「VISION2025」2025年に向けた羅針盤
- 特別企画
お客さまの「想い」を起点に3つの事業モデルで未来を拓く
キヤノンITソリューションズは2025年のありたい姿を示した長期ビジョン「VISION2025」に基づき、さまざまな取り組みを2020年よりスタートしています。新たに策定した事業戦略では、「戦略志向で事業モデルの転換に挑戦する」「お客さまとの信頼関係を深める」「社員と会社の絆を強める」という3つの方向性に基づき、「先進IT技術」「革新的なサービスや商品の開発」「社員やパートナー」への投資を強化しています。
“共想共創カンパニー”をめざし「VISION2025」を策定
ビジネスを取り巻く環境の変化は加速しており、加えて新型コロナウイルスの感染拡大は、多くの企業に変革を迫っています。また、労働力人口の減少やデジタル技術の進展なども環境変化の重要な側面となっており、こうした中で、DXへの関心が急速に高まっています。そんな中、新しいビジネスモデルづくりや技術継承などの課題に向き合い、デジタルを活用して解決をめざす企業は少なくありません。つまり、ITベンダーへの期待はこれまでになく高まっているのです。
激しい変化の時代を迎えて、キヤノンITソリューションズはお客さまからの期待に応えるために自らを変えようとしています。その羅針盤となるのが、ありたい姿と事業モデルを示した長期ビジョン「VISION2025」です。
VISION2025の策定に当たって、私たちはまず「自分たちは何者か」と問いました。長年育んできた個性について議論を重ねて「お客さまに寄り添う心」「先進技術への挑戦魂」「最後までやりきる胆力」という3つのDNAを抽出。その上で、VISION2025では「先進ICTと元気な社員で未来を拓く“共想共創カンパニー”」というありたい姿を打ち出しました。
お客さまの課題や社会の困りごとに「想い」を寄せ、お客さまやパートナーと共に未来を描く。そして、お客さまのビジョンの実現、社会課題解決に向けて「共創」する。そんな共想共創カンパニーをめざします。
「お客さまの想い」への共感をベースに展開する事業モデルは3つ。お客さまのビジョンや経営戦略を起点にビジネスを共に創造する「ビジネス共創モデル」、お客さまのゴールを共に想い描いて最適なシステムを共創する「システムインテグレーションモデル」、業界や業種、業務に共通した課題を継続したICTサービスの提供により解決する「サービス提供モデル」です。3つの事業モデルを相互に連携させながら、それぞれの価値最大化をめざす共想共創カンパニーに近づくためには、私たち自身を変革する必要があります。その柱となる方向性は「戦略志向で事業モデルの転換に挑戦する」「お客さまとの信頼関係を深める」「社員と会社の絆を強める」の3つです。こうした方針を踏まえて、新しいモデルへのリソースシフトなどの具体的な施策に取り組んでいます。
以前から、私たちは業種別やクロスインダストリーのソリューション、ITプラットフォームサービス、それらを支える要素技術の強みを磨いてきました。今後はこれまで培った強みを生かしながら企業のデジタライゼーション、デジタルデータ利活用、UI/UX強化や組込/開発効率向上などの開発革新にも注力して事業モデルの転換を推進します。
そのために、「先進IT技術」「革新的なサービスや商品の開発」「社員やパートナー」への投資を強化します。そこで得た収益を将来に向けた成長分野の投資に振り向ける、このようなサイクルを実現します。
中でも重要なのが人財の獲得・育成に向けた投資です。2025年にはビジネス共創モデルの分野で、2021年比5倍の人財育成を目標として、「共想共創塾」というプログラムを整備しビジネス共創人財の育成を行っています。同様に、サービス提供モデルでは1.5倍の要員をめざし、サービス提供モデルをけん引する人財育成プログラムが2022年度より新たにスタートします。
同時に、ソフトウエア技術や数理技術、言語処理技術、映像解析技術、IoT関連技術、クラウド関連技術、独自のAI開発プラットフォームなどの分野への研究開発にも注力します。また、開発パートナーとの協業、産学官連携、新ソリューションサービスの展開における協業など、エコシステム構築への投資も積極化する考えです。
こうした事業戦略は社会的な価値の実現に資するものでなければなりません。私たちは昨年、VISION2025に基づくサステナビリティ戦略を策定しました。お客さまの課題解決と社会課題の解決を両立するプロジェクトの事例も増えつつあります。
