「AvantStage」で製造業務を次のステージへ

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食品製造業が直面するサプライチェーンマネジメントの最適化

キヤノンITソリューションズが提供する「AvantStage」は、製造業向けのソリューションとして長年の実績があります。特に、食品製造業向けの機能が充実しており、多くのお客さまからの支持を得ています。人手不足や物流危機など、食品業界を取り巻く環境は厳しさを増しています。課題を乗り越えるために、あらためてITに向き合う時期ではないでしょうか。AvantStageと当社のノウハウが皆さまの業務をサポートいたします。

人手不足と生産性の課題をITで解決するために

森永 明洋

キヤノンITソリューションズ株式会社
SIサービス事業部
製造・公共・流通営業本部
営業第一部 部長
森永 明洋
Akihiro Morinaga

今、さまざまな産業分野で人手不足が深刻化しています。一方で、働き方改革を進める企業も増えています。人が足りないけれど、残業時間は増やせないーー。こうしたジレンマを解決するために、生産性向上への取り組みは待ったなしといえるでしょう。

従業員の高齢化も進んでおり、スキルやノウハウの伝承も大きな課題となっています。ものづくりの現場においては業務が属人的になっていることが多く、熟練社員が退職すると製品の質が大きく低下してしまうことにもなりかねません。

特に課題意識を高めている業界の1つが、食品製造業です。キヤノンITソリューションズSIサービス事業部製造・公共・流通営業本部営業第一部部長の森永明洋はこう話します。

「食品製造業のアイテム数は非常に多く、1商品当たりのバラエティーも豊富です。食品には賞味期限や出荷期限があり、他の商品と比べて複雑な管理が求められます。また、多品種少量生産の傾向が強く、人手に頼る部分が多いという特徴があります。検査工程を例に取っても、目視検査が多いなど、労働集約的な工程が多くを占めています。結果として、生産性がなかなか高まらない。こうした悩みは、食品製造業の多くの企業に共通しているのではないでしょうか」

この課題の背景には、製造プロセス全体を通したIT化が進んでいないという現実があります。生産や購買、製造管理などのシステムが別々に動いており、各プロセスがシームレスにつながっていません。各工程で生成される情報は散在したままで、情報の一元管理が難しいという企業は多いのではないでしょうか。

「情報の散在は業務の効率にもマイナスの影響を与えますが、とりわけ大きな問題になるのがトラブルの発生時です。食品への異物混入などの問題が起きたとき、『どのロットに問題があるのか』『どこに出荷されたのか』といった情報を即座に知りたくても、かなりの時間がかかってしまいます。Excelや紙ベースの帳票などで管理しているケースが多いので、スピード感のある対応が難しくなります」と森永は言います。

食品ロスを防止するために需要予測と生産計画を

一方で、近年は食品ロスに対する認識が高まっています。日本における食品廃棄物は年間2759万トン、本来食べられるにもかかわらず捨てられた食品ロスはその2割以上の約643万トンと政府は推計しています(2016年度)。食品ロスの原因には売れ残り、仕込みすぎ、納品期限切れなどがあり、企業側の取り組みによって改善できるものも少なくありません。

しかし廃棄を防ぐために生産量を削減すると、品切れが発生するリスクが高まります。品切れは機会損失が生じることに加え、消費者を競争相手に奪われてしまう危険もあります。食品ロスと品切れ防止はトレードオフの関係にあり、その中でバランスをとっていくには、需要予測の精度向上と、工場・生産ラインの生産能力を加味した生産計画が欠かせません。また、工場から各地の物流センターや倉庫へ、輸送能力も考慮した在庫補充計画も求められます。

このような状況から食品製造業においても、ITの導入の重要性が再認識されつつあります。こうしたニーズに対応して、キヤノンITソリューションズは食品製造業に対する提案活動を強化しています。

ベストオブブリード型でカスタマイズに柔軟対応

キヤノンITソリューションズは、「AvantStage」を核に、お客さまのニーズに対応するソリューションを進化させてきました。AvantStageはお客さまの業務に合わせて基幹業務のソリューションを提供するコンセプトです。需要予測や需給計画を担う「FOREMAST」、生産スケジューラの「Asprova」、生産計画や原価管理、販売物流などの機能を持つ「mcframe」、統合会計・人事給与の「SuperStream-NX」といった製品です(図1)。

