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EDI連載コラム 第4回「流通業界の動向まとめ」
EDI:コラム第4回「流通業界の動向まとめ」
受発注や金融機関への振込など、企業活動に欠かせないEDI。本コラムでは、さまざまなEDIトレンドや各企業が意識すべきポイントを掘り下げてお届けしてまいります。
今回は、2020年10月に開催したWebセミナー「INS終了対策EDIセミナー 流通業界 編」の内容を再構成し、コラム形式でお送りします。セミナーをご覧になられた方も参考になるよう、アンケートでいただきましたご意見やご要望を反映し、追加情報を記載しておりますので、ぜひともご覧ください。
なお、本コラム記載の内容は記事記載当時の情報をまとめております。最新の状況については、各業界の最新情報をご確認いただくか、当社へご相談ください。
IP網移行によるEDIへの影響
2024年のINS終了に際し、現在のアナログ回線やISDN回線はIP網へ移行されます。IP網移行に際し、最大4倍程度の通信遅延が発生する可能性があり、早ければ2023年初頭には遅延が発生するリスクがあります。そのため、多くの業界団体は2022年末までのインターネットEDI移行完了を推奨しています。
流通業界では2007年から流通BMS標準がインターネットEDI対応プロトコルとして導入が進んでおり、その他の業界と比べてもインターネット化が進んでいると言えます。
しかしながら、2019年の調査*によると、流通BMSの導入率はおよそ半分程度と言われており、2022年末までの残り2年間で残り半分の企業の流通BMS対応を進める必要があり、さらなる普及促進が求められます。
*流通BMS導入実態調査結果 2019年 一般社団法人流通システム標準普及推進協議会
https://www.dsri.jp/ryutsu-bms/info/info09.html
流通業界の動向
EDIにおいては、取引先同士で同じ通信プロトコルを選択することが必須です。そのため、事前に取引先や業界の動向を参照しながら、計画的にEDI方式を選定する必要があります。本章では、各業界の動向ならびに、弊社製品に置き換えた場合の移行例をまとめます。
1.流通業界(流通BMS)
流通業界では、一般社団法人流通システム開発センター(GS1 Japan)内に設置された「流通システム標準普及推進協議会」にて2007年に「流通BMS標準」が制定され、普及が進んでいます。
対象の業種は広く、スーパーやGMS、コンビニ、ドラッグストア、ホームセンター、百貨店などで採用されています。各業種の業務プロセスも標準化されているため、個別調整の負荷を軽減し業務の効率化を実現できます。
流通業界の事例 | レガシーEDI | インターネットEDI |
---|---|---|
手順 | JCA手順 | 流通BMS(JX手順・AS2・ebMSv2) |
通信フォーマット | 固定長 | XML |
当社製品例(サーバ) | B2B Standard | B2B Standard |
当社製品例(クライアント) | B2B for JCA-Client | B2B for JX-Client |
変換ソフトウェア | TRAN for ANYs | XML変換ツール ※B2B Standardオプション製品 ※B2B for JX-Clientには標準でXML変換機能が搭載 |
利用プロトコルについて
流通BMSではJX手順・AS2手順・ebMSv2手順の3種類の通信プロトコル(通信方式)が規定されています。
JX手順はクライアントサーバ型で、一般的に卸・メーカーではクライアント側、小売店ではサーバ側を導入します。取引データ量はプロトコル3種類の中でも最も少なく、10メガバイト未満の取引が推奨されています。クライアント側のシステムはパソコンで運用できることから、情報システム部門などのシステム専任者を持たない中小企業での利用に適しています。従来のJCA手順からの移行でも比較的スムーズに行えることが特徴で、かつ最も安価で導入できるという点もあり、最も普及しているプロトコルです。
ebMSv2は国際標準の通信プロトコルで、サーバ同士がデータの発生都度互いにメッセージを送る「プッシュ型」の仕様となります。リアルタイムでのデータ送受信が行える反面、サーバ運用が必要となるほか、常時インターネットに接続するため相応のセキュリティ対策が必要となります。導入対象は大企業向けです。近年ではアジア圏での利用が広まっているといわれています。
AS2はebMSv2手順と同じく、国際標準の通信プロトコルです。国内では日用雑貨分野での利用も多くみられています。こちらも導入対象は大企業向けです。
Web-EDIについて
流通BMSが普及する一方で、PCのブラウザでEDIを行う「Web-EDI」もよく利用されています。
