインの自由度の高さです。「in Campusそのものにも優れたレイアウトやデザインのテンプレートがあります。しかし、大学の情報インフラの入り口であることを考えると、北海道大学ならではのデザインも求められます。今回は、本学から提案したロゴやキーカラーをうまく組み入れていただいて、北大の学生や教職員にとって見やすく親しみやすさを感じるポータルサイトがつくれました」(重田氏)

このほかにも、ELMSポータルの更新で変化したポイントはいくつもあります。多言語対応を4言語から5言語に拡大したほか、教職員が利用するExcelファイルを自動的に暗号化することでセキュリティを高めることにも対応しました。そして、2020年3月にELMSポータルは新システムに切り替わったのです。

ELMSシステム概要

ELMSシステム概要

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ELMSポータル更新直後のコロナ禍を乗り切る性能

ELMSポータルの更新と時を同じくして、世界は新型コロナウイルスへの対応に追われるようになりました。北海道大学でも、対面授業の補完機能として用いていたELMSの各機能が、オンライン授業へのシフトにより授業や学習の中核へと急速に変化していきました。重田氏は、「ELMSポータルの新版は、600の同時アクセス数を想定していましたが、全学的なオンライン授業が開始した2020年5月には2000を超える同時ログインがありました。キヤノンITSにはリソースの調整を春休みのうちに対応していただき、全面的なオンライン授業への移行でもELMSポータルは耐えて運用できました」と、想定外の状況にも対応できたことを評価します。

「キヤノンITSには良いシステムを導入していただきました。それだけでなく、コロナ対応の時期に、迅速に調整、修正をして事なきを得たように、サポートの手厚さは同社にしかできなかったことだと感じています」(重田氏)

今後、北海道大学では、ELMSポータルやELMSを構成する各システムと教務情報システムとの連携を強化して、情報共有を可能にすることで教育におけるデータ活用を推進していく考えです。そうした中で、多くの大学にin Campusをはじめとする文教システムを導入しているキヤノンITSが持つ知見も活用しながら、北海道大学ならではのICTを活用した教育をつくり上げていく考えです。

国立大学法人北海道大学
国立大学法人北海道大学

開校

1876年8月14日

総長

寳金 清博

教職員数

3929人(2020年10月16日現在)

学生数

学部1万1462人、研究所など65人、
大学院6579人(2020年5月1日現在)

所在地

北海道札幌市北区北8条西5丁目

概要

日本初の学士授与機関として明治9年に設立された札幌農学校を前身とする基幹総合大学

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※ 記事中のデータ、人物の所属・役職などは、記事掲載当時のものです。