ショーケースにカメラを設置するだけで簡単に無人店舗を実現

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  • サンデン・リテールシステム株式会社 様

「コンビニが来る」という新しい買い物体験を提供

自動販売機や冷凍・冷蔵ショーケースなどの有力メーカーとして知られるサンデン・リテールシステムは、新たな買い物価値を提供するサービス事業の拡大を目指して、マイクロマーケットに注力しています。キヤノンITソリューションズの画像処理技術を活用したコンピュータビジョン在庫管理システムをベースにそのプロトタイプを構築。今年からフィールドテストを開始する計画で、正式リリースに向けた確かな歩みを進めています。

マイクロマーケットの市場で十分に勝算はある

茂木 利幸 氏

サンデン・リテールシステム株式会社
制御システム本部 システム企画部 部長
茂木 利幸 氏

精密な温度管理や長時間の鮮度保持技術、未来型の自動販売機で活用されている搬出技術などで卓越したノウハウをもつサンデン・リテールシステムは、ITを最大限に活用したコールドチェーン事業をはじめ、店舗システム事業やロジスティック事業へと積極的な事業展開を図っています。

同社のこれまでのビジネスは、自動販売機や冷凍・冷蔵ショーケースなどの製造販売が主体でした。サンデン・リテールシステム株式会社 制御システム本部 システム企画部 部長の茂木利幸氏は、「単にモノを販売するビジネスではなく、流通・小売業界のお客さまや消費者に新しい買い物体験(コト)を提供するビジネスを立ち上げていきます」と話します。

ターゲットの1つに位置付けているのがマイクロマーケットです。超小型のコンビニをオフィスなどの施設の一角に設置し、無人販売で運営するもので、「コンビニに行くのではなく、『コンビニが来る』という新しい買い物体験を創出していきます」と茂木氏は強調します。実際、マイクロマーケットの市場に対する関心は高まる一方で、近年は大手コンビニチェーンも相次いで参入し、実証実験を進めています。

「私たちには店舗の設計・施工からメンテナンスまでトータルなサービスを提供する店舗システム事業のほか、電子マネーに対応した決済端末についても10年以上にわたり事業を続けてきた実績があります。そこで培ってきた知見と要素技術を組み合わせればマイクロマーケットのソリューション提供は決して不可能ではなく、十分に勝算はあると判断しました」(茂木氏)。同社代表取締役社長の森益哉氏からも「やらないリスクより、やるリスクを取れ」と号令がかかりました。

画像処理技術を活用して無人販売の仕組みを実現

もっとも、事業化に踏み出すまでにはさまざまな試行錯誤もありました。無人販売を基本とするマイクロマーケットでは、来店客がショーケースから取り出した商品をいかに正確かつ迅速に認識するかが最大の課題となります。これを実現する仕組みとして、「最初はRFID(無線自動識別技術)を利用することを検討していました」と茂木氏は振り返ります。

しかし、RFIDで商品を認識するためには、そのタグをいつ、誰が貼るのかが課題となります。結局、バックヤードでの作業が膨大になるため実現には至りませんでした。

次に同社が検討したのはショーケースに重量センサを設置して、取り出された商品を認識するという方法です。ただ、これにもやはり多くの問題が出てきます。「ショーケースの棚に商品を並べる際にはセンサの上にきちんと商品を置く必要があり、そのオペレーションの担当者に大きなストレスを強いることになります。また、棚ごとに置く商品が決められるため、来店客がいったん手に取った商品を別の棚に戻してしまうとシステムがエラーを起こします」と茂木氏は話しており、現実解とはなりませんでした。

そうした模索を続けていた2019年4月のこと。茂木氏が訪れたある展示会で目に留まったのが、キヤノンITソリューションズが出展していた「コンピュータビジョン在庫管理システム」です。

「この画像処理技術を活用すれば、小型でより簡単に無人販売の仕組みを実現できると考えました。さらに大きな期待を寄せたのは、キヤノンITソリューションズ自身が流通分野で豊富なシステム構築実績を有し、業界の課題を熟知していることです。マイクロマーケットの新しいソリューションを一緒に作っていくビジネスパートナーになってもらえることが、ベンダー選定の決め手となりました」(茂木氏)

マイクロマーケット(無人店舗)のデモの模様

マイクロマーケット(無人店舗)のデモの模様。
画像処理技術により棚から出し入れされる商品を瞬時に検知することができる

複数の大手小売業と手を組みフィールドテストを実施

上記のような出会いを経て、現在サンデン・リテールシステムとキヤノンITソリューションズが共同開発を進めているマイクロマーケットシステムのプロトタイプでは、ショーケースの上部に1台のカメラを取り付けるだけで、棚から出し入れされる商品を瞬時に検知することが可能となりました。

「個々の商品の特徴を画像で識別するため、来店客がいったん手にした商品を別の棚に戻した場合でも全く問題はありません。店舗側にオペレーションの負担をかけることなく、お客さまにも自由に買い物を楽しんでいただけます」と茂木氏は、技術面で大きく前進したことを示します。

そしてこの成果を受けて2020年6月以降には、いよいよフィールドテストを開始する計画です。「今年2月に開催された『スーパーマーケット・トレードショー2020』という展示会に本ソリューションを出展したところ、大きな反響を呼びました。その中から実際に引き合いをいただいたいくつかの大手小売業と手を組み、まずはお客さまの事業所内でPoC(概念実証)を行うことになりました」(茂木氏)

また、これまでのプロトタイプではスタンドアロンで運用してきたのですが、フィールドテスト以降はクラウドと接続してシステムを運用することを想定しています。これにより複数のマイクロマーケットを束ねて管理することが可能となるほか、各商品の店頭在庫の状況をリアルタイムに近い形でリモートから把握できるようになります。

あらかじめ各マイクロマーケットに補充する商品を準備した上で配送すればよくなり、従来はトラックで1日2往復していたのが1往復で済むようになるなど、オペレーションの効率化につながります。

さらに将来的にサンデン・リテールシステムでは、このマイクロマーケットシステムを通じてより大きな体験価値を創出していくことを目指しています。

「例えば事業者に向けては、来店客がどんな商品を手に取り、戻したのかといった購買行動を読み解くデータを提供することでマーケティングやマーチャンダイジングに活用していただけます。また、マイクロマーケットの設置先企業の人事システムと連携することで、来店客に対して代金の給与天引きも可能な決済サービスを提供することができます」と茂木氏は、描いているさまざまな構想の一端を示します。

サンデン・リテールシステムとキヤノンITソリューションズは、2020年度内にこのマイクロマーケットシステムを正式リリースすることを目標としており、今後の展開に流通小売業界のみならず多方面から期待が寄せられています。

サンデン・リテールシステム株式会社
サンデン・リテールシステム株式会社

設立

2019年7月29日

代表者

代表取締役社長 森 益哉

従業員数

866人(2018年度)

住所

東京都千代田区外神田1丁目18番13号 秋葉原ダイビル10階

事業内容

店舗用ショーケース、飲料・食品自動販売機、電気通信機および同部品の製造販売、建築工事および管工事の請負、設計および監理、冷凍・冷蔵コンテナ、プレハブなどの物流機器事業

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※ 記事中のデータ、人物の所属・役職などは、記事掲載当時のものです。