ローコードCOEを中心に開発ナレッジを蓄積
ガバナンス向上とともにデジタル変革を加速

  • 事例
  • 三井住友信託銀行株式会社 様

Salesforceアプリケーションの開発と運用管理を集約

三井住友信託銀行では、Salesforceアプリケーションを各ユーザー部門がベンダーに委託して開発している事例が多く、定期的なバージョンアップ対応やセキュリティ対策などの運用管理が難しくなっていました。そこでSalesforceアプリケーションの開発および運用管理を集約するためのローコードCOE(Center of Excellence)の体制立ち上げを決意。キヤノンITソリューションズ(キヤノンITS)の協力を得て、その作業は順調に進んでいます。

Salesforceアプリ開発をローコードCOEに集約

宮台 武利 氏、齋藤 淳仁 氏

(写真左)
三井住友信託銀行株式会社
IT業務推進第一部 ローコードCOE チーム長
兼 IT統括部 主任調査役
兼 経営企画部 デジタル企画部
デジタルオペレーションチーム 主任調査役
齋藤 淳仁 氏

(写真右)
三井住友トラスト・システム&サービス株式会社
開発第五部 第二グループ
シニアスペシャリスト
宮台 武利 氏

三井住友信託銀行は三井住友トラスト・グループの中核企業として培ってきた高度な専門性と総合力を生かし、個人顧客向けに資産運用やローン、資産管理・承継、生命保険、不動産などの商品やサービスを提供しています。

また、法人顧客に対しても、企業価値の向上や資産価値の増大、そして持続的な成長に貢献するために、銀行・信託・不動産などそれぞれの機能を融合させたトータルソリューションを提供しています。

これらの事業を支える重要な柱の一つがIT戦略であり、三井住友信託銀行は三井住友トラスト・グループのIT企業である三井住友トラスト・システム&サービスと緊密に連携し、デジタル変革を進めています。そして両社は約10年前からキヤノンITSをパートナーに選定し、法人事業向けのシステム開発やRPAのロボット開発などに共に取り組んできました。

そうした中で2021年4月、三井住友信託銀行が立ち上げたのがローコードCOEという組織です。

同社のIT業務推進第一部ローコードCOEチーム長の齋藤淳仁氏は、「今後ますます拡大していくと予想されるSalesforceアプリケーションの開発や保守運用をこの新組織に集約し、ナレッジを蓄積していくことになりました」とその狙いを語ります。

キヤノンITソリューションズをパートナーに選定

これまで三井住友信託銀行では、Salesforceアプリケーション開発の多くは各事業部門が中心となって対応してきました。Salesforce自体がクラウドサービスであるためオンプレミスでのサーバー導入などは不要で、なおかつ業務ニーズに合ったアプリケーションをローコードで比較的簡単に開発できることがその理由です。

ただしSalesforceを運用する上では、年3回の定期的なバージョンアップに必ず対応しなければなりません。また顧客の個人情報や取引情報など秘匿性の高いデータもクラウド上で運用することになるため、全社的なポリシーに基づいた特権ID管理をはじめとするセキュリティ対策も不可欠です。

これらの作業を各事業部門にすべて任せたままでは、どうしてもガバナンスが緩んでしまう恐れがあります。「そこで新たに開発するSalesforceアプリケーションはもとより、稼働中のアプリケーションについてもローコードCOE側で巻き取ることにしました」と齋藤氏は話します。

その実作業を共に担っていくパートナーとして、今回選定されたのがキヤノンITSです。

三井住友トラスト・システム&サービスの開発第五部第二グループシニアスペシャリストの宮台武利氏は、「三井住友信託銀行のIT部門にしても、私たちにしても、銀行全体の勘定系や情報系など主要システムの構築や運用管理に携わっているため、エンジニアのリソースに潤沢な余力があるわけではありません。そこで三井住友トラストグループの業務を熟知し、システム開発の経験も豊富なキヤノンITSの手をお借りすることにしました」と話します。

「ローコード開発の考え方は広い意味でRPAのロボット開発とも共通しており、一貫した方針で開発に臨めるという観点からもキヤノンITSに任せられるのは、願ってもないことでした。加えてSalesforceアプリケーションに関しても豊富な開発経験を有しており、同様のナレッジとノウハウを蓄積したいと考えているローコードCOEにとっても非常に心強い存在でした」と齋藤氏も当時を振り返って話します。

図1 ローコードCOEの体制イメージ

図1 ローコードCOEの体制イメージ

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ナレッジとノウハウの蓄積と共有を目指す

ローコードCOEが立ち上がってからちょうど1年が経過した2022年4月現在、各事業部門で稼働していたSalesforceアプリケーションは順調なペースでローコードCOEへの集約が進んでいます。

「キヤノンITSの貢献もあり、プロジェクトは予定どおりのスケジュールで進んでいます。現在までにすでに5本の移行を終えており、今年度中にほぼすべてのSalesforceアプリケーションの引き継ぎが完了する見込みです。また、これと並行して3本の新規アプリケーションの開発も行っています」と齋藤氏は話します。

この取り組みを通じて、ローコードCOEには多くのナレッジとノウハウが蓄積されています。

その一つとして挙げるのは、Salesforceをベースとする開発案件を見極める力です。

「Salesforceの標準機能を使えば簡単かつ迅速にアプリケーションを開発できますが、実はそれゆえの制約にも気を配る必要があります。例えばお客さま向けのアプリケーションで、当社独自のこだわりを持った画面を作成しようとしたとき、どうしても標準機能だけでは対応しきれない部分がでてきます。そのような経験を一つひとつ積み重ねることで、システム化検討を進める際にSalesforceを用いた方がよいのかどうかが次第に見えてきました」と齋藤氏は話します。

ローコードCOEでは、このような実作業を通じて獲得したさまざまなナレッジとノウハウをドキュメント化することで、暗黙知から形式知への変換を目指しています。

これにより、各事業部門を含めた三井住友信託銀行全体で、より効果的なSalesforceアプリケーションの開発を促進していこうとしています。

アプリ開発の標準化を支えるフレームワークを整備する

さらにその先には、開発ルールやセキュリティ上の規約を定めるとともに、成果物のテンプレートも公開するなど、Salesforceアプリケーション開発の標準化を実現するフレームワークの整備を目指しています。

「そうした今後の展開を見据えたとき、ローコードCOEの取り組みはまだまだ道半ばです。その意味でもキヤノンITSのサポートは欠かすことができず、引き続き私たちのレベルアップに力を貸していただければと思います」と齋藤氏は期待を寄せています。

三井住友信託銀行と三井住友トラスト・システム&サービス、そしてキヤノンITSの3社は今まで以上に強固に手を携え、多彩な金融サービスのデジタル変革に向けて大きな役割を担っていこうとしています。

三井住友信託銀行株式会社
三井住友信託銀行株式会社

設立

1925年7月28日

代表者

取締役社長 大山 一也

従業員数

1万3740人(2021年3月31日現在)

所在地

東京都千代田区丸の内一丁目4番1号

事業内容

個人事業、法人事業、投資家事業、資産管理事業、不動産事業、マーケット事業、プライベートバンキング横断領域、資産形成層(職域)横断領域

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※ 記事中のデータ、人物の所属・役職などは、記事掲載当時のものです。