Web-EDIは、インターネットでブラウザに接続するだけで専用ソフトが不要のため、取引先が利用しやすい一方で、以下のような課題があります。
・取引先ごとにWeb 画面が異なり操作性がバラバラ、マニュアルを読みながらルールに沿って操作しなければならない
・Web画面を参照して自社システムにデータを手入力するので手間がかかる
今後もWeb-EDIは増えていくことが予想されますので、こうした課題に対し効率的に対処していく必要があります。
Web-EDI効率化のポイント
ダウンロードデータの生成を監視して、データフォーマット変換、システム連携を自動化することにより、ダウンロードするだけで、後続の業務処理を行うことができるようになります。
下の図が、Web-EDIで受注を登録するという流れの一例です。
- ①受注データを人がWebからダウンロードをします。人が介在するのはこれだけで、それ以降は自動処理を実現できます。
- ②ジョブスケジューラーがダウンロードデータを格納するフォルダを監視し、フォルダにデータが格納された時点で、後続の処理を実行します。
- ③「変換ソフトウェア」で自社のシステムに取り込めるデータ形式に変換します。
- ④自動で自社システムのデータに書き込みを行います。
このように、パッケージソフトを組み合わせることで、比較的簡単に自動化することができますので、Web-EDIの取引量が多く、人手がかかっているという企業様は、ぜひご検討してみてはいかがでしょうか。
2.物流業界
物流業界においては、業界団体としてインターネットEDI対応方針は現時点で決定されておりません。業界特性として、荷主によって属する業界が違うこともあり、一様に標準が決定できないという事情があると推察されます。
従来の通信方式であるJTRN(ジェイトラン)もしくはインターネット通信方式である物流XML/EDIが採用されており、通信相手先企業の方針を確認する必要があります。データフォーマットはCII、EDIFACTと呼ばれるものや、XMLが採用されています。
プロトコルは業界団体としての規定はありませんが、JTRNは主に全銀TCP/IP、物流XML/EDIは様々なプロトコルが使われているようです。そのため、EDIを導入する際は、「マルチプロトコル」に対応したものを採用する傾向が多いように見受けられます。
物流業界の事例 | JTRN | 物流XML/EDI |
---|---|---|
プロトコル | 全銀TCP/IPなど | AS2 ebMSv2 全銀協標準通信プロトコル (TCP/IP手順・広域IP網) SFTPなど |
通信フォーマット | 国内物流:CII(JTRN) 国際物流:EDIFACT |
XML |
当社製品例(サーバ) | B2B Standard | B2B B2B Standard+B2B for TLS (全銀協標準通信プロトコル(TCP/IP手順・広域IP網)に対応) |
当社製品例(クライアント) | B2B for BANK TCP/IP-Client | B2B for BANK TCP/IP-Client |
変換ソフトウェア | TRAN for CII TRAN for EDIFACT |
XML変換ツール (B2B Standardオプション製品) |
余談ですが、物流業界においては、近年「物流DX」と呼ばれるような先進的な取り組みが国策レベルで検討されており、それらの動静についても引き続き注視していく必要があります。
内閣府主宰の「SIPスマート物流サービス」においては、物流業界の抱える労働力不足やグローバル化対応・環境への対応などの課題に対し、物流情報のデジタル化、データ化を実践し30%の生産性の向上につなげることを目標として研究開発・実証実験が開始されています。
*参照元:国土交通省 物流政策検討会 資料「SIPスマート物流サービスの取組み」
https://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/content/001363931.pdf
インターネットEDI移行に向けて
インターネットEDIへの移行の段取りは、発注企業(主にサーバ側)と受注企業(主にクライアント側)で異なります。まずは、発注企業側が業界標準や受注企業側の状況を加味した上で方針を定める必要があり、受注企業側はその方針を確認し、自社の方針を決定するという流れが一般的です。
通信遅延の可能性や、ベンダー側のリソース枯渇、取引先との調整など、方針検討、予算化、システム改修、接続先テストを経て移行完了に至る無理のないスケジュールを考えるならば、早すぎるということはありません。
業界団体のガイドライン等でも、移行の段取りやスケジュールが示されている事が多いため、参照されることをお勧めします。