AvantStageの概要

AvantStageの概要(図1)

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「AvantStageの大きな特長は、ベストオブブリード型で提供していること。オールインワンで導入するケースもあれば、お客さまの解決したい課題に応じて一部の製品だけを提供することもあります。各製品が充実した機能を持っていて、比較的低コストで導入することができます」と森永。この分野では海外製のパッケージ製品も多いのですが、AvantStageはすべて国産であり、日本の商習慣に即した機能も豊富にそろえています。

海外パッケージを導入する際には、これに対応するために相当のカスタマイズが必要になるでしょう。AvantStageを導入する場合、カスタマイズを最小限にすることができます。そのためのテンプレートなども用意しています。テンプレートでも対応が難しいときには、カスタマイズが発生しますが、その際にはSIerとしての経験とノウハウが強みになります。

他社ERPなどの既存システムとAvantStageのいくつかの製品を組み合わせて、全体のシステムを構築することもあります。システム間のスムーズな連携を実現するときにも、コンサルティングやSIのノウハウが生かされます。

「複数の会社が合併して成長してきた当社は、製鉄企業の情報システムや研究開発部門の流れもくんでいます。社内向けシステムの設計・開発などに携わってきたこともあり、製造業向けのソリューションが得意。こうした蓄積の上にノウハウを積み重ね、コンサルタントやSEなどの人材を育ててきました」と森永は語ります。

AvantStageを提供する際にも、単にパッケージを販売するということではなく、SIerとしてお客さまのニーズに向き合い、一緒に課題を解決するというスタイルを大事にしてきました。

導入のプロセスごとに厚みのあるエキスパートを擁し、それぞれが連携してシステム構築や定着化を支援する。ともすると運用・定着化のプロセスは見過ごされることもありますが、実際に効果を生み出す上で非常に重要です。

「運用・定着化をサポートする中で、お客さまの新たな課題が浮かび上がってくることもあります。その都度課題に対処しながら、当社のコンサルタントが長期的な視点でシステムの将来像を提案することもできる。長いお付き合いをベースに当社の経験とノウハウを提供し、お客さまの持続的な成長をサポートしていきたいと考えています」(森永)

標準プロセスを構築して多拠点に展開する

近年は、海外の生産拠点にAvantStageを導入する食品メーカーも増えています。キヤノンITソリューションズはタイやベトナム、中国・上海などにグループ会社を置いており、本社と連携しながらプロジェクトを進めています。

「私たちはロールアウトと呼んでいますが、日本の工場で標準化した仕組みを海外工場に展開するケースがあります。これにより、日本側から海外工場の工程管理を把握することができる。国内外の工場を同一の価値観で管理統制する上でも、AvantStageは有効です」

逆に、新たに立ち上げた海外工場で理想に近いシステムを構築し、それを国内工場に展開する企業もあります。こちらはロールイン。システム導入に対する抵抗感のない、または薄いところで「あるべき姿」を実現し、それを標準として日本に持ち込もうというアプローチです。ロールアウトにせよ、ロールインにせよ、自社標準を定めて多拠点に展開し、管理統制を目指すという考え方は同じです。

日本の食品製造業の課題の1つとして、属人化がしばしば指摘されます。工場ごとに工程管理のやり方が違ったり、ベテランのノウハウに依存する工程が多かったり、このような現状が人手不足を増幅している面もあるでしょう。AvantStageを中核に構築したシステムには、その企業の標準化したプロセスやノウハウも含まれます。AvantStageにより、属人化したプロセスを標準化し、1人当たりの生産性を高めることができます。

ここで、AvantStageの製品をみていきましょう。

AvantStageの製品

AvantStageの製品

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mcframeは600社以上の導入実績を持つ、製造業向けの製品です。生産管理や原価管理、販売物流などのエリアをカバーし、受注や生産計画、出荷、在庫、原材料などに関する機能を幅広く提供。賞味期限管理、副産物管理など食品業界向けの標準機能も搭載しています。

