グローバル市場で勝つために個別最適な基幹システムを標準化

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  • 株式会社フコク 様

標準化とDXでフコクがめざす新たな成長ステージ

自動車のワイパーに使われるワイパーブレードラバーで世界シェア1位を誇るフコクは、ゴム製品を主軸としながら、新規ビジネスにも積極的に取り組んでいます。同社は現在、業務とシステムの標準化を推進しています。その中核となるのが基幹システムの刷新です。長期にわたる大規模プロジェクトは前半を終え、後半に入りました。大規模プロジェクトならではの工夫などについて、フコクのキーパーソン2人に話を伺いました。

内製システムの部分最適と属人化が課題に

安積 宏 氏、目木 滋 氏

(写真左)
株式会社フコク
管理本部
システム戦略部システム企画開発課
マネージャー
安積 宏 氏

(写真右)
株式会社フコク
管理本部 システム戦略部 部長
目木 滋 氏

1953年に創立したフコクは、ゴム製品を主軸とする製造業です。国内に5カ所の工場を持ち、海外にも拠点を展開。医療、バイオ関連の製品も提供しています。自動車のワイパーに用いるワイパーブレードラバーでは世界トップシェアを誇り、経済産業省の「2020年版グローバルニッチトップ企業100選」にも選ばれました。フコク管理本部システム戦略部部長の目木滋氏は次のように話します。

「当社は中期経営計画(2024~26年度)で、2026年度の売上高1200億円という目標を掲げています。既存事業の強化はもちろん、新規事業の開発も欠かせません。そのためにもデジタル活用と、その土台を支える基幹システムは非常に重要となります」

フコクが基幹システムの刷新を検討し始めたのは、2019年のことでした。フコク管理本部システム戦略部システム企画開発課マネージャーの安積宏氏はこう説明します。

「従来、当社のシステムは、現場担当者がIT部門にニーズを伝え、その要求に沿ってシステムを開発するというスタイルでした。部分最適化されており、今以上の価値をITで実現するのは困難でした。また、担当者ごとの属人化も進んでいました。こうした課題を解決してグローバル市場での競争力を高めるため、トップダウンで業務と基幹システムを標準化するという方針が決まりました」

プロジェクトはコロナ禍でいったん足踏みしたものの、2021年から本格的に再開しました。生産や販売などを含め、ほぼすべての基幹システムを刷新する全社的な取り組みです。基幹システムのコアとなるパッケージソフトとしては、海外製品を含めていくつか検討しましたが、フコクは日本の製造業で多くの実績を持つ「mcframe」を採用しました。

システム:基幹システム(SCM)、PP(※1):mcframe 7 SCM、内容:ステップ1:生産、販売、期間:2021年9月~2023年9月、現フェーズ:完了。システム:基幹システム(SCM)、PP(※1):mcframe 7 SCM、内容:ステップ2:原価、期間:2024年4月~2025年6月、現フェーズ:実施中。システム:PLM、PP(※1):mcframe PLM、内容:技術開発本部 E-BOM、期間:2022年5月~2023年5月、現フェーズ:完了。システム:PLM、PP(※1):mcframe PLM、内容:生産技術部 M-BOM、期間:2024年9月~2025年9月、現フェーズ:予定。システム:人事給与、PP(※1):SuperStream-NX、内容:人事給与、期間:2022年9月~2023年6月、現フェーズ:完了。システム:インフラ、PP(※1):SOLTAGE、内容:IaaS、期間:2022年4月~2023年6月、現フェーズ:完了。※1 Program Product:カスタマイズが可能なソフトウエア製品

図1 フコクの基幹システム刷新プロジェクト(購買EDI、在庫管理システムはスクラッチで実施)

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縦割り横断の処理・分析が新システムで高速化

フコクはシステム構築を支援するパートナーを選定するにあたり、mcframeを提供するビジネスエンジニアリング(B-EN-G)に相談したところ、キヤノンITソリューションズを紹介されました。