業界標準を参考に方式をご検討の上、早めのご対応が肝要となります。お困りの点がございましたら、お気軽に当社へご相談ください。
■固定電話(加入電話・INSネット)のIP網移行について
(NTT東日本)https://web116.jp/2024ikou/
(NTT西日本)https://www.ntt-west.co.jp/denwa/2024ikou/
※「INSネット」は東日本電信電話株式会社及び西日本電信電話株式会社の登録商標です。
※その他記載されている会社名、商品名は各社の登録商標または商標です。
関連するソリューション・製品
- EDI
専用線、VAN型EDIからインターネットEDIまで、様々な企業間電子商取引(EC/EDI)実現に向け最適な製品&ソリューションをご提供します。EDIのシステムを成功させるには、企業同士の業務を効率化するための業務分析や、各社がこれまで蓄積してきたデータを共通の形式に変換する技術が重要になります。
キヤノンITソリューションズでは、パッケージ製品・SaaSの提供のみならず、EDIシステムの設計・構築・運用にいたるまで、トータルなサポートが可能です。
- EDI-Master レガシーEDI(JCA,全銀手順,全銀TCP/IP)から、インターネットEDI(JX手順、ebMSv2、ebMSv3、AS2、全銀TCP/IP手順(広域IP網)、Web)まで、様々な業種業界で利用されている、標準プロトコルに対応し、小規模~大規模のEDIまで対応するトータルソリューションをご提供致します。
- EDI-Master B2B for TLS
EDI-Master B2B for TLSは、TCP/IPベースの通信システムと連携し、SSL/TLSによる暗号機能を提供する中継ソフトウェアです。既存の全銀TCP/IP手順システムの変更を最小限に抑えて、速やかにインターネット対応ができます。
「EDI-Master B2B Standard」「EDI-Master DEX for UNIX/Linux/Windows」「EDI-Master B2B for Mainframe」「全銀TCP通信プログラム」と連携することにより、インターネット対応した全銀TCP/IP手順(「全銀協標準通信プロトコル(TCP/IP手順・広域IP網)」の機能を提供します。これらの製品との組み合わせで、一般社団法人 情報サービス産業協会(JISA、現在はJiEDIA)主催の相互接続試験において、他社製品・サービスとの相互接続を確認済みのため、安心してご利用いただけます。
有償オプション「Extension Pack」の適用により、復号(サーバ)モード時に全銀TCP/IPプロトコルの情報など、多要素によるフィルタリング機能が利用でき、セキュリティ強化を実現できます。
また、全銀TCP/IP手順以外にも、メール(SMTP/POP3/IMAP4)やHTTPのシステムと連携することによっても暗号化通信が可能なため、EDI用途以外でも幅広くご利用いただけます。
※本製品は2021年10月1日に「EDI-Master B2B TLS-Accelerator」より「EDI-Master B2B for TLS」に製品名称を変更しました。
- ※本システムは、全銀TCP/IP手順、メール、HTTP通信の機能はございません。
- EDI-Master B2B Standard
EDI-Master B2B Standard(B2B Standard)は、複数の通信プロトコルに対応したマルチプロトコルEDIサーバーです。
企業間EDIで多く利用されているプロトコル(全銀TCP/IP手順)、インターネットEDI主要プロトコル(ebMSv2[ebXML MS 2.0]・JX・AS2)、FTP、SFTP、メールプロトコル(POP3・SMTP)、ZEDI(JX)の中から必要な機能を選択し利用することができます。
稼働環境は、WindowsとLinuxに対応しています。
仕入先・取引先との受発注や、倉庫・物流会社との間の物流指示、金融機関との接続など、EDI接続が必要な幅広い場面に包括対応でき、仮想化対応や分散運転にも対応しており、堅牢なEDIシステムを構築できます。
「EDI-Master B2B for TLS」と連携することで、「全銀協標準通信プロトコル(TCP/IP手順・広域IP網)」にも対応できます。
一般社団法人 情報サービス産業協会(JISA、現在はJiEDIA)主催の相互接続試験において、他社製品・サービスとの相互接続を確認済みのため、安心してご利用いただけます。
※本製品は2021年10月1日に「EDI-Master B2B Gateway」より「EDI-Master B2B Standard」に製品名称を変更しました。 - EDI-Master B2B for BANK TCP/IP-Client