Asprovaは全体の生産計画を、各工場に落とし込むための製品です。工場ごとの計画をつくるためには、それぞれの工場の設備負荷などの制約を把握する必要があります。これらを考慮した上で、工場ごとに生産スケジュールを策定。Asprovaは世界中の2500以上のサイトに導入されています。

SuperStream-NXは統合会計と人事・給与をカバーする製品で、国内9000社以上での実績があり、企業のグループ経営管理を支える基盤として有効に活用されています。

会計分野では財務会計・管理会計をはじめ、支払管理や経費精算、債権管理、固定資産管理などを幅広くカバーしています。経営層および経営企画部門にとっては、各部門の状況をKPIに基づいて分析できる経営ダッシュボードにより、高度なマネジメントを支援。ビジネスの現状把握、スピード感のある意思決定のための情報基盤にもなります。AvantStageだけでなく、外部のさまざまなシステムと柔軟に連携することができます。IT部門にとっても生産性向上、負荷低減に役立つソリューションです。

進化を続けるAvantStage、AIやIoT導入のPoCにも活用

AvantStage導入の効果は企業によってさまざまです。「ロットトレースの時間が大幅に短縮できた」「在庫ロスが減って在庫の回転率が向上した」「現場の帳票が4分の1に減った」「検査時間が短くなった」といった声が寄せられています。

今後もAvantStageはさらに進化を続けます。AIやIoTの活用なども検討しており、一部では生産現場でのPoC(Proof of Concept:概念実証)をスタートしています。

「例えば、目視検査の効率化を目指したAI活用などを検討しています。検査工程に画像センサーを設置し、画像認識を用いて良品・不良品の分類を自動化するなど、大きな効率化につながる可能性があります」と語る森永は、今後もお客さまのニーズに合ったサービスを展開していきたいと考えています。

深刻な物流危機もあり、需要予測の精度が問われる

ここからはAvantStageの製品の1つであるFOREMASTについて見ていきましょう。

FOREMASTは当社の強みである独自の高度な数理技術によるソリューションで、需要予測SIコア(FOREMAST/DP)、在庫補充計画SIコア(FOREMAST/RP)、需給調整SIコア(FOREMAST/PB)といった、主な3つのSIコアとコンサルティングやシステム開発などのサービスで構成されています。これらのSIコアをベースに、企業固有の条件やニーズを踏まえたサービスを組み合わせてFOREMASTとして提供。定着化支援に注力している点も、AvantStageの他の製品と同様です(図2)。

FOREMASTとは

FOREMASTとは(図2)

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淺田 克暢

キヤノンITソリューションズ株式会社
SIサービス事業部
数理技術コンサルティング部
コンサルティングプロフェッショナル
淺田 克暢
Katsunobu Asada

近年、FOREMASTへの問い合わせが増えているのは、より精度の高い需要予測や需給計画を求めるニーズが高まっているからでしょう。キヤノンITソリューションズSIサービス事業部数理技術コンサルティング部コンサルティングプロフェッショナルの淺田克暢はこう説明します。

「食品業界では需要予測が非常に重要です。加えて、近年の物流危機を受けて、商品を運びたいときに運べるという状況ではなくなりました。工場の倉庫から物流センターへの輸送負荷も考慮した在庫補充計画、それに基づく生産計画が求められるようになったのです」

物流危機はますます深刻化しています。かつては、トラックの確保は容易だったので、ぎりぎりのタイミングで運ぶという考えが主流でした。それが商品の鮮度を高め、在庫を最適化する方法だったのです。こうしたやり方はもはや通用しません。

そこで、輸送の平準化を図る企業が増えています。例えば、週末の輸送ができない場合には、土日を挟んだ月曜日と金曜日に輸送が集中しがち。そこで、一部を他の曜日にも振り向けることで、トラックを用意しやすくなります。年末年始に向けて以前は12月に入ってから積み荷を増やしていた企業であれば、1カ月前倒しして11月から準備を始めるという具合です。