「パートナーの決定に先立ち、2021年夏ごろ、キヤノンITソリューションズの皆さんが、当社に常駐してヒアリングなどを3カ月間実施しました。業務を深く理解しようという姿勢に感銘を受けました。また、キヤノンITソリューションズが提示した“as is”と“to be”を描いた成果物も、私たちは高く評価しました。こうした3カ月を通じて醸成された信頼感が、パートナー選定の決め手になりました」と目木氏は振り返ります。

基幹システム刷新は大きく2段階に分けて進んでおり、第1ステップでは販売管理および生産管理システムが対象になりました。旧基幹システムの課題はさまざまですが、安積氏が具体例として挙げたのは生産計画の問題です。

「部門ごとに縦割りのシステムだったので、それを横断して処理・分析するのは難しかったのです。例えば、どのような部品や材料をいつ、どれだけ購入し製造するかという、部門をまたがって計画を立てるのが困難でした」

第1ステップの販売と生産の領域は2023年7月に本稼働しました。導入された「mcframe 7 SCM」にはMRP*1機能が含まれており、安積氏が指摘した課題は解消に向かっています。

2024年4月にスタートした第2ステップは現在進行中です。在庫管理、原価計算の各システムの刷新が進められており、キヤノンITソリューションズはこれらのプロジェクトもサポートしています。また、第2ステップの最終段階では、管理会計システムの構築が予定されています。

第1、第2ステップのプロジェクトと並行する形で、いくつかのシステム構築も進められました。例えば、スクラッチ開発の購買EDIや、人事給与システム「SuperStream-NX」などがすでに稼働しています。基幹システムとこれらのシステムの基盤としては、ITインフラサービス「SOLTAGE」が活用されています。

*1 Material Requirements Planning:資材所要量計画

必須機能のみアドオン開発 エース級がプロジェクト参画

4年目に差し掛かる基幹システム刷新プロジェクトは、さらに1~2年続く予定です。とはいえ、その道のりは半ばを過ぎました。プロジェクトを推進する上での工夫について、安積氏は次のように話します。

「基幹システムが変われば、現場の業務も変わります。今までのやり方をあまり変えたくないのが現場の本音でしょう。アドオン開発の要求も多数寄せられました。ただ、それでは個別最適のままですし、属人性も残ります。標準システムに合わせて、業務をいかに標準化するかがポイントです。そこで、アドオン開発を最小化するよう工夫しました」

こうした方針を貫徹できた背景には、いくつかの要因がありました。まず、トップがリーダーシップを発揮し、この取り組みが極めて重要な全社的プロジェクトであるとの経営メッセージを社内に浸透させたこと。加えて、適切なプロジェクト体制を構築したことが重要な点として挙げられます。

「プロジェクトには各職場のエース級を配属しました。また、生産管理システムについては、各工場から1人ずつ指名して参画してもらいました。現場の理解が深く、影響力のある人たちなので、各工場の従業員を巻き込み変革をリードしてくれました」と目木氏は語ります。

将来的に、新基幹システムを活用してフコクがめざすのは、経営と現場におけるデータドリブンです。

「例えば、ある製品の生産をA工場からB工場に移すとしましょう。原価はいくらになるのか、売価は従来のままでいいのか。こうしたシミュレーションをするには、これまで時間も手間もかかっていました。新基幹システムをはじめとするデジタルの仕組みが整備されれば、経営層はデータに基づいて迅速に意思決定することができます」(目木氏)

基幹システム刷新により、フコクのDXが加速します。キヤノンITソリューションズはその取り組みに伴走しつつ、価値の高い提案を続けていきたいと考えています。

株式会社フコク
写真:株式会社フコク
株式会社フコク

設立

1953年12月24日

代表者

代表取締役社長 大城郁男

従業員数

正社員1157人(2024年3月末日現在)

所在地

埼玉県さいたま市浦和区高砂一丁目1番1号(本社)

事業内容

ゴム製品、金属・合成樹脂製品、セラミックス、バイオ・医療関連製品の製造販売

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※ 記事中のデータ、人物の所属・役職などは、記事掲載当時のものです。