全銀TCP/IP手順通信ソフト(端末仕様)の決定版。収納代行サービスでの導入実績多数。ファームバンキングや企業間のファイル転送システムとして、さまざまな運用形態に幅広く対応できます。
Ver.9より、従来の全銀TCP/IP手順に加え、インターネット対応した全銀TCP/IP手順(「全銀協標準通信プロトコル(TCP/IP手順・広域IP網)」の機能(SSL/TLS方式)も備わっています。インターネットEDI普及推進協議会(JiEDIA)主催の「全銀協標準通信プロトコル(TCP/IP手順・広域IP網)相互接続試験」において、他社製品・サービスとの相互接続が行えることを確認済み ※1のため、安心してご利用いただけます。
相手先(センター側)に対し、こちらから接続要求を出して通信を実行します。
※本システムにはセンター側の(相手からの着信を待ち起動する)機能はありません
※1 インターネットEDI普及推進協議会 「全銀協標準通信プロトコル(TCP/IP手順・広域IP網)相互接続試験結果」
https://www.jisa.or.jp/tabid/2822/Default.aspx - EDI-Master B2B for JX-Client EDI-Master B2B for JX-Client(JX-Client)は、流通BMSで最も普及しているJX手順(クライアント側)に対応した通信ソフトです。流通BMSフォーマット(XML形式)から固定長形式・CSV形式へのフォーマット変換機能を搭載し、XML形式を意識することなく流通BMSに対応できます。また、文字コード変換機能や、自動送受信、外部アプリケーションとの連携にも対応しており、JCA手順などの従来型EDIとの共存も可能です。
- EDI-Master JS Standard EDI-Master JS Standardは、EDI-Masterシリーズ各ソフトウエアや任意のアプリケーションを起動制御できる、スタンドアロン型のジョブスケジューラーです。処理フローをジョブとして自動化でき、日々の運用を効率化できます。グラフィカルなカレンダー上で稼働日・非稼働日の指定や実行時刻の指定ができ、設定も簡単。エラー時には管理者へメール通知するなど、EDIシステムの障害検知にも役立ちます。
- EDI-Master JS Enterprise
EDI-Master JS Enterpriseは、企業内に散在するEDIシステムを集約し、企業内外のシステムとシームレスなデータ連携を実現する、EDI統合サーバです。
レガシーEDIから次世代EDI・Web-EDIまで、多種多様な受発注業務を効率化します。
EDI-Master JS Enterpriseと弊社EDI製品を組合せることで、受発注業務を効率化します。またEDI-Master JS Enterpriseを導入する事で基幹システムを中心に得意先と取引先を仲介し、お客様のサプライチェーンマネージメントをサポートします。EDI-Master JS Enterpriseにより商取引がEDI化され、業務遂行の記録や監視が行えるため、内部統制の一助となります。
EDI関連のシステムにおいてジョブの実行がエラーとなった場合に、ジョブを構成するプロセスの実行順序と各プロセスにおける実行結果を直感的に確認することができ 、任意のプロセスからの柔軟な再実行が可能です。
※このEDIにおけるジョブ実行管理技術(特許5598806号)は、2022年に令和4年度関東地方発明表彰において、「発明奨励賞」を受賞しています。 - EDI-Master TRAN for ANYs EDI-Master TRAN for ANYsは、様々なフォーマットを相互変換する汎用のフォーマット変換ソフトウェアです。EDIにおける取引先とのデータ交換や、自社システム間でのデータ連携に用いることで、システム連携時のインタフェース改修を最小限に抑えられます。 フォーマット変換に加え、文字コード変換や四則演算、データ置換、丸めなどの特殊処理も標準搭載。複数ファイルの同時変換、1ファイルから複数ファイルへの分割にも対応しており、既存システムから新システムへのデータ移行ツールとしても活用できます。
- EDI-Master TRAN for CII
国内標準『CIIフォーマット』と自社フォーマットを相互変換できる、CIIトランスレーターのベストセラーです。
EIAJ(電子機械)その他さまざまな業界への対応実績を持つ、電子商取引推進センター(旧CII)の推奨品です。 - EDI-Master TRAN for EDIFACT
国際標準『EDIFACTフォーマット』と自社フォーマットを相互変換できるEDIFACTトランスレーターです。
JAMA・JAPIA(自動車業界EDI)や、JEDICOS(新流通標準EDI)にも対応しています。
既存システムの変更なしで、簡単に国際標準EDIに対応できます。