物流環境の変化は、需給計画や在庫の発注補充計画にも大きな影響を与えます。より高度な管理や計画、より精緻なシステムが求められるようになりました。

需要予測で高い精度を実現、食品に特化したオプションも

それでは実際にFOREMASTを使ってどのように需給計画を立てるのかを解説します。製造業の需給計画・調整業務を立てる上でのFOREMASTのスコープを図3に示しました。

FOREMASTのスコープ(製造業の場合)

FOREMASTのスコープ(製造業の場合)(図3)

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まず、過去の出荷実績と外部から入手した情報(気象データなど)を基に、FOREMAST/DPが自動計算で需要を予測します。ここには「来月は集中的にこの商品を売る」といったビジネスサイドの意思は入っていません。そこで、こうした意思情報と需要予測などをインプットした上で、FOREMAST/PBで販売計画を作成します。これを基に、FOREMAST/RPが「どの商品を、どれだけ生産するか」という生産所要量計画を自動作成します。通常、週次または月次でこうしたサイクルを回します。

生産所要量計画ができると、このデータは別のシステムに受け渡されます。AvantStageでいえば、mcframeやAsprovaです。これらの生産計画や生産スケジュールを担うシステムにより、「どの工場で何をいついくつ生産するのか」といったことや、原材料調達の詳細が決まります。

生産計画はFOREMAST/RPに送られ、日次の在庫移送計画が立てられます。多くの食品メーカーは工場内または近くの倉庫のほかに、各地域にも物流センターのような施設を用意しています。工場倉庫・物流センター間の在庫移送に問題があれば、欠品や過剰在庫につながります。こうした事態が起きないよう、在庫移送を最適化するのがFOREMAST/RPの役割です。

FOREMASTのSIコア構成、その中の主要な3つのオプションについて説明しましょう(図4)。

FOREMASTのコア構成

FOREMASTのコア構成(図4)

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まず、多段階補充オプションです。「工場倉庫→物流センター→顧客」というように、多段階の物流構造がある場合、工場倉庫と物流センターの在庫は連動しなければなりません。例えば、工場倉庫から物流センターに商品を10ケース送れば、工場倉庫側はマイナス10、物流センターではプラス10になります。こうした連動をリアルタイムで行うのが多段階補充オプションです。

次に、出荷期限オプションです。物流センターなどの在庫が翌日期限を迎えるような商品は明後日以降の出荷には対応できません。そのため、倉庫から補充するなり、工場で生産するなりの対応が必要になります。こうした一連の機能を果たすのが出荷期限オプションです。また、出荷期限までに余裕のある在庫が一定以下に減ったときは、アラートを通知する機能も備えています。

「ある食品メーカーは以前、欠品に対処するために多くの負荷がかかっていたそうです。その日になって『出荷期限が間近だった』とか『在庫が足りない』と判明することが多く、そのたびに、他の倉庫に補充依頼をしたりしていました。FOREMAST導入後は出荷期限オプションのアラート機能を使うことで、発生しそうな問題に前もって対応できるようになりました。『イレギュラーの業務が減ったので、現場の負荷を大きく減らせた』との声をいただきました」(淺田)

グループ予測オプションは、商品カテゴリなどでグループを設定して使います。例えば、味違いや容量違いの商品を1つのグループとして予測し、個別商品ごとに按分するものです。

FOREMASTは高い柔軟性を備えているため、お客さまのニーズに応じたカスタマイズが容易にできます。さらに、お客さまが自から開発した予測モデルやKPIを組み込んで使うことも可能です。

「使い勝手を考慮して画面や機能などを工夫しました。また、比較的低価格で導入できるのも、FOREMASTの特長です」と淺田。今後は予測モデルにAIを活用するなどの機能拡張も検討されています。

2018年9月に発表された経済産業省の「DXレポート」が指摘するように、日本企業のITは今、大きな課題に直面しています。長年使い続けた既存システムの見直しなしに、「2025年の崖」を乗り越えることはできないでしょう。キヤノンITソリューションズおよびAvantStageチームはお客さまとともにITの課題に向き合い、お客さまのビジネスの成長に貢献したいと考えています。

※ 記事中のデータ、人物の所属・役職などは、記事掲載当時のものです。