VISION2025の実現に向けて、私たちは着実に前進しています。3つのDNAをさらに磨きながら、お客さまやパートナー、そして元気な社員と共に共想共創カンパニーへの道を歩んでいきたいと考えています。
Canon IT Solutions Forum 2021レビュー
DXを阻む「壁」とそれを乗り越える「必勝シナリオ」とは
(写真左)
株式会社日経BP
総合研究所 フェロー
桔梗原 富夫 氏
Tomio Kikyobara
(写真右)
キヤノンITソリューションズ株式会社
代表取締役社長
金澤 明
Akira Kanazawa
VISION2025では、共想共創アプローチでお客さまのDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進していきます。
キヤノンITソリューションズ代表取締役社長の金澤明と日経BP総合研究所フェローの桔梗原富夫氏が、お客さま企業のDX推進に向けた実践的なアプローチ、今後の展望などを語り合いました。
DXがなかなか進まない日本企業の抱える根本課題
株式会社日経BP
総合研究所 フェロー
桔梗原 富夫
Tomio Kikyobara
桔梗原新型コロナウイルスの感染拡大により、企業を取り巻く環境は大きく変化しました。まず、現状認識について伺います。
金澤コロナ禍は私たちの生活様式を変え、ビジネスにも大きな変革を迫っています。例えば、全国のオフィスに広がったテレワークです。今後は、工場などの現業部門でもテレワークへのシフトが進む可能性もあるでしょう。リモートへの対応が遅れている企業では、DXの前に、デジタル化への投資は避けて通れない課題です。こうした環境変化を受けて、情報セキュリティの重要性もますます高まっています。
桔梗原自宅を含めていろいろな場所で仕事をするようになれば、セキュリティリスクは高まりますからね。ほかにはどのような環境変化に注目していますか。
金澤国内の労働力が減少する中で、各企業は成長を維持するための対応を求められています。サステナブルな循環型経済を求める声も強まっており、環境にやさしいビジネスへの転換は生き残るための必須条件になるはずです。急速な環境変化への対応として、デジタル技術を用いたビジネス改革やプロセス改革に注目が集まっています。
桔梗原日本企業のDXの現状については、どのように見ていますか。
金澤日本企業でDXを推進する目的は、新規事業の創出やビジネスエコシステムの変革というような「攻め」ではなく、既存オペレーションの改善や変革という、どちらかというと「守り」の傾向が強いように思います。現場は日々の多忙な業務に追われていて、「何をしたいのか」「どうすべきか」というところで迷走しているようにも見えます。
桔梗原経済産業省の『DXレポート』でも、日本企業におけるDXの遅れが指摘されています。
金澤ビジョンが不明瞭なまま施策を実行し、経営リソースが分散してDXが停滞するケースが多いと感じています。また、ユーザー企業とIT企業の関係性にも課題があります。従来からの相互依存関係から脱却できないまま、DXにおいては低位の安定構造にあるという見方もできるでしょう。日本企業がDXを本格化するためには、IT企業との新しい関係づくりも重要です。さらに、既存IT資産のあり方を見直す必要もあるでしょう。当社のお客さまからは、「運用保守の負担が大きくDXに十分な投資ができない」という声をよく聞きます。
既存システムを整理しつつDX予算の確保をめざす
キヤノンITソリューションズ株式会社
代表取締役社長
金澤 明
Akira Kanazawa
桔梗原DXを成功させるには、何がポイントになりますか。
金澤先ほど「多忙と迷走」と言いました。IT部門はデジタル武装の主役を担うはずですが、多くの場合、既存システムへの対応に追われていますので、既存システムの整理が必要です。そのためのアプローチとしては、いくつかのパターンがあります。例えば、既存システムを機能分割して一部をクラウド上に構築する、あるいは現状維持のまま塩漬けにするなど、業務プロセスの変更頻度やシステムの重要度に応じて、適切なパターンを見極めなければなりません。既存システムを整理しながら運用費用を下げ、DX予算の確保をめざすべきでしょう。
