西浦 真一

  • 認定スペシャリスト

セキュリティ分野で初の認定スペシャリスト

西浦 真一

キヤノンITソリューションズ株式会社
ITプラットフォーム技術統括本部
サイバーセキュリティ技術開発本部
サイバーセキュリティラボ
セキュリティエバンジェリスト
西浦 真一 ,CISSP
Shinichi Nishiura

西浦真一はセキュリティ分野で初の認定スペシャリストとして2020年12月に認定され、日々セキュリティ関連のセミナーでの講演や社内外の研究ワーキンググループの活動に取り組んでいます。そのベースとなっているのが、当社のサイバーセキュリティラボでの業務です。

「サイバーセキュリティラボはマルウェアの解析や、セキュリティ技術の調査・研究を行う組織で、サイバーセキュリティに関するレポートの発行や、セミナーなどでの情報発信をリードしています」と西浦は話します。

サイバーセキュリティラボでは、委託されたマルウェアの解析を行うとともに、独自の調査や解析も実施し、半期ごとに「サイバーセキュリティレポート」を発行して全体の傾向を伝え、毎月発行する「マルウェアレポート」では日本国内のマルウェア動向や解析レポートを掲載しています。

その活動の特徴は日本国内に重点を置いて解析や調査を行っていることです。セキュリティベンダーの多くは海外企業で、当然、発行するレポートもグローバルな視点がほとんどで日本はその一部として位置づけられています。そのために「自分ごと化」して受け止められていないという側面もあります。

例えば、虚偽のサイトに誘導するフィッシングメールでも、海外ではマイクロソフトやFacebookなどの偽サイトに誘導するものが多く、日本国内ではECサイトやクレジットカードブランドを装ったものが多いというデータも公表されています。西浦は「日本だけの傾向もあり、それをお伝えするのも私たちの役割です」と語ります。

セキュリティを広めるために自ら壇上で講演を

西浦が認定スペシャリストになったのは、新聞やWebメディアへからの取材対応やセミナーでの講演など、社外での活動実績が多かったことが背景にありますが、2006年に入社したときは、セキュリティ技術者として高度な技術を習得しようと研鑽に励む毎日を送っていました。

それが一変したきっかけは2010年にセキュリティ製品の技術リーダーになったことでした。「拡販策を検討していて気づいたのは、誰もがセキュリティ製品が欲しくて買ってくれているわけではないということでした。なぜ必要なのかを納得してもらうことから始めなければと考えたのです」(西浦)

そこで西浦は自ら壇上に立ち、セキュリティの重要性を説く活動を始めました。そのときに心掛けたのは技術オリエンテッドな“職人的イメージ”を払拭し、かみ砕いて分かりやすく伝えることでした。西浦の講演回数は年に数回から増え続け、累計で100回を超え、それが功を奏して販売実績も伸びていきました。

こうした活動に取り組んでいるうちに、社外のセミナーからも講演の依頼が来るようになり、先輩の誘いでNPO日本ネットワークセキュリティ協会(JNSA)の活動にも参加するようになりました。今では年10回から20回の講演をこなし、JNSAの「セキュリティ理解度チェックワーキンググループ」のリーダー、「インシデント被害調査ワーキンググループ」のサブリーダーを務めています。

このワーキンググループでは2021年8月に「インシデント損害額調査レポート」をまとめ、大きな反響を得ることができました。

企業ごとの状況に合わせたセキュリティが重要に

ちなみに当社のセキュリティ事業の歴史は、1998年に「SonicWall」の国内初の代理店になったことから始まりました。1999年には独自開発したセキュリティソフトウェア「GUARDIANWALL」の販売を開始し、2003年にはエンドポイントセキュリティの「ESET」の国内総代理店になり、ラインアップを拡充してきました。

GUARDIANWALLは19年間国内シェアNo.1を続けており、3600社以上に導入され、ユーザー数は530万ユーザーに上ります。2021年には日経コンピュータの顧客満足度調査とパートナー満足度調査で1位となり、2冠()を達成しました。

2019年にはセキュリティ事業の企画などの統括機能をキヤノンマーケティングジャパンに移管し、グループ全体でソリューションラインアップの強化と事業領域の拡大を進めています。

「最近よく見聞きする話題の一つはランサムウェアです。ニュースでもよく取り上げられるようになっています。従来の端末のロックやファイルの暗号化だけではなく、盗み出した機密情報の公開や取引先への通知など、ランサムウェア攻撃者の手口は、日々凶悪化してきています」と西浦は最近のトレンドを語ります。

サイバー攻撃が高度化する中で、セキュリティ対策だけで被害をゼロにすることは難しくなっています。西浦は「攻撃を受けないための対策に加え、攻撃に遭った場合を想定し被害を最小限に抑える対策の重要性が高まっています。情報資産を棚卸して、守るべきところを明確にした上で、実害を最小限にする対策をとっていくべきでしょう」と指摘します。

* 「日経コンピュータ 2021年9月2日号 顧客満足度調査 2021-2022」セキュリティー対策製品部門、「日経コンピュータ 2021年2月18日号 パートナー満足度調査 2021」セキュリティー・脅威対策製品/サービス部門の2冠

3つの軸から認定スペシャリストの役割を果たす

今後の活動について西浦は大きく3つの軸を上げています。日々変化するセキュリティに対する「知識と技術の習得の継続」、被害を最小化するための啓蒙活動である「情報の発信」、そしてその情報発信力を強化するための「後進の育成」です。

後進の育成のために取り組んでいるのが、OJT的な活動の強化です。その一環として社内のイントラネットに脆弱性の詳細な情報を発信する活動も開始しました。セキュリティへの関心を高め、情報発信の活動を社内やグループに広げていこうという取り組みです。

「キヤノンというとカメラやプリンターのイメージが強いと思いますが、セキュリティに注力していること、セキュリティに関する情報を発信していることをより多くの人に知ってもらいたいですね」と西浦は語ります。

最適なセキュリティ対策を選定するためには、セキュリティの重要性をより広く理解してもらうことが重要です。認定スペシャリストとしての西浦にはその牽引役として大きな期待がかかっています。