- コラム
シニアアプリケーションスペシャリストによる「技術トレンド情報」(第32回)
マシンビジョン市場動向・2023年予測(2) [2022.01.24]
新年あけましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願い致します。今回は、昨年末に続き、「検査アプリケーション」、「観察・測定関連機器」、「AI・ディープラーニング応用製品」の市場動向についてご紹介いたします
「検査アプリケーション」市場動向(国内)
マシンビジョン(画像処理システム)の「検査アプリケーション」領域では、製品や部品部材の外観検査装置で、ウエハ、FPD、Web(シート)、印刷、飲料容器、自動車部品などターゲット別の装置やシステムが該当します。図中、背景グレーの金額表示は2023年の市場予測、背景赤字は2019年から2023年での成長倍率を示しています。前回コラムで示した通り、「検査アプリケーション」領域は、マシンビジョンの世界市場では、最大規模となっていますが、国内では、「単体製品」が最大で、二番手となっています。「検査アプリケーション」の国内市場では、ウエハ外観検査装置が最大で、2023年予測430億円となっています。続いて、Web外観検査が156億円、食品用X線検査が105億円、インライン実装検査装置が93億円、印刷検査装置が82億円の順となっています。マシンビジョンのシステム構成は、ほとんどがエリアセンサを利用したものになりますが、Web外観検査(シート状製造品の外観検査)や印刷検査は、ラインセンサカメラが得意とする領域で、「単体装置」のラインセンサカメラからみると、一定の規模をもつターゲット市場となっています。成長率としては、規模は14億円と小さいですが、自動車関連の外観検査市場が、1.67倍と最大となっています。これは、光沢や梨地といった金属部品や車体塗装面等にあらわれる不定形なムラやキズに対する検査で、従来型のルールベース処理では自動化が困難とされてきましたが、不定形な形状検出を得意とする画像AI技術の進化によるところが大きく、「AI・ディープラーニング応用製品」のターゲット市場の一つとなります。
「観測・測定関連機器」市場動向(国内)
「観察・測定関連機器」市場は、パンデミックの影響から外観検査以上に市場が縮小傾向にあるも、2021年以降は再び市場拡大の見通しとなっています。図中、背景グレーの金額表示は2023年の市場予測、背景赤字は2019年から2023年での成長倍率を示しています。CNC画像測定器(※1)、工業用X線検査装置市場は、2023年においても、2019年市場までの回復が見られない状況もありますが、全体的には、製造品質管理の精度要求の高まりによる使用頻度の増改傾向と、観察・測定する場所が、センシングを実施し、品質管理部門で行うより、生産ライン内で簡易に実施でいる装置のニーズが高まっています。市場では、デジタルマイクロスコープが117億円、工業用X線検査装置が116億円が、ほぼ同値のトップ2となっています。非接触三次元測定機と共焦点レーザ顕微鏡は、それぞれ市場規模は、46億円と35億円と小さいながらも、1.16倍と1.27倍と、今後高い成長率が期待されています。
- ※1 CNC画像測定器は、Computer Numerical Controlの略でコンピュータ数値制御により撮像画像を基に非接触で測定を行う装置。
「AI・ディープラーニング応用製品」市場動向(国内)
「AI・ディープラーニング応用製品」市場は、まだまだ、形成途上にある品目が多い状態ですが、AI・ディープラーニングがトレンド技術として登場以来、一貫して高い伸長率で推移しており、今後も対応領域を拡大しながら、好調な市場成長が予測されています。図中、背景グレーの金額表示は2023年の市場予測、背景赤字は2019年から2023年での成長倍率を示しています。「AI・ディープラーニング応用製品」の国内市場では、ディープラーニング画像処理ソフトウェアが最大で、2023年予測160億円で、2019年から2023年の成長率も10.60倍と最大の成長が見込まれています。続いて、産業用AI機能搭載カメラが、27億円で成長率6.00倍、アクセラレータボードが、25億円で成長率9.25倍と共に注目領域となっています。アクセラレータボードは、ディープラーニング画像処理を高速実行するためのハードウェア機器で、アクセラレータボードを複数台搭載したハイエンドなAIシステムも登場しています。産業用AI機能搭載カメラ(AIスマートカメラとも呼ばれる)は、カメラにアクセラレータボード相当のAIプロセッサを搭載した一体型装置で、AI処理を高速且つ省スペースに実行できる産業用デバイスです。弊社取り扱い製品では、ディープラーニング画像処理ソフトウェアとしては、Matrox社製画像処理ライブラリ「MIL」を、産業用AI機能搭載カメラとしては、HMS社製「SiNGRAY」シリーズを取り扱っています。
今回のまとめ
今回は、「検査アプリケーション」、「観察・測定関連機器」、「AI・ディープラーニング応用製品」についてご紹介しました。前回含め、マシンビジョンの市場動向についてご紹介させていただきました。弊社のような、マシンビジョン開発に利用される製品・素材を提供されている側では、「単体装置」及び「AI・ディープラーニング応用製品」が自身の今後の市場予測となり、ご利用いただく「検査アプリケーション」、「観察・測定関連機器」は、お客様の市場動向となります。システム開発で使用する「単体製品」や、「AI・ディープラーニング応用製品」には、どういった区分があり、どういったものが利用されているかなど、ご参考となれば幸いです。次回は、2023年に向けて、注目のトレンド技術についてご紹介いたします。
- ※ 参考データ:富士経済「2020画像処理システム市場の現状と将来展望」
筆者紹介
稲山 一幸(いねやま かずゆき)
エンジニアリング事業 シニアアプリケーションスペシャリスト
1992年住金制御エンジニアリング入社、Matrox社製品の国内総代理店立ち上げに参画、以降25年マシンビジョン業界に携わる。
2013年~2016年、キヤノン株式会社にてマシンビジョン関連の新製品開発のソフトウェアリーダとして従事。現在は、エバンジェリストとして活躍中。
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