迷走を防ぐという観点では、経営層による変革の方向性の明示が必須です。変革を現場任せにせず、経営者自ら変革のビジョンやロードマップを示すことが、DXを成功に導くための最大のポイントです。IT企業との関係においては、DXビジョンを共有できるITパートナーの存在は欠かせないと思います。
桔梗原DXの推進に向け、キヤノンITソリューションズとしてはどのような支援を行っていきますか。
金澤当社は以前からお客さまの要件を基に、業務システムをきっちり作り上げてお使いいただくことを主たるビジネスとしてきました。その経験を生かした支援をしていきたいですね。お客さまと共に腰を据えた本質的な変革をめざし、既存システムの整理や基幹となるシステムとの連携など、「SoR(System of Record)がしっかりできるSoE(System of Engagement)集団」として確かな支援をしていきたいと考えています。
3つのキーワードで推進するDXの「必勝シナリオ」
金澤DXを成功に導く「必勝シナリオ」において、私たちは3つのキーワードを重視しています。
まず、「トップの想いの明瞭化」です。トップの想いや覚悟を明瞭にして、改革を進めるメンバーだけでなく、社員やITパートナーと共有することがDX実現の一丁目一番地です。まずは経営のゴールを定め、事業課題を整理してDXビジョンに落としこむ必要があります。通常、各企業の企画部門などが担う役割ですが、当社の知見を基にお手伝いできる場面も多々あると考えています。
例えば、社長やCDO(最高デジタル責任者)の想いを受け止めDX戦略を描くお手伝いをする、あるいは事業創造や拡張に伴う仕組みをアジャイルで構築し、事業検証を短サイクルで実現するなど多様な支援の形があります。
桔梗原コンサルティング段階から参画して、経営者の想いの実現をサポートするということですね。次に、2つ目の要素をお尋ねします。
金澤「多忙の排除」です。特に意識しているのは、既存システムへの対応で手一杯のIT部門です。DXを進めるための人的資源の確保、先々のDX投資予算の確保のためにも既存システムの“始末”は避けられません。始末のしかた、または整理の方法については、先ほどクラウドの活用などいくつかのパターンに言及しました。その中から最適なものを見極める際、メインフレームやクラウドなど幅広い分野で培った豊富な経験が役に立つはずです。
桔梗原『DXレポート』によれば、現状のIT予算の8割が既存システムの維持に使われています。このような状況を変えるためにも、非常に重要な観点ですね。では、3つ目の要素について伺います。
金澤「オープンマインド」です。デジタルの世界では、新しい技術やソリューションがどんどん生まれます。ビジネスも同様で、日々新しいアイデアが登場しています。そんな時代、すべてを自前で進めるというやり方ではスピード感が出にくいので、パートナーとの関係づくりは、DXの精度やスピードの向上に有効です。当社でも、異業種の皆さまと一緒に新しいビジネス領域にチャレンジする機会が増えています。
DX推進をサポートするソリューションとコア技術
桔梗原DXに取り組む顧客企業をサポートしていく上で、キヤノンITソリューションズの重要なソリューションと要素技術について教えてください。
金澤ビジネス部門主導の開発プロセスを高速化する手法として、ノーコード開発やローコード開発が注目されています。DXの推進スピードを求めて、ユーザー企業がシステムの内製化を進める傾向も見られます。内製化においても、ローコード開発は有力な武器であり、当社ではローコード開発をサポートする「WebPerformer」という製品や、アジャイル開発のコンサルティングなどを提供しています。数理技術の活用も重要です。当社は高度な数理技術をベースに、需要予測やロジスティクス最適化などのソリューションを提供しています。最近はAIが注目されますが、AIの判断はブラックボックス化しがちです。数理モデルを活用したデータ分析や判断はホワイトボックスであり、人財育成の観点からも有効だと考えています。
そして、データマネジメント。データ分析の巧拙は、今後の企業競争力を左右するでしょう。ただ、データの抽出や連携、活用管理の基盤が未整備な場合、その上で実行されるデータ分析が経営判断を誤らせる可能性もあります。データマネジメント基盤の重要性はさらに高まるでしょう。
桔梗原DXの課題とその解決アプローチを考える上で、多くの有益な示唆が得られました。本日はありがとうございました。
※ 記事中のデータ、人物の所属・役職などは、記事掲載当時のものです。